サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

誰でも、どこでも始められるプラスチックリサイクルビジネス ノウハウを無償公開

  • Twitter
  • Facebook
Christian Yonkers
Image credit: Precious Plastic

オランダ発のプレシャスプラスチックは、誰でも、どこでも、プラスチック廃棄物をリサイクルし、新たな製品をつくって販売する小規模ビジネスを始められる仕組みをオープンソースで無償公開している。設立者のデイブ・ハッケンス氏が2012年、デザイン学校の研究の一環で着手した取り組みは、日本を含め世界107カ国に広がっている。同組織でデザインディレクターを務めるマッティア・ベルニーニ氏に米サステナブル・ブランドが話を聞いた。(翻訳・編集=小松はるか)

ベルニーニ氏に言わせれば、「プラスチック自体は問題ではない」。つまり、問題なのは、いかに多くのプラスチック製品がつくられているかということだ。

オープンソースで無償公開する機械や設計図を使ってつくられたリサイクル製品 Image credit: Precious Plastic

プレシャスプラスチックは、無料で利用できる、オープンソースのプラスチックリサイクルの仕組みを提供している。「価値のある大切な(プレシャス)プラスチック」という名前の通り、「プラスチックに価値を付けることで、廃棄量も減るだろう」という考えが根底にある。

ベルニーニ氏は、プレシャスプラスチックを新しい形のクラフトマンシップの始まりだと捉えている。この仕組みは場所を選ばず誰でも利用でき、プラスチックを木材や大理石、銅、鋼のような需要のある素材へと変えようとするものだ。

「ほんの少しの愛と、わずかな機械や知識があれば、プラスチックをアートにも家具にも生まれ変わらせることができます。われわれが推進しているのは、イデオロギーとメンタリティ(考え方)の転換です。より多くの人たちにプラスチックを価値あるものと捉えてもらえるようにしたいのです」(ベルニーニ氏)

資源循環が当たり前に

サーキュラリティ(循環性)を民主化する――。プレシャスプラスチックが目指しているのはこれに尽きる。

プレシャスプラスチックは、プラスチックをリサイクルする小型機械の設計図を公開するオープンソースのデザインデータベースを運営している。リサイクル機械は、組み立てが比較的簡単で、手ごろな価格でつくることができ、動作も早い。高密度ポリエチレンや低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンのほかにABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PLA(ポリ乳酸)樹脂のリサイクルに優れている。例外は、PVC(ポリ塩化ビニル)やペット(PET)。ペットについては、リサイクルされたものがすでに飲料業界で重要な原料となっているためだ。

プラスチック問題に取り組むために必要な解決策を集めた「プレシャス・プラスチック・ユニバース」は、従来の仕組みでは難しかった方法で、リサイクルプラスチックをバリューチェンに組み込むためにつくられたエコシステム(仕組み)といえる。これまでの大規模で一元化されたリサイクルセンターは、変化に対する柔軟性に欠けている。プラスチックの流入を食い止めるために必要な規模で繰り返し使うことにも適しておらず、市場に混乱と破綻をもたらしやすい。

ベルニーニ氏によると、“プラスチック汚染危機”の中心地となっているグローバルサウスをはじめとする一部の地域では、従来のリサイクルシステムを早急に拡大することは、コストがかかり過ぎるという。

正確な指標を算出するのは不可能に近いが、プレシャスプラスチックが発表した最新のインパクト報告書によると、2022年にプレシャス・プラスチック・ユニバースは以下の結果を生み出した。

・約60万トンのリサイクル素材を回収
・各地域運営者の収益は360万ドル(約5億2693万円)に達し、6400人以上の雇用を創出
・ボランティアとして1万1510人が参加
・1881台のリサイクル機がつくられた

機械の国別の使用割合 Image credit: Precious Plastic

ベルニーニ氏は「私たちの役割は、異なる役割や事業、企業を結びつけることです。そして、それぞれが世界規模、地域規模でさらなる協働ができるよう支援することです」と語る。

世界でプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約について詳細な議論が進むなか、プレシャスプラスチックは自らを、プラスチック汚染危機の重要な実用的なソリューションと位置づける。

「プレシャスプラスチックはボトムアップで取り組んでおり、政策立案者が参入するのをただ待つことはしたくありません。私たちのプラットフォームは、誰かが何かをしてくれるのを待つ代わりに、自ら解決策を探り出し、生み出すというものです。目指しているのは、すでにプラスチックに関して何らかの取り組みをしている人たちによって、世界的なムーブメントを起こしていくことです」

とはいえ、ベルニーニ氏は、プラスチックの流入を断ち切るためには、未使用プラスチックの削減、サーキュラーデザイン、インフラの向上、融資といった、社会のほかの仕組みが果たすべき役割があることも認識している。

小回りが利き、他者とのつながりを生むビジネス

色がついたプラスチック Image credit: Precious Plastic

一方で、リサイクルする手段のない特定の市場や地域において、プレシャス・プラスチック・ユニバースは、未使用原料がもたらす環境負荷を大幅に削減し、循環型のエコシステム全体に波及するような発想の転換を促す役割を果たす。

「プレシャスプラスチックが提供する方法で製品をつくる人たちは、プラスチック素材を近所の人や友人、消費者から回収することが多いです。こうした行動は、大量生産された製品に存在しないストーリーやコミュニケーション、人とのつながりを生みます」

プラスチックというのは非常に長持ちする素材だ。ベルニーニ氏は、循環型経済のなかで、プラスチックの耐久性が地域の事情に合った方法や、大手リサイクル企業ではできない方法で活用されることを期待する。例えば、色ごとにプラスチックを分類するのは、大規模なリサイクルシステムではハードルが高い。しかし、特殊な顔料や質感、さまざまな色による相乗効果を有するプラスチックは、製作技術(クラフトマンシップ)に彩りをもたらすものだ。

また、使用済みのコーヒーカプセルはリサイクルが難しいことで知られているが、そのカプセルを使ってテーブルをつくるプロジェクトも行っている。プレシャスプラスチックの機械であれば、カプセルが機械を破損したり、素材の質に妥協することなく加工することができる上に、アルミの薄片やねじれたものが混ざったユニークな混合物ができる。1脚のテーブルをつくるのに使われるカプセルの量はおよそ90ポンド(40キロ)だ。

ベルニーニ氏は言う。

「もし数億円する機械を持っていたとしたら、コーヒーカプセルをうまく処理し、新たな方法で利用したり、思い切って何かをしようとはしないでしょう。彼らは実証済みの素材を選び、新たな素材を実験することはないと思います」

しかし、プレシャスプラスチックの機械は桁違いに安い。また、パーツを簡単に修理したり、製造することができ(通常はオーナーや操作者が自ら行う)、低リスクのイノベーション・エコシステム(イノベーションが生まれる体制)をつくることができる。

「こうしたイノベーション・エコシステムによって、人々は新しいことを試したり、多くの研究開発を行えるようになります。小型の機械が持つある種の機敏性によって、大手企業に依頼すると非常に高くなる研究開発や検査を安価に抑え、数多く行えるようになるのです」

UNHCRと連携し、アルジェリアのサハラウィ難民キャンプのプラスチック廃棄物対策、難民の雇用にも取り組む Image credit: Precious Plastic

機械操作に関するイノベーションもオープンソースで公開する。より多くの機械や工程、全体のシステムの再設計が必要となるなか、さらなる革新的なソリューションを提示する。ベルニーニ氏は、「最良のイノベーションのなかには、プレシャス・プラスチック・コミュニティの末端から生まれたものもあります」と話す。オープンソースの情報なくして、こうしたソリューションを拡大することはほぼ不可能に近い。

「最良のイノベーションを生み出す人たちというのは、プレシャスプラスチックが生み出したソリューションを地域の事情や課題の解決に生かしています。私たちは、より多くのイノベーターやエンジニアが、コミュニティに還元できるソリューションをさらに生み出せるように取り組んでいます。そうすることで、コミュニティは成長できるのです。また、知識は私たちが生み出すだけでなく、世界に広がるコミュニティによって生み出されるのです。したがって、知識の創出を分散させることが可能になります」

オープンソースの設計図に加え、プレシャスプラスチックでは、誰もがリサイクルビジネスをうまく立ち上げられるようなビジネスツールも開発し、惜しみなく共有している。

最後にベルニーニ氏は、「できるだけ多くの人にこのコミュニティに参加してもらわなければなりません。斬新なアイデアやソリューションがあっても、有料や会員制だったり、特許があったりすると、情報を手に入れられる人の数が大幅に減ってしまいます。私たちは無料で提供し、オープンな知識が広く遠くへ行き届くことで、どんなに途方もない夢や希望であったりしても実現できると心から信じています」と語った。