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オランダのデザイナーが開発した、空間のコロナウイルスを99.9%除去する空飛ぶライト「アーバン・サン」

Scarlett Buckley

新型コロナウイルスは世界の動きを止めた。ほぼ全ての交流がスクリーン越しになり、人々が求める触れ合いはソーシャル・ディスタンスや外出禁止令、ロックダウンによって制限された。この変化の時代に、人々はより明るい未来への希望の光とインスピレーションを求めている。まさにその希望の光を作り出しているのが、オランダのソーシャル・デザインラボ「スタジオ・ローズガールデ」の「アーバン・サン(Urban Sun)」プロジェクトだ。(翻訳=梅原洋陽)

気鋭のオランダ人アーティストでイノベーターのダーン・ローズガールデ氏は、米サステナブル・ブランドに対して「私たちは自らの未来の被害者です。建築家がやるべきことはなにか。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時、デザイナーの役割を自問しました。自然や環境が世界を支配するなかで、建築家の仕事とはなんなのだろうかということです」と語った。

この自問に対する答えが、ロッテルダムにあるアーバン・サンだ。アーバン・サンは浮遊するデザイン・インスタレーションで、光で希望を視覚化し、遠紫外線を用いてコロナウイルスを99.9%除去することで、イベント空間をより安全にするものだ。

Urban Sun by Roosegaarde cleans public spaces of the coronavirus [Official Movie] from Studio Roosegaarde on Vimeo.

ローズガールデ氏のチームは、秒速300キロメートルの光の力を利用すると空間を数分間で殺菌できることを発見した。

「2018年、科学誌『ネイチャー』に遠紫外線(far-UVC)に関する記述がありました。科学者らによると、害のあると知られている一般的な紫外光(UV光)とは異なります。遠紫外線は特殊な波長で、UV光の波長(245nm)より短く(222nm)、人間と動物には無害でありながら、ウイルスを死滅させる力があります」(ローズガールデ氏)

ローズガールデ氏らは14カ月の設計期間を経てアーバン・サンを実現させた。光の力を利用し、科学とデザインを融合させたアーバン・サンは、空気中のコロナウイルスを99.9%除去できることが科学的に証明されている。波長の違いによって遠紫外線はバクテリアやウイルスを排除できるのだ。

このプロジェクトは、現在、そして将来のウイルス発生時の解決策となるだろう。今後、発生しうるパンデミックをより強力にコントロールできるようになるはずだ。

ローズガールデ氏は「私たちは複雑な状況をコントロールできるようになりました。アーバン・サンによって、人々は常時除菌されている公共の空間を訪れることができます。さらに、新型コロナウイルスだけでなく、全てのウイルスに効き目があるため、インフルエンザや新たなウイルスからも守られることになります」と言う。

このプロジェクトは、新型コロナウイルスの治療法にはならないが、屋外での感染リスクを軽減する策になるだろう。欧米ではようやく屋外で安全にミーティングをすることが可能となり、ローズガールデ氏の言う「キュレートされたZoomやFacebookのバブル」から逃れられるようになるだろう。

ローズガールデ氏らは、アーバン・サンの技術が有効なことを証明した。これは光殺菌の可能性の始まりを示しているのかもしれない。

「紫外線の分野では、浴びても安全だとされる基準値があります。これは世界中の誰もが安全だと同意する放射線の値であり、この紫外線も同じ安全基準です」とローズガールデ氏は言う。しかし、同氏はこの基準値は1970年代に決定されさており、その後著名な科学者らが、実際の安全な基準値は、現状で使用されている値の20倍も高めに設定できる可能性があると言っていることを指摘した。

「科学者らは現在、その値を見直すことを正式に提案しています。そして、より高い閾値が12〜15カ月以内に認められたら、今よりも20倍速く、20倍広く実施できます。この技術とデザインは進化していて、現在、開拓している状態です。まだまだ開発の余地があります」

この技術はすぐに利用できる状態で、現在は社会でどのように実装するかを決めていく段階だ。「アーバン・サンの技術は、飛行機、学校、エレベーターなどで使われるようになるでしょう。しかしわれわれのようなデザインスタジオでなく、テクノロジー産業が決定していくことになります」とローズガールデ氏は語る。

アーバン・サンは、ローズガールデ氏のチームと日本、イタリア、米国、そしてオランダから集められた科学者らによって生み出された。科学的根拠は、コロンビア大学と広島大学の科学者が執筆した論文に基づいているという。光の周りには黄色い輪があり、これは太陽の表面から約2000km上空にある大気層の太陽コロナを表している。この黄色い輪は、私たちを守っていることを示すデザインだ。

「太陽は紫外線を発するものの、人間の目には見えません。では、見えない光をどうやったら示せるかというと、見える光を追加することです。人間は見えることを好み、まさにこれこそがデザイナーの仕事。経験を可視化するということです。これもイノベーションの一つで、技術的なイノベーションだけでなく、社会的なイノベーションでもあります」

アーバン・サンの光は電力を使用しているが、300-400ワットととても少ない量だ。ローズガールデ氏はソーラーパネルや、ソーラーパネルから充電されたバッテリーでも運用できると言う。「デザイン全体を通して、使用するエネルギーや材料を検討した。デザインの原則として、最小のエネルギーで最大のパフォーマンスを目指しています」と付け加えた。

アーバン・サンは、新型コロナウイルスによってもたらされた、厳しい制限や将来のウイルスがもたらす社会的な影響を緩和する革新的な発明だ。

「このプロジェクトは、未来がどのようなものになるかを表すものであり、実在するものです。単なる想像上のユートピアではなく、現実なのです。われわれの世代、そして後世に新たな世界の美しさを示す必要があります。その美しさこそが、変化を受け入れるきっかけになります。数字や政治家の指示だけではダメなのです。イノベーションが可能であることを示し、これが人の心を開くでしょう。未来は好奇心やデザインを通してつくられるのです。美しさはそのきっかけになるでしょう」