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世界の金融機関220社、COP26を前にグローバル企業1600社に1.5度目標の設定を求める

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Photo by Marek Piwnicki

10月31日に英グラスゴーで開幕するCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に先立ち、世界の220の金融機関が、環境・経済面において大きな影響力を持つグローバル企業1616社に対し、SBTi(Science Based Targetsイニシアティブ)に参加し、世界の気温上昇を産業⾰命前に比べて1.5度に抑える科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標を設定するよう呼びかけている。220社の資産総額は29.3兆ドル(約3287兆円)に達する。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

企業の環境対策を評価する英国のNGO、CDPがまとめるこの「CDP Science-Based Targetsキャンペーン2021」には、世界26カ国の220の金融機関が署名しており、その保有資産の総額は米国や中国、EU全域の国内総生産(GDP)を上回る。CDPによると、前年のキャンペーン時に比べ、企業のCEOに手紙を出すことに賛同・署名する投資家や金融機関の数は60%増え、資産総額は51%増加した。なお企業に温室効果ガスの削減目標を求めるSBTイニシアティブ(SBTi)は、CDPと国連グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)による共同イニシアティブだ。

金融機関だけでなく企業もサプライチェーンの取引先に参加を求める

署名金融機関には、アムンディ、アリアンツ、インサイト・インベストメント・マネジメント、キャセイ・フィナンシャル・ホールディングス(国泰金融控股)、クレディ・アグリコル、DWSグループ、マニュライフ・インベストメント・マネジメント、リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントなど世界有数の投資家、金融機関が名を連ねる。

さらに今回のキャンペーンでは、金融機関に加え、アストラゼネカやHP Inc、NTTデータ、野村総合研究所、VISA、マスターカード、ルノー、ロレアルなど年間の総調達額が5000億ドル(約56兆円)に上る26社のCDPサプライチェーンメンバー企業(CDPを通じてサプライチェーンの最適化を行う大企業)も参加し、1616社に名を連ねるサプライヤー企業に対して科学的根拠に基づく削減目標の設定を求めている。

これらの金融機関や企業は、業界標準に照らし合わせて検証された、信頼性のある、科学的根拠に基づく排出量の削減目標を設定するよう求めている。なお、2022年7月15日以降に目標を提出する企業や金融機関については、これまでの気温上昇が産業革命前より2度を十分に下回る水準の目標では承認されず、1.5度に抑える水準の目標でなければ承認されない。

1600社にサムスンや日本製鉄、ルフトハンザ

CDPが目標の設定を求める1616社には、中国のセメント最大手、安徽海螺水泥やアソシエイティド・ブリティッシュ・フーズ(英)、サムスン(韓)、タタ・スチール(印)、デューク・エナジー(米)、日本製鉄、現代自動車(韓)、ルフトハンザ(独)などが含まれるという。特に行動が求められる企業として名前が挙がっている企業は、サザン・カンパニー(米)、サムスン(韓)、タタ・スチール(印)、BASF(独)、ルフトハンザ(独)だ。

1616社の時価総額は約41兆ドル(4600兆円)を上回り、MSCIワールド・インデックス全体の36%を占める。温室効果ガスの排出量はスコープ1、スコープ2において11.9ギガトンに達し、米国とEUの年間排出量を上回る規模だ。一方で、現在、世界の時価総額の20%以上を占める企業がSBTイニシアティブ(SBTi)に参加しているという。

人類の未来にとって欠かせない取り組み

CDPのジョイント・グローバル・ディレクターであるローラン・バビキアン氏は、「2021年は、世界の金融機関が2050年までにネットゼロを達成することを一斉に約束する年と言える。しかしながら、この目標を達成するには金融機関が融資や投資を行う企業自体が科学的根拠に基づく確固たる削減目標を掲げ、バリューチェーン全体において脱炭素化を急速に推進しなければ達成することはできない。これほど多くの投資家や金融機関が声を合わせて同じことを言っているということは、目標の設定を求められた企業は動かなければならないし、さもなければ資本コストが上昇するリスクを抱えることになる」と語る。

「SBTの水準に沿った目標を掲げていないということは、気候変動リスクの管理を怠っていると警告を発しているということだ。われわれがネット・ゼロ・エミッション経済を実現し、今年、世界的に明白となった深刻な気候変動の影響を緩和するためには、COP26を前に、世界全体の排出量の大半に責任を有する企業がより大きな野心的目標を示すことが必要だ」

SBTイニシアティブ(SBTi)のマネージングディレクターで共同設立者のアルベルト・カリロ・ピネダ氏は「お金がものをいう世の中だ。そうした中、世界の金融業界の呼びかけは大きく、明白だ。脱炭素ビジネスモデルは気候変動によるリスクのない豊かな経済を実現するための唯一の賢明な選択肢であり、早急な脱炭素化を求めているのは科学界だけでなく金融界も同じ。われわれはすべての企業に対して科学的根拠に基づいた脱炭素目標を設定することを呼びかけ、金融界にはこのキャペーンにおいてリーダーシップを発揮し、投融資のポートフォリオに科学的根拠に基づいた目標を設定することを求めている。こうした動きは2030年までに温室効果ガスの排出量を半減し、2050年までにネットゼロを達成するには不可欠なことで、人類の未来にとっても欠かせない」と話す。

昨年のキャンペーンでは、SBTi(Science Based Targetsイニシアティブ)に参加する企業数が増え、ドイツの年間総排出量に相当する温室効果ガスを排出する時価総額5.2兆ドル(約583兆円)規模の154社が同イニシアティブに参加した。キャンペーンの対象になった企業の8.1%にあたるという。CDPが質問をした企業のうち56%はキャンペーンがSBTiへの参加に直接影響したと報告し、一般投資家によるプレッシャーによって目標を設定したと回答した企業は96%に上る。

10月11日現在、世界の1929社がSBTiに参加し、このうち900社以上が気温上昇を1.5℃に抑える目標を設定するキャンペーン「Business Ambition for 1.5℃」に署名する。調査によると、代表的な企業は年間6.4%の温室効果ガスの排出量を削減しており、これは1.5度目標を達成するために必要とされる年間4.2%削減という水準を上回る。

CDPは、今回のキャンペーンの効果が評価される2022年9月までに対象企業がSBTiに参加するよう求めていく計画だ。