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ツアー旅行にも脱炭素の波 Bコープ認定の旅行会社が描くこれからの旅

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オーストラリア・メルボルンに本拠を置く世界最大のBコープ認定ツアー旅行会社「イントレピッド・トラベル(Intrepid Travel)」はコロナ禍でこれからのツアーの在り方を見直し、CO2の排出量を抑えたツアーを増やしている。同社は2022年までに、人気のある上位50件のツアーから90分以内の飛行機移動をなくす計画だ。(翻訳=梅原洋陽)

イントレピッド・トラベルは「素晴らしい旅行には、大きな責任が伴う」 という理念のもと、創業当初から責任あるビジネスを実行し、持続可能なツアー旅行を提供してきた。「責任ある旅行」については、現地の人や文化、経済、環境を尊重し、利益をもたらすことだと定義する。2018年には環境や社会へのパフォーマンス、透明性、説明責任、持続可能性において最高基準を満たした企業に与えられる「B コープ(B Corp)認証」を取得した。

同社は2010年以降、カーボン・ニュートラルを実践している。2020年には、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるという目標に沿って運営する、SBT(科学的根拠に基づく温室効果ガスの排出削減目標)認定を受けた世界で初めてのツアー旅行会社となった。

同社は脱炭素への取り組みとして、昨年度だけでも40以上の低炭素ツアーを打ち出している。自宅から近い場所を巡るアドベンチャーツアー、米国や英国、豪州でのウォーキングツアー、サイクリングツアーなどがその一例だ。さらにいくつかのツアーで、CO2排出量が多いアクティビティをよりサステナブルな内容へと変更しながら、旅の経験をより良いものにしようと取り組んでいる。同社は、旅行業者向けにCO2排出量の削減やオフセットのための戦略をオープンソースとしても公開しており、ポストコロナの旅行業界全体をさらに持続可能なものにするよう復興に取り組んでいる。

ジェームス・ソーントンCEOは「イントレピッド・トラベルではCO2排出量を削減する取り組みに力を入れてきましたが、最近では『脱炭素』がツアーを設計する上でも基準になりつつあります。業界として、オフセットや環境に良い活動を支援し、取り組むということ以上のことをしていくべきです。そして私たちが最も良い影響を生み出せる、旅行にこそ注力すべきです。パンデミックが始まって以来、旅行業界はより責任を持ちながら再建していくべきだと訴えてきました。私たちは今まさに行動を起こしています」と話す。

飛行機から鉄道に

イントレピッド・トラベルでは、事業やツアーを通してCO2排出量を削減する方法を模索している。ツアーの移動方法をより低炭素の移動手段に変えている。例えば、2022年までに人気の上位50位のツアーから90分以下の飛行機の利用をなくす計画だ。例えば、中国でのツアーの国内線の利用を高速鉄道に切り替えるなどしている。他の地域でも適切な陸路や水路、道路などの代替手段がある場合は同じように切り替えていく方針だ。

ウォーキングやサイクリングで巡るツアー

昨年はウォーキングやサイクリングで移動するツアーを増やした。背景には、CO2の排出量を最大限抑えながら、自宅での長い自粛期間後にアクティブな屋外ツアーを望む旅行者からの需要の高まりが背景にある。

パンデミックによって、同社のツアー内容はより近場をまわる内容が増えた。特に主なマーケットである、豪州や英国、米国では、数世紀にわたりその土地を管理してきた原住民コミュニティに敬意を払う形で、25の新たなウォーキング・ツアーと15のサイクリング・ツアーを追加した。例えば、豪州ではララ・ピンタ・トレイルのトレッキング、英国では湖水地方のサイクリング、米国ではヨセミテ国立公園のウォーキングなどがある。

イントレピッド・トラベルは、こうした新規ツアーや既存のツアー内容を変更するだけでなく、サプライチェーンを見直すことでCO2排出量をさらに削減することを目指している。最近新たに追加したプレミアムトリップという、高級ツアーでは、再生可能エネルギーを利用している宿泊施設を選定し、契約を進めている。さらに、ヨルダンやイランでは旅行者の到着の際の移動に電気自動車を導入している。今後はすべてのツアーにこういった取り組みを採用していく計画だ。

ソートンCEOは「ツアー旅行の脱炭素化には数年前から取り組んできましたが、世界規模のパンデミックによって取り組みの重要性は高まりました。2020年は旅行が停止しましたが、この期間というものは私たちの業界が自らの事業運営を再検討し、地球にとって有益な方法で再建していく機会になっています」と話している。