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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

パーパスを語るだけではブランドは進化しない ブランドリーダーに必要な5つの力量

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Laura Quinn (Purpose)
Alexey Yaremenko

現代のブランドリーダーは、プライド(LGBTQ+)、米国での投票制限問題、そして気候変動にいたるまで、この時代が抱える最大の社会問題や環境問題に対して、自ら進んで意見を述べる覚悟が必要だ。ウォーク・ウォッシング(woke-washing:企業が社会的課題に取り組んでいるように見せること)やキャンセル・カルチャー(炎上などをきっかけに、人物や企業、ブランドなどを完全に排除しようとする現象)が蔓延する世の中では、ここで紹介する5つの力量を軽視することはできない。これらはすべてのブランドリーダーに必要ながらも、十分なレベルに達していない力量を指す。(翻訳=梅原洋陽)

そして、この統計も今では十分に知れ渡っている。世界全体で、67%の人々は自分の選択するブランドが良いサービスや品質を提供するだけでなく、社会に良い影響を与えているかどうかを重視している。また、米国の成人の64%は企業の最も重要なパーパス(存在意義)は世界をより良くすることであるべきだと回答している。多くのパーパス経営を行うスタートアップ企業が眼鏡、ファッション、そしてトイレットペーパーなど多様な業界の現状を創造的に破壊している。そして、ユニリーバ、マース、ダノンなどの大企業は自社の多数あるブランドのポジショニングにパーパスを掲げることを必須としている。

その結果として、ブランドリーダーの仕事は大きく変化している。リーダーシップコンサルティングやエクゼクティブサーチを行う企業である、エゴンゼンダー北米のプリー・ラオ氏はこう話す。

「CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)やマーケティング部門にとって、ブランド・パーパスは消費者への対応をしながら、収益を上げるために今や欠かせないものです。多様な役割をこなすマーケティングリーダーにとって、ブランド・パーパスを実現することは、業界を問わず、中核をなす最も重要なものです」

しかし、従来のブランド・リーダーシップの在り方から、パーパスを通して、社会に真のインパクトを与えるリーダへと進化することは、コミットメントとスキルを必要とする挑戦だ。Bコープ認証企業で、世界7都市で事業展開するコンサルティング会社Purpose(パーパス)では、毎週素晴らしいブランドリーダーたちに会う機会がある。彼らは明確な問いを持っている。それは「この仕事をどのように行っていけばいいのか」というものだ。

ブランドリーダーが直面している課題、つまりパーパスと社会へのインパクトという職務内容は新しいものではないが、従来のブランドキャンペーンを実施するためのスキルと、実際に効果的な社会変革を起こすために必要なスキルは異なることが多いのだ。複雑な課題に直面しながら舵取りをし、ムーブメント(社会の潮流)の中で意義のあるブランドの役割を見出し、非営利のパートナーと効果的に協力し、消費者を実際の行動に導いていくには、今までの専門家やブランドリーダー、そしてそのパートナーが有しているものとは異なる、新しい筋肉と異なる考え方が必要だ。

必要な5つの力量

パーパスを通してブランド価値を実現するリーダーを支援していく中で、すべてのブランドリーダーにとって必要でありながら、十分なレベルには達していない5つの力量を特定した。

1.エコシステム思考
ムーブメントや社会的課題は、多くの当事者が共同でひしめき合う複雑なエコシステムだ。従来のブランドキャンペーンのアプローチとは異なり、このような空間の中での活動は、関連するメッセージを発信したり、エンゲージメントを作り出すだけでは十分ではない。必要なのは、ブランドや企業が最も価値を与えられる場所を理解するために、エコシステムの中にどのような人が存在し、誰が耳を傾けてくれるのかを知ることだ。

2. 鋭い公正の視点
現代のリーダーにとって、おそらく最も価値のあるスキルは、展開するビジネスや社会の中で不公正がどのような形で、どこに存在するかを理解することだろう。この力量によって、自身の組織を既存の社会的不公正に対抗できるようにし、倫理的なテクノロジーの利用方法から丁寧な演出(表現)にいたるまで、ブランドのタッチポイントに公正という視点を持つことができる。

3. ムーブメントに対する寛容さ
ブランドリーダーに染み付いている能力は、ある空間を同一化し、占有し、自分のものにすることだ。しかし、ブランドはムーブメントを自分のものにはできないし、しようとすべきでもない。消費者に尊敬される真のポジションを確立するには、ブランドは既存のムーブメントを理解し、他の当事者とリソースを寛大に共有し、自社に最も都合の良い部分を埋めるのではなく、最も重要なずれを埋めることをすべきだ。

4. 2つのインパクトを測定する
ブランドリーダーは、ブランドの価値を追跡し、マーケティングROI(投資利益率)を測定することに精通している。ブランドリーダーがブランド・パーパスを効果的に実現していくためには、ソーシャル・インパクトの測定と評価の方法論についても理解していく必要がある。自社の活動の影響を追跡できるようになれば、ブランドは信頼とエンゲージメントを高める強力なプラットフォームとストーリーを構築することが可能となる。

5. 知らないということを知る
困難な問題に取り組むことは、不快さを経験するということだ。自分がそもそも何を知らないのかを、知ることさえ難しい。複雑な課題やパートナー、そして人間関係をナビゲートしてくれる適切な人と協力し、自分が専門家ではない時はそのことを自覚することで、より確実な戦略が立てられ、より強力なブランド・インパクトを生み出すことができるようになる。

ブランドリーダーがこうした力量を身に付けるか、もしくはリーダーを助けてくれる適切な人材を見つけることができれば、世界に真のポジティブなインパクトを与える本物のブランド・パーパスを実行できるだけでなく、ブランドの評判を守り、より深く長期に渡る関係性を消費者と築くことが可能となるのだ。