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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

食を再構築する――これからの社会に必要な、循環型で地域主義に基づいた食料システムとは

MAXINE PERELLA & JENNIFER ELKS

世界の食料システムを修復するには、循環型で地域主義に基づいた食料システムの構築に向けた抜本的な再設計が求められる。サーキュラーエコノミーを推進する英エレン・マッカーサー財団が6月に開催したワークショップで、食の専門家らはそう語った。世界の食料システムは採取産業を基盤にしながらも、毎年生産される食品の約3分の1は廃棄されている。食料を飢餓や栄養不良といった課題解決のために活用し、分配できる資産として捉えることは、現在の食料システムの非効率性や課題解決に取り組む上で役立つ。

都市と農村のバランスを見直す

​建築家であり、『ハングリーシティ』や『サイトピア』の著者でもあるキャロリン・スティール氏は2000年4月、「食の観点から見て、都市の機能はどうあるべきか。本質的な意味で、都市に食料を供給するためには何が必要なのか」と考えたという。そしてある時、光明が差したと語る。彼女はそれ以来、私たちが知っているようで実は知らない方法で、食べ物が私たちの生活にさまざまな影響を与えていることを表現するために「サイトピア(Sitopia)」(食の場)という言葉を使い、同名の著書も出版した。

プラトンとアリストテレスは都市が小さいままである必要性について語った。なぜなら、都市が大きくなればなるほど、遠くから食料やその他の資源を供給してもらわなければならなくなるからだ。

著書『サイトピア』の中で、彼女は「オイコノミア」(簡単に訳すと「家の管理」)という考え方について論じている。エコノミーの語源でもある、オイコノミアの考えに基づくと、都市というのは元々、各家が都市の外にそれぞれ食料を得る農場を持ち、それによって都市は自給自足できるというものだった。しかし、私たちの暮らしは明らかにそこから大きく逸脱している。それどころか、現在のグローバル経済は、アリストテレスが非難した概念「クレマティスティケ(取財術、金儲けを目的にした富の追求)」によって進化していて、都市と田舎(農村)の割合のバランスが崩れているのも不思議ではない、とスティール氏は指摘する。さらに、私たちの食料システムの問題の本質は、世界の人々が安い食べ物に取りつかれていることによって引き起こされていると指摘する。

「食は私たちの生活の中で最も価値のあるものであり、食べ物は命そのものです。それゆえに、安価な食材ありきで、経済や政治を運営してきたということが問題なのです。そもそも安価な食材というのは実質、不可能であり、存在しません。あるとすれば、食料価格を外部に転化することで生み出された錯覚です。私が『サイトピア経済学』と呼んでいるものは、食べ物の価値を再構築し、それを中心に新たな経済を築くというものです」

スティール氏は、都市と農村(地方)のバランスを最大化するために、両者の機能を再設計(デザイン)することが必要だと主張する。人々がどちらにもアクセスできることが非常に重要で、都市経済と農村経済の両方に大きなメリットがあり、両方の経済を再考する大きな可能性を秘めている。私たちは、都市と農村のバランスを再調整する必要があるのだ。

サプライチェーンの再ローカル化

トロント大学名誉教授であり、トロント食品政策評議会の長年のメンバー、ハリエット・フリードマン氏は、この「問題」は植民地時代にまで遡ると言う。英国、フランス、オランダが多くの外国の地に降り立ち、先住民を絶滅させ、複雑な生態系を単純化して単一栽培を始め、砂糖のような外来作物を植え始めたことが、何世紀も経った今なお、遠く離れた食料サプライチェーンに依存する要因になっている。

同時に、当時の都市周辺の農村部は、都市への食料の供給という本質的な役割から遠ざかり始めたため、やや疎外されていた。例えば、トロント周辺の農村部はかつて多種多様な農作物を栽培する豊かな土地だったが、ニンジンやタマネギなどを輸出するために単作の農作物だけを栽培するように調整されてしまったのだ。フリードマン氏によると、同地域では今、都市と農村部(田舎)を結びつける作業が始まっているようだが、まだ解決しなければならない課題が残っている。無秩序に都市が広がる「スプロール現象」が農村部にも影響を及ぼしているからだ。

では新型コロナウイルスが収束した後、都市と農村部を再設計していくにはどうすればいいのか――。スティール氏は、その最善の方法は「私たちを養う特別な場所として位置付けるために、地域(ローカリティ)に立ち返ることだ」と強調する。そして、地域の生産者と消費者の新しいつながりを例として挙げた。ここでいう「つながり」は、横暴な消費者主義ではなく、私たちが新しく描く「グッド・ライフ(持続可能で、生活者が望むことが実現できる暮らし)」を実現する一つの要素だ。

食料を粗末に扱いすぎではないか

私たちのサプライチェーンを再ローカル化(リ・ローカライゼーション)することは、もう一つの地球規模の問題、食品廃棄物に対処するための方法でもある。米国に拠点を置くBaldor Specialty Foodsの企業戦略・文化・サステナビリティ担当部長、トーマス・マッキラン氏は、循環型の食料システムに関する考えと、それをどのようにして大規模に実現できるかについて、セッションの中でこう語った。

「私たちが管理している資産の中で、食品と同じくらい粗末に扱っているものがどれだけあるだろうか。私たちが多額の費用をかけて廃棄している食品そのものを、私たちは保存していく必要があります」

ワークショップが提起した重要な議題の一つは、「社会全体の健康とウェルビーイングを向上させながら、より回復的なシステムをつくっていくには、この先の食料をどう生産していけばいいか」ということです。

英サステナブル・フード・トラス(SFT)の創設者兼CEOのパトリック・ホールデン氏は、生産から加工、流通にいたるまでのサプライチェーン全体の食品システムを再ローカル化させる必要がある、と語った。農場は再生型農業を実践し、土壌が健全な状態になるように回復させる必要があり、食生活においても地元や地域で栽培された食材をもっと食べるべきだ、と話した。

「私たちはこれまでと違った食べ方をしなければならないし、無駄を減らしていく必要があります。季節に応じた食事をすれば、循環型の食料システムの中で、自ら栄養をとり、より健康的になれます」

ホールデン氏はサステナビリティを測る指標の重要性についても強調した。農家が自分たちの畑や工場を測定し、評価するには、世界共通の仕組みが必要になる。こうしたデータの透明性を高めることで、消費者はより多くの情報に基づき、購入の意思決定を行える。

SFTはすでに農家や土地管理者と協力し、農場の持続可能性を測定するための国際的なフレームワークの開発に取り組んでいる。ホールデン氏は、このプロジェクトを「おそらく私たちが行っている最も重要な仕事」と考えているという。

同氏は、こうした測定基準は、農家と消費者の関係といったより幅広い要素を考慮した多次元的なものである必要があると付け加えた。

「土壌の健全性といった指標だけでなく、社会的、人的、文化的な影響も測定できるようにしなければなりません」

シェフが果たす大きな役割

食物が育ったら、循環型経済の中で私たちがどのように食べ、どのような食体験をするのかが、特にこれから数年間に都市への移住者が増えるにつれて、ますます重要になってくるだろう。食材の選択や調理方法が環境や社会に多大なプラスの影響を与えられることを考えると、特にメニューデザインにおいてシェフが果たす役割は非常に重要になってくるだろう。

ニューヨークにあるブルーヒルファームとその名を冠した2軒のレストランのシェフ兼共同オーナーのダン・バーバー氏は幼い頃、「食が持つ癒しの力」に気づき、その力を生かすために料理の世界に足を踏み入れた。

バーバー氏のメニューの決め方は、農場の全体性を尊重し、支えるというもの。作物の多様性に基づいてメニューを作り、一緒に働く農家からその農場で栽培されたものをより多く調達できるようにしている。そのため、小麦だけを農家から買うのではなく、ライ麦や大麦など畑で栽培されているものを幅広く見て、そうした作物を仕入れることも考えていくのだ。

バーバー氏いわく、地元の食材や産地にこだわったメニューは需要がとても高いという。

「先進的なレストランかどうかは、メニューがどれだけ地域に根ざした旬のものであるかによって決まります。今、人々は地域(土地)に感度の高いシェフを求めています」

南アフリカ・ヨハネスブルグに拠点を置くアフリカの家族経営企業「Lotsha Home Foods」のシェフ兼クリエイティブ・ディレクターのモクガディ・イッツェン氏によると、食に対するこうした考え方は、土着の食材という豊かな遺産を守るための一歩となると言う。

イツウェン氏が情熱を注いでいる取り組みの一つが、ナシキビやソルガム、サササゲといった作物をレシピに取り入れて現代風にアレンジすることで、人々がその土地特有の食材を再び食卓で食べるようにすることだ。

伝統食材の見直し

「南アフリカでは多くの人が農村部から都市部に移り住み、ファーストフードを食べるようになったため、土着の食べ物の知識が失われてしまいました。また、都市部に住む多くの人が栄養失調や糖尿病に悩まされています」と彼女は言う。

イッツェン氏が扱う伝統食材は何世代にもわたって主食の一部として食され、大きな健康効果が含まれている。しかし、南アフリカではそうした古くからある、現代文明的でない食材が貧困を象徴するものと見なされる傾向があり、その栄養価が見落とされがちだ。イツウェンさんは、こうした食材を特に若い世代に好まれるようにすることが、彼女の使命の一つだと話す。

「南アフリカの若いシェフたちへのアドバイスは、自分の住んでいる場所でどれがその土地ならではの食材なのかを知ることです。おばあさんに話を聞くことから始めるといいでしょう。おばあさんたちはその土地の食材を使った料理について豊富な知識を持っています」

私たちがどのように食べ物を育て、作り、食べるかがこれほど重要になったことはない。エレン・マッカーサー財団は、2050年までに世界の食料の80%が都市で食べられるようになると推定しているが、こうした都市環境はますます食料の不均衡をもたらし、COVID-19によってその傾向はさらに高まっている。