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ドバイで姉妹が販売するリサイクル自転車 日本で廃棄されたフレームを活用

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MAXINE PERELLA
Image: CHARICYCLES

ドバイでパレスチナ人の姉妹が2014年に創業した「チャリサイクルズ(Charicycles)」は、中古の自転車をアップサイクルし、フレームからサドル、グリップ、タイヤまでをさまざまな色やスタイルにカスタマイズし販売している。さらに5台売れるごとに1台の自転車を難民キャンプの子どもたちに寄贈する。フレームは日本で廃棄されたもので、姉妹は「日本は大量のフレームを廃棄している」と語っている。(翻訳=梅原洋陽)

ラニア・カナーンさんとザイナ・カナーンさんの姉妹は創業以来、ファーマーズマーケットで個人を相手に自転車を売り始め、いまではホテルにアップサイクル自転車を売るまでにビジネスを成長させている。

サイクリングをする人が多くはないドバイでは、自転車で都市間を通勤するためのインフラが整備されていない。だからこそ、チャリサイクルズの人気の高まりは驚くべきものだ。

アラブ首長国連邦(UAE)では住民が消費するものの多くは輸入品で、国内生産品はほとんどないに等しい。そのため、古い自転車の部品を入手することがとりわけ難しいという。

「自転車産業が小規模なため、部品のサプライヤーを見つけることが難しいです。私たちは改革を行い、利用可能な資源を活用することを学んできました」

部品を調達する過程で、チャリサイクルズは既存企業の職人を支援し、スキルの幅を広げる手助けをし、同時に企業も新たな収入を得ることができている。

左からザイナさん、ラニアさん Image credit: Emirates Woman

アップサイクルを付加価値に変える

チャリサイクルズが再利用する自転車のほとんどは日本製の中古の自転車フレームだ。こうした自転車はまず分解され、磨いた後に顧客の希望に沿ってスプレーで着色される。

「日本は大量のフレームを廃棄しています。UAEは輸入・再輸出のハブとなっているため、多くのものがここにたどり着きます。鉄をつくるためにスクラップされるか、最終的に他のゴミ処理場に送られるまで再利用されることになります」

いま販売しているチャリサイクルのうち約90%がアップサイクルされたものだ。今のところタイヤ、チューブ、ブレーキレバー、ケーブルは新品だが、今後はリサイクル品を調達する方向で方法を模索していくという。

チャリサイクルズの自転車の価格は、同じような品質の新品の自転車と変わらない。

同社の理念の一つに、「リサイクルされた商品はなんとなく劣っているという感覚に挑戦する」というものがある。とくに奉仕の精神で行われる行動がその中に存在する場合はなおさらだと言う。

「私たちの考えでは、アップサイクルされたものだからといって安くするということはありません。購入者だけでなく、環境や恵まれないコミュニティを支援する、美しい製品にお金を払うということです」

チャリサイクルズは意識ある消費(倫理的な消費)を促進しており、ギブバック・プログラムを通して、自転車が5台売れるごとに自転車1台を中東の難民キャンプの子どもたちに寄贈している。この寄贈は、パートナー組織を通して行われており、その際には、どの子どもに自転車を贈るかを決める審査や面接をしている。例えば、どれだけ生徒が授業に参加したかなどが考慮される。

「難民キャンプの多くの子どもたちは未来が見えないので、学校に行くモチベーションも上がらないのです」とラニアさんは説明する。これまでに150台以上の自転車を寄贈してきた。

ギブバック・プログラムの利点は2つある。1つは難民キャンプの子どもたちが、普通の子ども時代を経験できること。2つ目は、チャリサイクル(自転車)の購入者が自分自身や身近な環境だけではなく世界にインパクトを与えられることだ。

ラニアさんは「より多くの人が私たちから商品を買えば買うほど、より良い世界を一緒に作ることができる」と指摘する。現在までに、このビジネスによって推定5万キロのCO2排出量を抑え、さらにこの成果を拡大しようと計画中とのことだ。

アップサイクルカフェを開催

Image: CHARICYCLES

チャリサイクルズが新たに取り組んでいるのはアップサイクルカフェ「ケイヴ」だ。クリエイティブなワークショップを開催するアップサイクルカフェで、使用済みのタバコの箱から作られたギターといったアップサイクル商品を販売している。

長期的には、チャリサイクルズのコンセプトを世界中に輸出し、より多くの人が新品よりもアップサイクルの自転車を買うよう促進することを目指していく。

しかし、彼女たちの前にはまだ壁が立ちふさがっている。特に大きい壁は、世界でもエネルギー需要の高さと水不足で有名な場所を拠点にしていることである。

UAEは、とくにドバイで環境に配慮した動きが増えてきているが、社会的企業への資金の提供はまだ少ないという。「私たちはこれまで自力でやってきました。経営を無駄なく、多くアウトソーシングをしながら進んできました」と語る。

しかし、カナーン姉妹には社会に貢献するという考え方が大きく残っている。姉妹にとっては、これは社会の車輪の方向を変え、人々の生活に本当の変化をもたらす機会なのだ。

「チャリサイクルから降りた人たちの笑顔が、難民の子どもたちの笑顔を生み出しているところを見ると、たとえ目の前に壁があったとしても、自分たちのやっていることを続けていくことができます」