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既存の技術で海へのプラスチック流出は8割減らせる

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IMAGE: SERGEI TOKMAKOV/PIXABAY

海へのプラスチックの流出は2040年までに3倍になると予想されている。長年にわたり意識が高まってきているとは言え、使い捨てプラスチックはいまだに水路から世界中のコミュニティや海へと流出しつづけている。すでに推定1億5000万トンのプラスチックが海に流れ込んでいる。しかし、良いニュースもある。米民間助成財団ピュー・チャリタブル・トラストとシステミックがこのほど発表した報告書によると、既存の技術と規制強化によって、世界の海に流出するプラスチックの量を2040年までに年間約80%削減できるという。(翻訳=梅原洋陽)

「プラスチックの流出を大幅に削減したければ、すぐにでも解決策はある」とシステミックのプログラムディレクターで、報告書の執筆者の一人でもあるヨニ・シーラン氏は語る。「ただ、解決策を大幅に拡大し、優先順位をつけ、場合によっては追加のより効果的な方法で補完する必要がある」と言う。

報告書『Breaking the Plastic Wave』では、即時的で、強力で、協調的な行動の必要性を強く主張している。これ以上むだにできる時間はないのだ。残念なことに、プラスチック産業によって意図的に生み出された歪みなど、長年の人類の怠慢により、大規模な環境危機が起きている。われわれは以前よりも多くのプラスチックを消費・生産し、リサイクル量を減らし、あまりにも多くのプラスチックを海に流してしまっている。さらに、新型コロナウイルスによる健康上の懸念に起因した使い捨てプラスチックの急増で、危機は悪化している。

中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムといったアジア諸国が、世界のほかの国々を合わせた量よりも多くのプラスチックを海に廃棄していることが伝えられている。しかし、実際にはこれは世界的な問題なのである。2017年末まで、米国、欧州、カナダは、こうしたアジア諸国にプラスチック廃棄物を輸出していた。それらの中には国内でリサイクルできないために海に投棄する可能性が高いものも含まれていた。

システムチェンジが必要

報告書は企業ブランドに向けて書かれたものだ。多様な専門家や科学者が集結して完成した報告書は、企業の意思決定者が活用できる計画を提案することを目的にしている。報告書では、海洋プラスチックを早期に削減できると考えられる8つの対策が強調されている。その中には、プラスチック生産量の抑制や、紙や堆肥化可能な素材などの代替品、リサイクルを目的とした製品や包装の設計といったものが盛り込まれている。

「ビジネスリーダーたちに最も伝えたかったことは、われわれはこの課題に対処するために、かなり野心的にならなければならないということだ」とシーラン氏は言う。

企業ブランドには責任と果たすべき重要な役割がある。それは、そうした企業の規模の大きさと、それらの多くが多国籍企業で、まさに海洋プラスチックの供給国に大きな負荷を与えているからだ。環境保護団体「Break Free From Plastic連合」の調査によると、コカ・コーラ、ネスレ、マーズやそのほかの主要消費財ブランドの包装材が世界中で発見されているといわれる。

「企業は、自らが生み出したプラスチック汚染危機に対処するために、より多くのことに早急に取り組む必要がある。使い捨てプラスチックの包装に依存し続ければ、より多くの使い捨てプラスチックが環境に放出されてしまう」と「Break Free From Plastic連合」のグローバル・コーディネーター、フォン・ヘルナンデス氏は語った。

希望もある。というのも、こうした企業ブランドの多くは「Plastic Pollution Coalition(プラスチック汚染の解決に取り組む連合)」や、「End Plastic Waste(プラスチック廃棄物を終わらせるための同盟)」、エレン・マッカーサー財団による「新プラスチック経済グローバル・コミットメント」といった、プラスチックを削減しようとする世界規模の公約に参加しているのだ。しかし、これらはすべて自主的なものであり、十分な成果を上げているとはいえない現状がある。

「現在の取り組みは最初の一歩としては素晴らしいものですが、全く不十分」とシーラン氏は指摘する。「ほとんどはリサイクル可能性とリサイクルに焦点を当てた取り組み。再利用や詰め替えをするといった新たな配送モデルへの移行に向けた対策は十分ではない。今すぐに動き出し、解決策を実施する企業ブランドが利益を得ることになるだろう」と、シーラン氏は主張する。

「循環型経済を取り入れている先進的企業は、今後の体制の中で大きな優位性を持ち、適応できない企業は市場から締め出される可能性がある」(シーラン氏)

「私たちは、2040年までの需要を満たすプラスチックの生産量と、転換技術を現時点でほぼすべて持っています。追加投資は足止めされるリスクがあり、『プラスチックバブル』を生み出す可能性もある」

動き出しが遅いと問題がより大きくなり、海の浄化がより困難になる一方だ。もし5年も待てば、さらに8000万トンのプラスチックが海に流出することになる。だからこそ今回の報告書の執筆者たちは、いかにして今すぐ行動を起こすかに焦点を当てているのである。

私たちは問題を把握しており、その解決方法もどんどん判明してきている。問題の一部とされている世界的消費財ブランドを含む、意思決定者たちがプラスチックの海への流出を防ぐために必要な対策を今すぐ取り始める時が来た。