サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

COP27、化石燃料の段階的廃止は後退 2030年に向けて世界はどう進むべきか

  • Twitter
  • Facebook
Sustainable Brands Staff

COP27(第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議)は20日、終了予定時刻から36時間以上が過ぎて閉幕した。最終的に、気候変動の影響により深刻化する途上国の損失と損害(ロス&ダメージ)を先進国が補償するための新たな基金を設立するという画期的な合意が結ばれた。一方で、化石燃料の段階的廃止に関しては十分に話し合われず、手遅れを防ぐ脱炭素化を難しくする危険な抜け道を開くことになった。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は閉会に際し「今回のCOPは正義に向けて重要な一歩を踏み出した。基金が設立され、今後運用されることを歓迎する」と話し、気候危機の最前線にいる人々の声を聞かなければならないことを強調した。

今回のCOPで、途上国は気候災害に最も脆弱で、気候危機の要因にほとんど加担していない国々の損失と損害に対する補償を強力に、そして繰り返し訴えた。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのグランサム研究所のアデリン・スチュアート・ワッツ政策研究員は最近の投稿で、気候変動に脆弱な途上国は20年にわたり気候変動の影響で生じた損失と損害を最小化し解決するための財政・技術両面での支援を求めてきたと説明している。一方、先進国側は法的責任を受け入れているかに見られないよう、損失と損害に対する資金提供を越えてはならない大きな一線と捉えてきた。

グテーレス事務総長は基金について「明らかにこれでは十分でないが、損なわれた信頼を再構築するために求められてきた政治的引き金だ」と語り、国連はあらゆる面からこの取り組みを支援すると強調した。COP27で議長を務めた、エジプト外相のサーメハ・シュクリ氏は「決定案は取り組みを拡大し、気候中立で気候変動の影響から回復する未来に向けての転換を可能にする最初の関門だ」と述べた。

予定していた18日の閉幕に間に合わず疲れ果てた参加者らは最終的に、最も困難な議題について決定を下した。これには、来年のCOPまでに最も脆弱な人々への資金援助体制を構築するという約束や、2025年以降の新たな気候資金に関する合同数値目標が含まれる。この他の新たな展開としては「緩和作業計画(mitigation work program)」がある。世界規模で温室効果ガスの排出量を削減し、影響力のある行動をもたらし、主要国が野心を高めて1.5度に温度上昇を抑えるために緊急に行動を起こすことを約束するものだ。

こうした課題への合意は、正しい方向に進む歓迎すべき一歩とみなされているが、他の重要な課題についてはほぼ前進がみられなかった。特に、化石燃料の段階的な廃止や温度上昇を1.5度に抑える必要性に関して表現が厳格化することはなかった。

それだけでなく、未来のエネルギー源として再生可能エネルギーと並んで「低排出」エネルギー(low emission energy)という言葉が登場するなどよりソフトな表現が用いられた。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)の明確なガイダンスに反するような、意味の広過ぎる言葉は新たな化石燃料開発を正当化するために使われる可能性がある重大な抜け道と言える。最終決定文書は、化石燃料の「段階的廃止(phase-out)」という言葉が最後の数時間で「段階的縮小(phase-down)」という極めて弱い表現になったことを除いては、昨年のCOP26での公式発表をほぼ踏襲した内容となった。

気候変動との戦いは続く

グテーレス事務総長はスピーチを通し、気候変動対策に関して取り残されている優先事項を世界に思い出させた。温室効果ガスの削減、パリ協定の掲げる1.5度目標が有効であり、気候変動という崖っぷちから人類を引き戻すことの重要性だ。

「われわれは今まさに削減量を劇的に減らす必要がある。しかし、この問題は今回のCOPでは取り上げられなかった」と嘆き、世界は気候変動に対する野心を大きく飛躍させ、再生可能エネルギーへの大幅な投資により化石燃料への依存を終わらせる必要があると話した。

さらに、国際開発金融機関や国際金融機関のビジネスモデルを変える重要性を繰り返し指摘し、「こうした機関はより多くのリスクを受け入れ、途上国のために民間資金を合理的な利率で体系的に活用しなければならない」と語った。

地球はなお緊急治療室にいる

事務総長は、損失と損害のための基金は不可欠だが、気候危機により地図上から小島嶼国が消え去り、アフリカの一国の全土が砂漠になるなら、それは解決策にならないと話した。そして、化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギーの拡大を加速させるための公正なエネルギー移行パートナーシップの必要性を繰り返し、開会式で語った「気候連帯協定」をここでも改めて呼びかけた。

「すべての国が1.5度目標に沿ってこの10年間の排出量を削減するためにさらなる努力をするための協定だ。協定は、国際金融機関や民間セクターと共に、主要新興国が再生可能エネルギーへの移行を加速できるよう財政・技術的支援を行うものだ」と説明し、1.5度目標を実現するために不可欠と強調した。

活動家などへのメッセージ

事務総長は、会議の初日から声を上げていた市民社会や活動家に対しても「あなた方のフラストレーションを共に味わっている」とメッセージを送った。さらに、陽の当たらない時も課題解決に向けて動き続けてきた気候変動活動家、特に若い人を守らなければならないと語った。「世界の最も重要なエネルギーの源は、人々の力だ。だからこそ気候変動対策の人権的な側面を理解することが非常に重要なのだ」。

これに対し、ケニアの若手環境活動家であるエリザベス・ワスティ氏はこう話している。

「COP27は閉幕したかもしれませんが、安全な未来に向けた戦いは終わっていません。相互に関連し合う食料や自然、気候危機はすべての人に影響をもたらしています。しかし、私たちのような最前線に立つコミュニティは打ちのめされています。私たちが行動を起こす前に、どれほどの警鐘を鳴らせばいいのでしょうか。12月に開かれる生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、政治指導者が自然を保護・回復するための強力な国際協定に合意することがかつてないほど喫緊の課題となっています」

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のサイモン・スティール事務局長は閉会の辞で、「この歴史的な結果は、私たちを前進させ、世界中の弱い立場にいる人々に利益をもたらすものだ。しかし、もしカメラが動いた瞬間に揃って記憶喪失になろうとするのであれば、今回の会議の意味はない」と語り、すべての参加者に新たな決定に対して責任を持つよう求めた。

スティール事務局長の発言はCOP27でさらに広がった不信感を訴えるものだ。参加者らは宣言やきれいな約束はするものの、政策や経過に置いて待ち望まれている変化を起こすことはほとんどない。その例が、2015年のCOP21で採択されたパリ協定の進捗だ。7年が経ち、国連は最近「不十分」との見解を示した。

グテーレス事務総長が閉会の挨拶で呼びかけた通り、「私たちはすでにパリ協定と2030年という期限の中間地点にいる。総力を挙げて、正義と野心を推進しなければならない」。