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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

SB Leadership Summit 1日目: ポストコロナの社会とクライメイト・ポジティブな未来をどう築くか

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Sustainable Brands

企業ブランドがリーダーシップを発揮し、より良い世界をつくるためには今なにをすべきか。米サステナブル・ブランドは6月1-2日、「SB2020リーダーシップ・サミット(SB 2020 Leadership Summit)」をオンラインで開催した。カリフォルニア州ロング・ビーチで開催予定だったサステナブル・ブランド2020本会議が新型コロナウイルス感染症の拡大により11月末に延期となったことから、急遽生まれた企画だ。今年のSBのグローバル・テーマは環境や社会、経済の「リジェネレーション(再生)」。図らずも、世界が今、議論すべきテーマと一致した。

私たちの社会はどこが間違っていたのか、どう立て直すべきか

私たちの経済のあり方はこのままでいいのか――。オープニングのテーマは「自然」と「お金」だ。私たちは自然界に耳を傾け、そこから学ぶ代わりに、お金に耳を傾けすぎているのではないだろうか。パネリストは時に互いの意見に異議を唱えたりしながら、率直に議論し合った。

慈善活動家でありソウル・オブ・マネー創設者のリン・ツイスト氏は、お金はもともと、誰もが必要なものを手に入れることができるよう、資源の共有を促進するために考案されたものだと語った。ツイスト氏は、「宇宙船地球号」を唱えた、米マサチューセッツ州出身の思想家で建築家バックミンスター・フラー氏が残した言葉を引いて、私たちは「あなたか私」というパラダイムから「あなたと私」というパラダイムに移行する必要があるとした。「私たちは蓄積するものではなく、分配するもので知られるよう」に働く必要があると語った。

バイオミミクリ3.8とバイオミミクリ研究所の共同創設者ジャニーン・ベニュス氏は、自然界にはお金に代わるものは存在せず、むしろ相互に与え合うやり取りによって生態系は結びついていると説明した。組織は、生物から学ぶことができる。寛容な者は生き残ることができるということだ。ベニュス氏は、生物が補完・依存して成り立っているように、私たちがデザインして作るものすべてにそうした機能を持たせる必要があるとし、それによって、それぞれのデザインがいくつかの有益な機能を果たしていくのだと語った。


ファシリテーターを務めたのは、著書『ビッグ・ピボット ― なぜ巨大グローバル企業が〈大転換〉するのか』で知られ、ユニリーバなどのサステナビリティ・アドバイザリー・ボードのメンバーを務めたアンドリュー・ウィンストン氏。こう締めくくった。

「私たちはすべてのものに対し少ししか求めていない。しかし、私たちが繋がり合い、共感と充足感をもってあらゆることを受け入れていくことこそが解決策になる。SBのコミュニティは連携し、挑戦を大事にし、ツイスト氏が強調したように『社会変革のためにわれわれが持つ力を生かしていく』そういう活気に満ちていると確信している」

不確実性をチャンスに変えるには

ニューヨーク大学グローバルエコノミープログラムのクリスチャン・ブッシュ教授は、「セレンディピティ」という手法をイノベーションやインパクトを生み出すためのツールとして活用する方法を紹介した。セレンディピティとは、予想外の瞬間から予期せぬ幸運がもたらされること。チャレンジする中で積極的な決断を下していくことが、ポジティブな結果につながっていくという。ノーベル賞を受賞した化学者らも、セレンディピティが人類史に足跡を残す発見につながったと口にしている。

ブッシュ教授は若い頃に交通事故にあったことで、セレンディピティや人生とは何かを考えるきっかけになったと説明した。社会起業家でもある教授は、そのキャリアの中で、最もインスピレーションを与えてくれる人たちが何らかの形でセレンディピティを生かしていることに気付いたという。

同教授は、狭心症の治療のために開発された薬が男性に特別な効果があると気付いた医学者によりバイアグラが発明されたことを例に挙げた。世界的なパンデミックによって、醸造所は消毒液を製造し、ファッションデザインナーがフェイスマスクを作るなど、予想外の変化に適応した企業が興味深い事例を生み出している。日々の生活の中でセレンディピティを養いたいと考えている人は、以下のことを実践してみてほしい。

●質問の仕方を変えてみる。例えば、「なぜ?」という問いを5回繰り返す。
●間違いを別の角度から見る。その状況から他にどんなことが生まれるかに目を向ける。
●北極星のように揺るぎない指針・目標を1つだけではなく2つ持つ。ポール・ポルマン氏がユニリーバの持続的成長戦略を成功させたように。

持続可能な社会の実現のために、ブランドは世界をどうリードするか

人々は新しい時代の中で、自らをとりまく世界を理解しようと答えを模索していると実感する。「真のリーダーシップがこれほど重要になったことはかつてない」と、セッションに登場した英ガーディアン紙の米国・オーストラリアでCEOを務めるエブリン・ウェブスター氏は語った。「世界をどうリードするか」がテーマのセッションでは、異なる組織を率いる4人のCEOが何を考えているか話し合った。

新型コロナウイルスによって生活や仕事のルールが再定義され続ける中、セント・ジュード小児研究病院(米テネシー州)の資金調達・啓発団体ALSACの社長兼CEOリチャード・シャディアック氏は、「勇気」がビジネスにおいて重要な差別化要因になるとし、「困難な時代のリーダーには必要不可欠なもの」だと主張した。

シャディアック氏は、すべてのCEOに対し、インクルージョンや正義、人間性といった原則をビジネスの中心に据えるよう呼びかけた。同氏は、セント・ジュード小児研究病院が無償で治療を提供してきたことで、小児がんの生存率が1962年の20%から今日の80%以上にまで上がったと説明した。そして「パンデミックの際には、すべての人に医療のアクセスを提供するこのモデルは非常に人道的なものと思えるのではないだろうか」と語った。

「人間の思いやりの力に匹敵するものは存在しない」と主張するシャディアック氏は、企業が成長しながら、世界で最も喫緊の問題のいくつかを解決したいのであれば、「コラボレーションはもはやオプションではない」と力を込めた。

「自宅隔離がもたらした真のメリットの一つは、今まで以上にお互いを必要としていることが証明されたことだ。孤立の中で、失敗や過ちは悪化していく。COVID-19に対する世界の反応が分断されているのを見ていると、とてももどかしい気持ちだ」

ナタリー・グリーン氏は、消費者がより良い選択をするためには、新しいタイプのエンゲージメントが必要だと語った。グリーン氏は、買い物した商品の二酸化炭素の排出量を追跡でき、さらに排出量が上限に達するとカードが使えなくなる気候変動への影響を抑止できるクレジットカード「DO Black」とアプリ「DO」を立ち上げたDoconomyのCEOだ。

グリーン氏は、それらを日常の中で人々が気候変動に取り組むことを後押しする新たな金融サービスツールと位置付ける。昨年の全世界での使用額は24兆米ドルに達したと明かした。「90%の人は、二酸化炭素の排出量の大部分が消費から発生していることを知らない」と指摘した。

グリーン氏は今、道徳的な銀行業務を提供する金融ソリューションの拡大に向けた業務の一環として、世界の消費量を測定・追跡するためのグローバル・スタンダードの確立を支援することを目指していると語った。

スウェーデンの人気バーガーチェーン「マックス・バーガーズ」のリチャード・バーグフォルスCEOは、原動力はパーパス(存在意義)だと語った。同社では毎年、利益の6―10%を慈善事業や支援事業に使っている。しかしバーグフォルス氏は、ファーストフードの意味を再定義することで、事業を通して、さらに大きく社会に利益をもたらすことを目指している。

マックス・バーガーズでは、世界初の気候変動に配慮した「クライメイトポジティブ・バーガー」を提供している。二酸化炭素の排出量を少なくとも110パーセント削減し、牛肉製品を減らして植物ベースのバーガーを提供し、再生型農業を支援するサプライヤーと協力することで、その実現に向けた計画をすでに立てている。

バーグフォルスCEOは、「われわれが提供するハンバーガーの真ん中には、気候変動への影響を最小限に抑えることができるものがたくさん詰まっている」と語った。2013年以降、同社の事業活動がもたらす気候変動への影響は売上高1ドル当たり20%削減しているという。次に掲げる目標は、2022年までに同社のランチメニューのすべてに牛肉ではない食材を使用することだ。