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これからのものづくりに不可欠 消費者の「修理する権利」

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WESLEY PORITZ

自動車や大型家電などの大きな買い物をした際に、メーカーの保証期間が切れるとすぐに製品が壊れてしまうことを不思議に思ったことはないだろうか。あるいは、現在の先進社会では、宇宙に到達できる十分な耐久性をもった素材が製造できるにも関わらず、何年も使える自動車のタイヤを製造できないのはなぜだろうと考えたことはないだろうか。その答えは計画的陳腐化にある。これは、消費者が購買行動をとり続けるためのマーケティングと製造のトリックなのだ。(翻訳=梅原洋陽)

ここでは、計画的陳腐化について詳しく見ていく。問題の戦略を実施しているメーカーを明らかにし、米国の消費者が長期間、持続可能に使用できる権利を促進する現代的キャンペーン「修理権運動」について説明したい。

計画的陳腐化とは

『Investopedia』によると、計画的陳腐化とは「現在のバージョン(の製品)が既知の期間内に古くなったり、役に立たなくなったりすることを意図的に行う戦略のこと」だ。これは、消費者が代替品を求めることを確実にし、需要を高めるための意図的かつ積極的な動きである。言い換えると、計画的陳腐化とは、製品が設定された日または特定の時間内に陳腐化することを意味する。

陳腐化とは、通常の消耗に耐える製品の能力を制限すること、はるかに優れた買い替えモデルを登場させること、特定の時間枠内で適切な機能が停止するように意図的に製品を設計することなどだ。例えば、3万マイルで摩耗する自動車用タイヤ、限られた使用期間で破れてしまう衣類、アップデートされたソフトウェアやアプリでは動作しないコンピュータ、携帯電話、タブレット、電池交換が難しい電子機器などが当てはまる。

電子機器や電化製品の寿命はますます短くなっている。ドイツ環境庁(UBA)は、Öko-Institut e.V. (応用生態学研究所または環境研究所)とボン大学に調査を依頼した。UBAのマリア・クラウツベルガー会長は「多くの電化製品の寿命は短すぎる。これは生態学的に受け入れがたいことだ。これらの製品の製造では貴重な資源を消費し、製造過程で発生する汚染物質や温室効果ガスは環境や気候に負担をかけている」と語る。

明らかに、私たちはいま、製品の寿命と耐久性の最低条件を考える段階を迎えている。おそらくその答えは、電子製品の耐久性の最低限度期間を設定することではないだろうか。まだ正常に動作しているにも関わらず、動作の遅さや交換できないバッテリーが理由であまりにも多くの機器が交換されている。

サステナビリティに逆行する計画的陳腐化

計画的陳腐化はサステナビリティと逆行する。製品が捨てられたり、埋立地に捨てられたりするたびに、長期的には環境にダメージを与えることになる。陳腐化した製品を交換するたびに原材料を調達しなければならない。これにより、森林破壊や自然に傷跡を残す原因にもなる。そして、代替品を製造しなければならず、大気汚染や騒音公害にもつながる可能性がある。最終的に、製品は依然として化石燃料に頼った配送プロセスを経て、消費者の手に渡る。

例えば、自動車のタイヤや携帯電話は計画的陳腐化の完璧な例だ。米環境保護庁によると、2003年の時点で、使用済みタイヤの約80%が何らかの方法でリサイクルされている。これだけ多くのタイヤが再利用されているのは素晴らしいニュースだが、約6000万本のタイヤがいまだに埋め立て地に捨てられているか、あるいは単に原野に捨てられているということでもある。

小型でありながら資源依存度の高い携帯電話もその代表的な例だ。携帯電話の「内蔵」について考えてみたい。このような小さな驚異的なテクノロジーには、コバルト、銅、金、その他の紛争鉱物などの貴金属が必要で、これらはメーカーが継続的に調達しなければならない。また、プラスチック、シリコン、樹脂なども必要で、これらはすべて工場で製造する必要がある。

計画的陳腐化が私たちの環境に与えるダメージは深刻だ。そのため、多くの消費者は、アップルのような知名度の高い企業がこのようなマーケティング戦術を使用していると聞くとショックを受けるだろう。

2017年に計画的陳腐化で訴えられたアップル

フォーブスによると、アップルは数年前、新製品の販売を促すために旧型iPhoneの速度を落としていることを公然と認めた。その後、2018年にはフランスでアップルとサムスンが、同じ理由で調査を受けた。このことは、意識の高い消費者に以下の点で警鐘を鳴らすだろう。

●意図的に技術を使い物にならないようにして売上高を上げることは、非常に非倫理的だ
●バッテリーのような基本的な部品を交換不可能にし、消費者が自分の商品を修理できないようにすることは、新製品の売上高を増やすことを意味する
●収益のために、消費者が追加の資金を使い、不必要な負荷を環境にかけている

修理権運動と計画的陳腐化に反対する団体

一部の組織が計画的陳腐化に対して反撃している点は朗報と言える。

修理する権利、公正な修理という概念は、米国の自動車産業から生まれた。マサチューセッツ州は、2012年に自動車所有者の修理する権利法を最初に可決した州だ。この画期的な州法は、自動車メーカーに対し、誰でも自分の車を修理できるよう情報提供することを要求した。連邦法ではないものの、2018年現在、米国で販売するすべての自動車メーカーは、50州すべてでマサチューセッツ州の法律を遵守することに合意している。

マサチューセッツ州の取り組みに触発されて、2013年に「デジタル修理権連合」が設立され、コンピュータや携帯電話などの家電製品に同じ原則を適用している。

デジタル修理権連合は、2013年に501(c)6貿易協会として法人化された。ウェブサイトによると、目指すのは修理に適した法律、基準、規制のためにロビー活動を行うことで、慈善団体ではなく業界団体であることを選んだ。そのため、「Repair.org」は100%会員からの出資により成り立っている。

現在、同連合はスマートフォンやコンピュータ、ノートパソコン、タブレットなどの家電製品を対象に活動している。しかし、今後は、スマートフォンだけでなくペースメーカーや補聴器などの他のパーソナル・デバイスの修理の可能性や再利用の可能性に取り組んでいこうとしている。

最終的に重要になるのは、消費者が電子機器メーカーに対してより多くのことを要求するかどうかだ。それが保証の長期化を意味するのか、簡単に機器を修理できるようにするのかに関わらず、メーカーは今よりも良い方法を見つけ実行することができるはずだ。スマートフォンや電子機器をリサイクルすることは、製造過程で生じる汚染や地球環境への負荷を減らすための一つの方法だろう。