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「プラスチック・オーバーシュート・デー」から考える世界のプラスチック廃棄物の現在地

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Image credit : Tom Fisk

7月28日はプラスチック・オーバーシュート・デーだった。プラスチックの年間廃棄量が全世界の廃棄物管理の限度を超え、環境汚染をもたらすとされる日だ。5月、スイスのNGO「EA (Earth Action)」が世界で深刻化するプラスチック汚染について重要な報告書を発表し、データをもとに予測した全世界と各国のプラスチック・オーバーシュート・デーを公表した。日本は11月22日、プラスチック・オーバーシュート・デーを迎える見込みだ。(翻訳・編集=小松はるか)

報告書は、2023年1月の時点で、世界人口の40%がプラスチック廃棄物の量が廃棄物管理能力を超える地域に暮らしており、7月28日には60%にまで上昇すると予測。同日をプラスチック・オーバーシュート・デーと定めた。

2006年から公表されている「アース・オーバーシュート・デー」(地球が1年間に生み出すことのできる資源量を人類の需要が上回る日)は広く知られるようになってきたが、プラスチック廃棄物に関するプラスチック・オーバーシュート・デーが発表されるのは、今年が初めてとなる。

世界各国のプラスチック・オーバーシュート・デー Image credit: Plastic Overshoot Day

人類は現在、歴史的な転機を迎え、プラスチックの過剰な生産や利用、不十分な廃棄管理の方法やインフラによってもたらされる差し迫った課題に直面している。その結果、すべての生態系に影響がおよび、プラスチック汚染が海に広がり、野生生物を脅かし、人類の健康を危険にさらしている。

EAは、「プラスチック・オーバーシュート・デー」を設けることによって、課題をより明確に定義し理解できるようになるとしている。さらに、課題に取り組む上で、政府や企業、個人に自らの役割について説明責任を負わせることもできるという。

EAの共同最高経営責任者(CEO)でステークホルダー・エンゲージメント部門の責任者を務めるサラ・ペレアール氏は、「報告書は、世界的なプラスチック危機が悪化の一途をたどっており、行動を起こす必要性が高まっていることを注意喚起するものだ」と説明する。

「政府による取り組みだけではプラスチック汚染危機を改善することはできない。われわれは、新たなプラスチックが導入される前に、調査や報告書から分かったことを企業が効果的なツールとして活用できるようにし、野心的で国際的なプラスチック汚染防止条約を支持したい。同時に、われわれは協調的な努力や断固たる行動によってこそ、危機を乗り越え、『プラスチック・オーバーシュート・デー』を過去のものとする未来をつくっていくことができる」

5月にEAが報告書を発行した後、国際的なプラスチック汚染防止条約の最初の草案が具体化した。今年11月にケニア・ナイロビで開かれる「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書策定に向けた政府間交渉委員会」の会合で、引き続き議論が行われ内容が調整される予定だ。

プラスチック廃棄物について分かっていること

世界のプラスチック廃棄物の43%は誤った方法で管理されている。不適切な管理が行われた後、自然界に捨てられる廃棄物の総量は2023年に6860万トン以上に達するとみられている。

また一人当たりのプラスチックの年間消費量の世界平均は20.9キログラムだ。プラスチックの廃棄量が最も多いのはアイスランドで、年間消費量は一人当たり128.9キログラム。一方、廃棄量が最小のバングラデッシュの年間消費量は一人当たり2.59キログラムで、アイスランドとは約50倍の差がある。

今回EAが設定した各国のプラスチック・オーバーシュート・デーはそれぞれ異なり、各国で発生するプラスチックの廃棄物量に対する廃棄物管理能力(Mismanaged Waste Index)に基づき予測されている。

EAは、以下の5つの項目に基づき各国を10タイプに分類する。

・住民が生産し、使用するプラスチックの量
・プラスチックが廃棄された後、どのくらい適切に管理されているか
・輸出するプラスチック廃棄物の量
・輸入するプラスチック廃棄物の量
・自国に廃棄物が輸入された後、どのくらい適切に管理されているか

10タイプの割合 Image credit: Plastic Overshoot Day

10タイプのうち一部を紹介する。

・廃棄物の取引を行う国「トランザクター」:Transactors (9%)
プラスチックの消費・利用量が多い国。多くの廃棄物を輸出しながら、近隣国の廃棄物を輸入している。廃棄物の取引を行うことで、廃棄物の管理方法を最適化している。その結果、管理ができていない廃棄物の量は少なく、環境中へのプラスチックの流出リスクは低い。イタリア、オランダ、スイス、デンマーク、チェコ、ドイツ、フィンランド、フランスなど欧州17カ国が該当するほか、オーストラリア、カナダ、シンガポール、英国も当てはまる。

・自国で持続可能な管理を行う「セルフ・サステイナー」:Self-Sustainers (10%)
プラスチックの消費量は中〜大量レベル。国内で廃棄物を管理しており、輸出への依存度は低い。持続可能な廃棄物の管理方法やインフラを有しており、国内で廃棄物を管理する。香港や台湾、グアムなど22カ国が当てはまり、アジアやカリブ諸国の島国が多い。中国も該当する。

・課題を抱える「ストラッガー」:Strugglers (18%)
プラスチックの消費は中〜大量レベルで、他国への廃棄物の輸出は少ない。国内において、不十分なインフラやリソース、適切な廃棄物管理の規制や政策の不足など廃棄物管理に重大な課題を抱えている地域。42の国・領土が該当し、アフリカや中東、アジアの国が多い。ツバルやソロモン諸島、フェロー諸島などの諸島も含まれる。

・過重国「オーバーローダー」:Overloaders (3%)
大量のプラスチックを消費し、廃棄物も大量に輸出する国。一般的に、廃棄物はよく管理されている。米国やアイスランド、イスラエル、韓国、スペイン、バルバドス、マルタが当てはまる。しかし、トランザクターとは異なり、過重国は自国の廃棄物と引き換えに廃棄物の輸入は行っていない。この不均衡が廃棄物管理システムに過度な負担をかけ、不適切な廃棄物管理の問題を生み出している可能性がある。

・有害輸出国「トキシック・エクスポーター」: Toxic Exporters (5%)
大量にプラスチックを消費しており、適切な廃棄物管理のインフラが整っていない場所に廃棄物を輸出していることが多い。ウルグアイ、カザフスタン、クウェート、サウジアラビア、タイ、ブルネイ、ベラルーシ、マレーシア、モルドバ、モンゴル、モンテネグロ、UAEの12カ国が該当する。多くの国におけるプラスチック汚染は、有害輸出国から出された廃棄物の誤った管理によって起きている。

・廃棄物引き受け国「ウェイスト・スポンジ」:Waste Sponges (25%)
アフリカ、アジア、東欧、中東の42カ国のプラスチックの消費量が少ない国(アフガニスタン、ギリシャ、チリ、バングラデシュ、ベトナム、ペルー、ロシアなど)。他国の廃棄物を受け入れ、世界の廃棄物危機に取り組んではいるが、自国の廃棄物に加えて輸入した廃棄物の管理に苦労している。

・廃棄物の救世国「セイビアー」:Savior (4%)
プラスチックの消費量は中程度。廃棄物を比較的適切に管理し、他国の廃棄物管理を支援する。世界の廃棄物危機に総じて好ましい影響をもたらす国々が該当する。エストニア、クロアチア、コスタリカ、スウェーデン、スロバキア共和国、ニュージーランド、ハンガリー、ラトビア、リトアニアの9カ国。

・選択的輸出国「セレクティブ・エクスポーター」:Selective Exporters (2%)
プラスチックの消費量は少〜中量で、一部を外国に輸出し、残りは国内で処理する。平均または適切な廃棄物管理が行われている。日本やドミニカ、バーレーン、モーリシャスが該当する。

報告書ではタイプごとにいくつかの対策を提言している。

世界が取り組むべき5つのこと

EAは、プラスチック廃棄物問題を解決するために以下の5つを提言する。

1.世界のプラスチックの生産量を制限し、徐々に減らす必要がある。誓約や廃棄物管理能力は増えているにもかかわらず、計画されている生産量の増加によって、2040年までにプラスチック汚染は3倍に増える見込みだ。生産量の制限は、プラスチック汚染を徐々に減らすのに不可欠となる。

2.循環利用できない設計のプラスチックは段階的に廃止する必要がある。大規模なサーキュラーエコノミー(循環型経済)のソリューションは、既存のビジネスに比べて、2040年までに年間のプラスチック汚染を少なくとも80%削減できる。

3.すべての国が確実に参加するようにするには、国の法令やアクションプランの策定・実施を可能にするべく、専用の金融メカニズムとキャパシティ・ビルディング(能力構築)を整備する必要がある。

4.政府と企業は、義務的な情報開示と報告によって説明責任を負う必要がある。例えば、企業は廃棄物の投入量の開示(例:われわれが使用するプラスチックは100%リサイクルできる)から、廃棄物の排出量とその結果の開示(例:われわれのプラスチックの27%は適切に管理されておらず、環境中に廃棄された)へと転換していかなければならない。

5.プラスチック廃棄物をグローバル・サウスへ輸出している先進国は、少なくとも年間の輸出量に応じて輸入国のインフラ整備を支援する責任がある。

WWFの「ノー・プラスチックス・イン・ネイチャー(No Plastics in Nature)」で責任者を務めるジョン・ダンカン氏はedieの取材に対し、「現在のプラスチックの生産・消費システムに内在する不均衡が、非常に長期にわたって、プラスチック汚染問題を多くの人の目から遠ざけ、忘れ去られるようにしてきた。また、低所得国やより貧しい地域社会に社会的、経済的、生態学的に負荷をかけてきた」と語っている。

サーキュラーエコノミーへの転換の実行可能性について調べたオランダのシンクタンクCircle Economyによる最近の報告書は、サーキュラーエコノミーへの転換に関するこれまでの研究や計画の大半が、サーキュラーエコノミーに向けた取り組みのグローバル・サウス(全体の25%を占める「ウェイスト・スポンジ」に該当する国々)の人々への影響について十分に対処できておらず、先進国であるグローバル・ノースに偏っていると論じている。紛れもなく、グローバル・サウスは、気候危機やその他の産業公害でもみられるように、グローバル・ノースの壊れたシステムや一連の行為の副産物に取り組むよう委ねられている。

官民による取り組みは格差対策に効果を発揮している。例えば、プラスチックの海洋汚染に取り組む多国籍のテクノロジー企業や消費財企業からなるコンソーシアム「NextWave Plastics」(米ニューヨーク)は、使用済みのプラスチック素材を製品・パッケージに簡単に利用でき、商業的に採算のとれるサプライチェーンの構築に取り組んでいる。コンソーシアムでは、非正規の廃棄物回収業者として生計を立てている人たちを保護する社会的責任フレームワークを展開する。さらに、業界の利害関係者らが集結する連合「国際的なプラスチック条約のためのイノベーションアライアンス(Innovation Alliance for a Global Plastics Treaty)」は、来るべき国際的なプラスチック汚染防止条約に、プラスチック廃棄物の問題に世界中で取り組み、最前線に立つ業界のステークホルダーの重要な視点を取り入れるよう政策立案者に求めている。