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土地を再生しながら、シードルを造る ルクセンブルクのメーカーがB Corp認証を取得した理由とは

TOM IDLE
RAMBORN CIDER CO.

欧州ルクセンブルクのシードルメーカー「ランボーン」は、伝統的なシードル造りを甦らせ、荒廃した果樹園を再生し、生物多様性を回復させる循環型農業を行う。同社は今年、B Corp(ビーコープ)認証を取得した。

グレタ・トゥーンベリは正しい。もし政府、国民、そして企業がコロナ危機の解決策を探す時と同じくらい地球を救うために力を注いでいれば、われわれの自然環境はこれほどまで悪化していなかっただろう。(翻訳=梅原洋陽)

「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学―政策プラットフォーム」(IPBES)が今年初めに行った発表によると、われわれが拠り所とする生態系の状態は「かつてないほど急速に悪化している」。IPBESによると、われわれは「経済、生活、食料安全保障、健康、人生の質の基盤を世界規模で侵食している」という。

この分析によれば、およそ100万種の動植物が数十年以内に絶滅の危機に晒されているという。これは人類史上、類を見ない数である。1990年以降、陸上に生息する主要な在来種の個体数は約20%減少している。一方で、40%以上の両生類と10%の昆虫類も危機的状況にある。

こうした問題、そしてそれと相関のある気候危機こそが、ヨーロッパ・ルクセンブルクのシードルメーカー「ランボーン」が取り組んでいることだ。生物多様性こそが未来のパンデミックを予防・緩和するための鍵である、と国連やWHOは認識している。それを踏まえると、これは価値ある試みだ。

「何人かの友人とともに英国を旅して、地元のシードルを楽しんでいたときのことです。シードルそのものに関する話や、ルクセンブルクのボルン村という地元のコミュニティでシードルが果たしていた役割について、話し合いました」と、ランボーン(Rambo=リンゴの品種、Born=シードル工場のある村の名前)の共同創業者のカルロ・ヘイン氏は話す。シードル生産の伝統は廃れ、果実が無駄になろうとしていた。そして木々も死にかけていた。「この品種がシードル造りに最適だとわかっていました。好奇心から、とりあえずやってみたのです」。

RAMBORN CIDER CO.

2006年に始動し、ランボーンは成功したブランドへと成長した。賞を受賞したシードルとペリーは米国をはじめ英国、イタリア、アイスランド、フィンランド、スイス、ドイツの店舗で販売されている。

しかしヘイン氏にとって、これは単なる飲料品ブランドの展開にはとどまらない。

牧草が生い茂り、多くの果実が廃棄されていた古くからの果樹園を再生することで、その地域の生物多様性の喪失を回復しようとしているのだ。プランテーション型農業は行わず、灌漑・農薬ゼロの循環型の生産方式を採用している。さらに、この事業を通して毎年、生物多様性に富んだ牧草のある果樹園を増やし続けている。

事実、果樹園の管理こそが同企業のサステナビリティ戦略の心臓部だ。というのも、同企業が管理する果樹園や150以上のサプライヤーの地元農家が所有する木々は、絶滅危惧種を含む1000種類もの生物のすみかとなっている。

「冬には、果樹園の責任者を務めるシャンタルが馬に乗って周り、木に登って余分な枝を伐採し、ヤドリギを取り除き、木を枯れかけた状態から回復させるのです」とヘイン氏は付け加える。

RAMBORN CIDER CO.

過去100年間で、ルクセンブルグでは90%もの木々が減少しており、120万本あったものが今日では12万本になっている。ヘイン氏いわく、これは「われわれの産業によくある、とても致命的なコスト」だという。

しかし、果樹園を再生し続けることで、大気中から3万1000kg以上のCO2を除去してきており、農園で排出する量以上にCO2を除去する「カーボンネガティブ」を実現できているという。

ランボーンは今年初めに「B Corp認証」を取得し、環境保護と、環境への影響を軽減することに正式に焦点を定めた。このようなシードルメーカーは、ヨーロッパでは初めて、世界で3番目だ。

「われわれの事業が環境に及ぼす影響を正しく評価することが可能となりました。これによって、すべてのステークホルダーは、われわれが最も厳格な倫理的ビジネススタンダードを定め、そして責任を果たしていると信頼することができます」と、ヘイン氏は語る。

同社は、さまざまな生物の生息地である約100万㎡の土地を保護・再生し、73万9510kgの食品ロスを抑え、廃棄物として出たリンゴの搾りかすを100%バイオガスに転換しているという。

では、「B Corp認証」や、事業全体を通して持続可能性を追求することは、参入者の多いシードル市場で成功するためにどう重要なのだろうか。

「個人的には、長期的な戦略は、短期的な目標よりも利益が大きい確信しています」と話すヘイン氏は、サステナビリティの分野においてはもはや新参者ではない。家族経営の企業を通じて、1996年にルクセンブルグ初の風力発電所を整備し、2003年には初の大規模ソーラー発電所を設立した。

ランボーンは今後、未発酵飲料を発表する予定だ(発酵には大量のCO2が排出されるため)。ヘイン氏によると、未発酵飲料は、ノンアルコール飲料を生産する上で、発酵させてから脱アルコール処理するよりもサステナブルな手段であると言う。

「勢いは増しています。やがてわれわれのような事業が多数派になる転換点に達するでしょう。すべての企業のDNAには、生き残ろうとする意志があります。事業を良いことのための力として利用することは、われわれが直面する問題を解決するための大きな役割の一つです」