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チャールズ皇太子、世界の保険業界と連携し気候変動対策を推進

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Debbie Fan

英チャールズ皇太子と世界有数の保険・再保険市場である英ロイズ・オブ・ロンドン(ロイズ保険組合)は6月、「持続可能な市場のためのイニシアティブ(SMI: Sustainable Markets Initiative)保険タスクフォース」を創設した。チャールズ皇太子によって招集され、ロイズが議長を務めるこのタスクフォースは、世界最大の保険・再保険会社17社のCEOで構成されている。影響力のあるプラットフォームを保険業界に提供することで、レジリエントなネットゼロの世界経済への歩みを推進していく。(翻訳=梅原洋陽)

増加し、さらに深刻化している気候変動に伴う自然災害に対して、コミュニティーや企業、そして経済を長い間支援してきた世界の保険業界は、気候危機に関する独自の視点を持ち、重要な役割を担っている。気候変動に起因する災害の影響を緩和・適応すると同時に、気候レジリエンスを高めるために資金的な支援をさまざまな業界に提供し、変革のスケールやスピードを支えていく。

趣意書には、温室効果ガスの削減量が排出量を上回るクライメートポジティブな融資やリスク・マネージメント戦略を提供し、世界中の個人や企業のより持続可能な未来への移行を加速していくことを支援・促進するとある。17社に含まれるのはロイズのほか、AIG、アリアンツ、アクサ、ビーズリー、リーガル・アンド・ジェネラル、東京マリンキルンなど。

ロイズはこのタスクフォースの設立は、新しく、さらに重要な世界的な保険業界のコミットメントを示すものだと発表している。数々の取り組みを通じて、クライメートポジティブな行動を推し進める。そこには以下のような内容が含まれる。

1. 法人顧客が、サステナビリティに関連するイニシアティブの開発、投資、さらにそれを拡大していくために、保険商品やサービスのイノベーションを推進する。タスクフォースは、優先順位が高いとされるエネルギー業界、例えば原子力、水素、洋上風力などの進化し続けている分野がさらに成長を加速するために、新たなリスクから保護する保険商品を少なくとも2つは生み出す。

2. 保険業界内のサプライチェーン全体で持続可能な取り組みを導入し、個人がよりサステナブルな生活を送るための積極的な行動を促し、そしてインセンティブを提供する。これには、個人顧客がより持続可能な結果を得られるような枠組みを業界全体で開始することも含まれる。例えば、住宅保険に「ビルド・バック・ベター(Build Back Better:より良い再建)」という保険金請求条項を導入することで、損傷した建物を立て直す際に、よりサステナブルな資材を促し、ネット・ゼロへの移行を奨励する。

3. 気候変動による経済的、そして社会的影響から途上国を守るための、官民が一体となった強固な災害対応・復興の枠組みを構築する。この枠組みは、保険業界の持つ、保険商品とリスクマネージメント、損失回復のためのサービスを組み合わせるというユニークな特性を活用する。そうすることで、災害への備えを強化し、影響を抑えることができる。このソリューションが開発された後、より良い災害対策、災害復興を支援するために、災害による被害が深刻化する可能性のある脆弱な国々で展開していく。2021年から試験運用が行われる予定だ。

4. 持続可能な投資を加速、拡大する枠組みを開発することで、(再)保険業界の30億ドル(約3300億円)以上の資産を活用し、先進国と途上国でのクライメート・ポジティブな結果につながる投資を増やしていく。再生可能エネルギーと気候変動に関する資産に重点を置いた投資提案を官民で作成し、低炭素経済への移行を推進する。

自然に逆らうのではなく、自然と調和する復興を

2020年の世界経済フォーラム・ダボス会議で持続可能な市場イニシアチブ(SMI)が打ち出されてから1年後に、英国王室の後継者であり、環境保全活動家のチャールズ皇太子はテラカルタ(地球憲章)というイニシアティブを発表した。大企業や産業界、金融界に「自然に逆らうのではなく、自然と調和する」ポスト・コロナの再生計画に取り組むように呼びかけている。2030年までに、サステナブルになるための約100の行動を促している。SMIタスクフォースはこのアイデアを構築し、実践していく。

チャールズ皇太子は「保険業界は、気候変動の影響や、今行動を起こさないとどのような損害を引き起こすかを理解しやすい立場にいます。多くの世界的な保険会社が共に、保険業界が自然や人々、さらに地球を経済の中心に置くにはどうすれば良いのかを考えていけることを嬉しく思っています」と語った。

ロイズの会長である、ブルース・カーネギーブラウン氏は、「大きな経済的、社会的な問題を引き起こしたパンデミックから世界は立ち直ろうとしています。これは、サステナビリティを中心にして再建するチャンスにできるはずです。気候変動はかつてないほどのシステム的なリスクを引き起こしていますが、パートナーシップや、行動を加速させることで、対処していくことは可能です。タスクフォースとして、私たちが管理するリスクと投資する資本を活用して、より持続可能な未来を創造するために必要な行動のきっかけとなることを確かに約束する」と述べている。