• 公開日:2021.06.24
米プラスチック協定、2025年までにプラスチックが循環する経済構築へ
  • SUSTAINABLE BRANDS

NAJA BERTOLT

米国でもプラスチックの循環利用に向けた仕組みづくりが加速している。それを推進する米プラスチック協定(US Plastics Pact)はこのほど、2025年までにすべてのプラスチック包装を再利用可能またはリサイクル可能、堆肥化可能なものにするという野心的な戦略を発表した。(翻訳=梅原洋陽)

戦略「2025年に向けたロードマップ」は、プラスチック包装のバリューチェーン全域に関わる95以上の企業やスタートアップ、研究機関、NGO、大学、州や地方自治体の賛同を得ており、真の循環型プラスチック経済の構築に向けて、目標とする成果を実現するための報告義務と具体的な期間が設定されている。

協定は、世界でサーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進するエレン・マッカーサー財団の取り組みの一環として、NPOリサイクリング・パートナーシップ(The Recycling Partnership)と世界自然保護基金(World Wildlife Fund)が昨年8月に発足したものだ。

米プラスチック協定の責任者エミリー・ティパルド氏は「米国のインフラの現状と、プラスチック包装材へのリサイクル素材の活用を促進するインセンティブの欠如が、バリューチェーンに大きな負担となっている。戦略は、米国の産業界のリーダーたちが、2025年までに循環型プラスチック経済を実現するために必要なシステム全体の大変革を行う後押しをするもの。残された時間は少ないが、やるべきことは膨大だ。もし何もしなければ、米国の循環型経済は何も変わらない。大きな変化を巻き起こしていくために、すべての賛同企業・団体と協働していきたい」と話す。

2025年が迫るなか、この戦略はエレン・マッカーサー財団のPlastics Pact Networkがすでに設定した野心的な前例を踏襲している。それにより、プラスチック包装、政策、教育、表示、アクセス、そしてインフラを統一させていこうとする狙いがある。

既存の米国内のイニシアティブとは違い、米プラスチック協定は国家戦略を策定し、共通の目標を押し進め、年次報告によって進捗状況を測定することで、包括的なリーダーシップを発揮し、説明責任を果たすものだ。

米プラスチック協定は、世界最大の消費財企業や小売企業など60社以上が署名して設立された。コカ・コーラ、ダノン・ノースアメリカ、ヘンケル、キンバリー・クラーク、ロレアルUSA、マーズ、ネスレ、ターゲット、テラサイクル、ユニリーバUS、ウォルマートなどが、設立時の署名者「アクティベーター」として名を連ねる。

協定は、システムを変化させ、プラスチック廃棄物に対処するための4つの具体的な目標の達成に向けロードマップを作成した。

1. 2021年までに問題のある包装材や不必要な包装材のリストを策定し、2025年までに排除する策を講じる。

2. 2025年までに、全てのプラスチック包装を再利用可能、リサイクル可能、堆肥化可能にする。

3. 2025年までに、プラスチック包装の50%を効果的にリサイクルまたは堆肥化するための積極的な行動をとる。

4. 2025年までに、プラスチック包装の平均リサイクル率、あるいは責任ある方法で調達されたバイオマスの含有率を30%にする。

米プラスチック協定とアクティベーターは、このロードマップをもとに、2025年までのそれぞれの目標達成に向けて、サプライチェーンの上流でのイノベーションを推進していくようだ。製品、包装、そしてビジネスモデルを見直すことで、従来の「採る―使う―捨てる」というパターンから、プラスチックがゴミとならない、循環型経済への移行を加速していく。

WWFのプラスチック廃棄物・ビジネス部門の責任者であるエリン・サイモン氏は「米国におけるプラスチック廃棄物問題に意義のある方法で対処するには、産業界のリーダー、廃棄物管理システム、政策立案者などの重要なステークホルダーが、一貫した行動計画のもとに団結する必要がある。その上で、このロードマップは定めた目標を達成し、一貫した透明性のある方法で進捗を測定する国家戦略を設定するカギとなるはずだ」と言う。

ロードマップは、米プラスチック協定に参画する企業が、既存のプロジェクトや投資の最適化、問題点の認識、必要な領域への資金供給の経験を生かし、ワーキンググループ方式で進めていく。これは米国が優先すべき事項と現状を反映しており、この国のプラスチック廃棄物の管理体制を、他の先進国に匹敵するレベルに引き上げるものだ。

「この新しい、野心的な目標を通して、バージンプラスチックの使用を減らし、洗濯用製剤や美容製品の包装に使用する資源を持続可能なものへと変えていく取り組みが加速している。米国の循環型経済を一歩前進させるために、2025年までにこの目標を達成することを約束する」と消費財大手ヘンケルの消費財事業部門でサステナビリティの責任者を務めるジリアン・デリス氏は語った。

ロードマップが、プラスチックの循環型経済を実現するための重要な一歩となり、企業、政府、そしてNGOが、プラスチックを経済に残しながらも、環境課題からは排除するための道筋になることが期待されている。

SB.com オリジナル記事へ

written by

SUSTAINABLE BRANDS

Related
この記事に関連するニュース

「高度な資源循環」後押しする制度設計を――キリン、サントリーなど8社が政策提言
2025.10.02
  • ニュース
  • #サーキュラーエコノミー
  • #資源循環
  • #プラスチック
環境対応はコスト?価値? カシオ、花王、三井化学、エコマークの挑戦に見る“最適解”
2025.09.30
  • スポンサー記事
Sponsored by 三井化学株式会社
  • #サーキュラーエコノミー
  • #ブランド戦略
  • #資源循環
  • #プラスチック
森林を守る企業が「海」も守る――サラヤ、対馬で海洋ごみ問題に挑む
2025.09.10
  • ニュース
  • #パートナーシップ
  • #イノベーション
  • #資源循環
  • #プラスチック
プラスチック条約交渉、またも合意ならず 打開策はどこに?
2025.08.18
  • ニュース
  • ワールドニュース
  • #サーキュラーエコノミー
  • #資源循環
  • #プラスチック

News
SB JAPAN 新着記事

【編集局コラム】NoMaps2025登壇で再発見した「学生が日本で学ぶ理由」 
2025.10.17
  • コラム
  • #ウェルビーイング
【ドイツ点描コラム】第5回 来すぎても困る観光客、欧州都市から持続可能な観光政策を考える
2025.10.17
  • コラム
  • #地方創生
  • #まちづくり
  • #ツーリズム
地域産業の魅力と若者が暮らしたくなるまち 高校生123人が東北の未来を議論 
2025.10.16
  • SBコミュニティニュース
  • #地方創生
牛の幸せを追求する“正しい酪農”と経営の両立を模索――岩手「なかほら牧場」
2025.10.16
  • ニュース
  • #エシカル
  • #リジェネレーション
  • #エコシステム

Ranking
アクセスランキング

  • TOP
  • ニュース
  • 米プラスチック協定、2025年までにプラスチックが循環する経済構築へ