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シンガポールとイスラエル政府、ウナギなどの細胞水産事業に出資

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フードテックのウマミ・ミーツ(シンガポール)とステーキホルダー・フーズ(イスラエル)は細胞培養や3Dバイオプリント技術を用い、従来の養殖魚・水産品に代わる持続可能な代替食品の生産を拡大しようと取り組んでいる。2社はこのほど、ウナギやハタを3Dバイオプリント技術を用いて製造するための助成金100万ドル(約1億3200万円)をシンガポール・イスラエル産業研究開発財団(SIIRD)から獲得した。

急速な成長を遂げる細胞農業。その中心的存在であるステーキホルダー・フーズは2019年に創業し、工業化された畜産や漁業の代替策として、殺処分を行わずに牛や鶏、豚、水産物を製造・販売する。

ステーキホルダー・フーズの3Dプリンターでステーキ肉を製造する様子

ステーキホルダー・フーズの事業開発部門の責任者であるヤイール・アヤロン氏は「業界間の連携は、長期的なビジネス戦略において重要なもの。ウマミ・ミーツとの協業は、イスラエルとシンガポールの両政府による共同イニシアティブから支援を受けることができ、最近行った魚の食感に関する特許申請に続き意義のあるものだ」と語る。

2020年創業のウマミ・ミーツは、人や海の健康・健全性に配慮しながら、美味しく栄養価の高い、手頃な価格の培養水産物を実現するべく取り組んでいる。ウマミ・ミーツが取り扱うニホンウナギやフエダイ、キハダなどの細胞培養の水産物は天然のものと同等の栄養価があり、重金属や抗生物質、マイクロプラスチックなどによる食の安全への懸念のない食品だ。

2社による最初の試作品は複合構造のハタ製品で2023年前半に完成する予定だ。製品は、ウマミ・ミーツの細胞に合わせたバイオインクとステーキホルダー・フーズ独自の3Dバイオプリント技術を用いてつくられる。

ウマミ・ミーツのCEO兼創業者のミヒル・ペルシャド氏は、「われわれの培養水産物に関する深い知識・経験とステーキホルダー・フーズの革新的な3Dプリント技術を組み合わせることができ非常に楽しみだ。今回のパートナーシップは、高まる消費者の需要に応え、高品質なシーフードを提供し、より持続可能なフードシステムのビジョンを示す手助けになると思う」と話した。

シンガポールは2020年、培養肉食品の販売を世界で初めて承認した。細胞農業を島国シンガポールに不足する自然資源への依存を大幅に減らせるものと位置付け、食料安全保障に関する国家計画を策定している。

細胞農業を用いた持続可能な食のソリューションへの関心は高まり続けている。昨年9月には、米政府も細胞培養食品への新たな支援を発表。そのひと月後には「世界食料安全保障研究戦略」を発表し、飢餓や栄養失調をなくし、中長期的に持続可能でレジリエントな食料システムの構築を目指すことを強調した。英国、イスラエル、オランダなど他の国でも細胞農業への投資は増えており、細胞培養食品が世界の農業に大改革をもたらす可能性を示唆している。