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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

グリーンな企業になる難しさ グリーンウォッシュを回避する方法を考える

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Tom Idle

グリーンウォッシュへの警戒が世界的に高まる中でも、グリーンウォッシュがなくなることはない。英国の金融系シンクタンク「プラネット・トラッカー」の最新の報告書によると、グリーンウォッシュはますます巧妙になっているという。同社は「グリーンウォッシュは誤解を招くが、すべてが違法とは限らない」とし、企業・ブランドの悪用に対する規制の抜け穴について指摘する。報告書『The Greenwashing Hydra(グリーンウォッシング・ヒュドラ)』ではグリーンウォッシュを6種類に分類している。グリーンウォッシュをめぐる世界の潮流と、企業・ブランドが進むべき方向性について専門家の意見を紹介する。

6つのグリーンウォッシュ

ヒュドラとはギリシャ神話に登場する多頭の怪物のこと Image credit: Planet Tracker

グリーンクラウディング(Greencrowding)
「みんなでいれば怖くない」という数が多いことによる安全性に頼り、多くの企業が集まるアライアンスなどに入ることで大勢の中に隠れること。サステナビリティに関する政策が前進するときに、この集団は最も遅い速度で動くだろう。

グリーンライティング(Greenlighting)
他の企業活動での環境を破壊する行動から注意をそらすために、広告などのコミュニケーションにおいて経営・製品の特に環境配慮の側面について例えどんなに些細なことであっても取り上げること。

グリーンシフティング(Greenshifting)
企業が消費者に責任があると暗に伝え、消費者に責任を転嫁すること。

グリーンラベリング(Greenlabelling)
マーケティングの担当者がグリーンなもの、サステナブルなものと呼んでいるものが、詳しく調べると誤解を招くものだということが判明するようなふるまい。

グリーンリンシング(Greenrinsing)
企業がESG目標を達成する前に定期的に目標を変更すること。

グリーンハッシング(Greenhushing)
企業の経営陣が投資家による精査から逃れるためにサステナビリティに関する情報を過小報告したり、隠したりすること。

プラネット・トラッカーは、「グリーンハッシング」の一例として、最近EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の下で9条ファンドから8条ファンドに格下げされたブラックロックやHSBCの資産運用会社を挙げている。ちなみに、9条ファンドはサステナブル投資戦略に従わなければならず、8条ファンドは環境や社会的要因を考慮すべきだが持続可能な成果を目指す必要はない。 プラネット・トラッカーは「この行動は9条の基準に関する調査を避けるために行われた可能性がある」とも指摘している。

「驚くのはNGOや活動家、メディア、さらに規制当局からの批判や指摘があるにもかかわらず、グリーンウォッシュが非常に蔓延していることです。投資家は油断すべきではありません。結局のところ、惑わされているのですから」と報告書は説明する。

世界の規制の潮流

世界的には、規制機関がグリーンウォッシュに対抗する法律を施行しようと徐々に動き始めている。EUの法案では、自社の商品について確証がないにも関わらずサステナブルだと主張する企業に罰則を与えることを提案する。欧州委員会は「グリーン」「エコ」「環境にやさしい」といった環境に関する企業の主張の4割は確証のないものだとみており、その対処に積極的な姿勢をみせている。欧州委員会は、環境に配慮したグリーンなものであるという企業の主張を裏付けるための検証制度の設置を各国に求めている。基準に抵触した企業には、効果的で相当かつ、抑止力のある方法で罰金が課せられることになるだろう。

英国では、公正取引委員会が食品や飲料、化粧品などの日用品を取り扱う企業・ブランドに対し、彼らの環境に関する主張に焦点を当てる。英競争・市場庁(CMA)は、家庭用品の大半が「グリーン」または「環境にやさしい」ものとして広告・宣伝が行われ販売されているという証拠を集めている。

同国で販売されている食器用洗剤の約9割、ほぼ全てのトイレ用品のパッケージにはサステナビリティに関する文言が少なくとも一つは記載されているという。しかし、そのどれが事実で、どれが事実でないかについて把握する確かな方法はない。CMAの最高責任者であるサラ・カーデル氏は「多くの買い物客は惑わされており、思っているものとは異なる製品にプレミアム価格を払っている可能性がある」と語る。

CMAは根拠がないのにグリーンであると主張するものを見つけた場合、特定の企業への強制措置や捜査を行う。環境に関する表示の正確さや明瞭さを規定する「グリーン・クレーム・コード」を使い主張を評価する。CMAには企業に訴訟を起こしたり、コミュニケーションの方法を変える計画を立てさせる権限がある。

米国では、証券取引委員会が昨年の夏、誤解を与えたり、人々の目を欺くようなESGに関する主張を防止するための規則変更を発表したが、それが定着して望ましい効果を生むのには時間がかかるだろう。

オーストラリアも同様だ。証券規制当局が、サステナビリティ関連の商品を販売・プロモーションする際にグリーンウォッシュをどう回避するかについて示した情報シートを発行した後、グリーンウォッシュに関する法律を施行した。情報シートは、現在そして将来の投資家が十分な情報に基づいて投資判断を行うために必要となる関連情報のねじれの問題を指摘。グリーンウォッシュが投資家の信頼を損ない、公正で効率的な金融システムの脅威になる可能性があると説明する。

欧州での法制化にはまだ時間がかかりそうだ。指令案は「ムービングターゲット(動く目標)」と呼ばれ、法制化の前に緩和される可能性が十分ある。いわゆるグリーン・クレーム指令案については、政策立案者らが環境に関する主張の検証に使う手法について合意を得るのに苦労しており、2022年に発表される予定だったものの数回にわたって延期されてきた経緯がある。

有言実行の重要さ

一方で、企業・ブランドも複雑な状況にある。カナダの調査・コンサルティング会社グローブスキャンが実施する「健康で持続可能な生活に関する消費者調査」によると、消費者が企業や製品のESG関連の情報を好意的に受け入れようとしていることが分かった。実際、企業・ブランドのサステナビリティに関する情報に触れた多くの人がその情報を信じており、そうした信頼を損なうリスクは莫大だ。

気候変動対策にクリエイティビティを役立てようと取り組む非営利団体「クリエイティブ・フォー・クライメート・アカデミー」(オランダ)で主任トレーナーを務めるギル・ウィルソン氏は、プラネット・トラッカーの報告書を引き合いにして、グリーンウォッシュとは何かをより明確に定義する時が来ていると語る。ウィルソン氏によると、コミュニケーションやマーケティングはさらなる混乱を生み出すリスクがある。「グリーンウォッシュはより洗練され、混乱を招いています。明確な定義を定めることが必須でしょう」と説明する。

一方で、ルーシー・フォン・スターマー氏は同意しない。「クリエイティブ・フォー・クライメート」の創始者兼チェアウーマン(女性の会長)として、フォン・スターマー氏はこれまでに数百人のクリエイターと仕事をし、同団体のプラットフォームやクリエイティビティを通じて気候危機への意識を高めてきた。

「ビジネスの世界では変化が起きています。しかし、企業は完璧ではありませんし、自社がもたらす影響に関する知識のレベルは非常に低く、消費者に誤った情報を与えています。完璧な定義や規制を求めても、目標を達成することはできません。消費者に誤解を与える要素についてより正確に理解するために、マーケターの知識を深め力をつけるようにする必要があります」

さらに、フォン・スターマー氏によると、サステナビリティ計画を実行する方針を立てながらも、「すべての準備が整うまで」それについて語らないという企業が増えているという。その姿勢を彼女は両刃の剣だと表現する。「何も語ろうとしなければ、何も変わりません。しかし同時に、ブランドには節度と思いやりの精神もなければなりません」と話す。

彼女の指摘は、サステナビリティへの取り組みが細かく複雑なものだということを思い起こさせる。カーボンオフセットの最新動向を見るだけでも、企業が常に正しい行動をとることがいかに難しいかがわかるだろう。

グリーンウォッシュが起きるのを防ぐのは難しいかもしれないが、簡単な解決策がある。「証明することから始めましょう。コミュニケーションから始めるのではありません。われわれの脳は消費者が望むものから始めるように訓練されていますが、課題から始める必要があるのです。こうした思考を身につけることは簡単ではありません。しかし、自社の戦略について考え、2030年にすることを約束するのではなく、自社がいま何をしていれば信頼されるのかを明確にすることです」とウィルソン氏は話す。

さらに、最もサステナブルな企業・ブランドというのは「サステナブル」という言葉を使わないブランドだと付け足す。「私たちは消費者が理解していない言葉を多用して、消費者を盲目にさせているのです」と警鐘を鳴らす。

フォン・スターマー氏は「グリーンハッシング」を捨て去り、企業・ブランドはグリーンになることに対して臆病(カワディス)になる「グリーンカワディス」をやめる必要があると言う。

「コミュニケーション部門やマーケティング部門は、社内において何かを支持するためにさらに勇気を持つことが必要です。しかし、そのような闘いに挑む準備ができている人は燃え尽きることがほとんどです」と課題を指摘している。