進化するフードテック:動物性たんぱく質を使わないミルクやペットフードを開発
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生物資源とバイオテクノロジーを活用して社会的課題を解決し、さらに経済的成長も目指す「バイオエコノミー(生物経済)」は、持続可能な社会を実現する手段の一つとして注目を集めている。中でもフードテックの進化は凄まじく、気候危機や食糧危機の解決策として期待されている。しかし培養肉などに対しては賛否両論あるのも事実だ。今回は、イスラエルと米コロラド州に拠点を置き、動物性たんぱく質を一切使わない乳製品とペット用のおやつを開発するスタートアップ2社を紹介する。食の進化を知ることは、未来を考えるきっかけになるだろう。(翻訳=梅原洋陽)
イスラエルのスタートアップ、植物由来ではない牛乳の代替品を開発
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乳糖不耐症の発生率の増加、環境・動物福祉の観点、そして自身の健康を考えて従来の乳製品に代わる植物由来の代替品を好む消費者の増加といった要因によって、近年、乳製品の代替品ブームに拍車がかかっている。2019年には、植物由来の乳製品市場は約140億ドルにまで達した。
このブームを受けて、世界的な大企業も参入するようになっている。例えば、北米ダノンは最近、SilkやSo Deliciousなどの植物由来乳製品を製造するホワイトウェーブ・フーズを統合した。一方、ネスレはオーストラリアで麦芽飲料ミロの植物由来バージョンを、米国では乳製品を使わずオート麦を主原料としたネスクイック・グッドネスを発売した。
そして今、イスラエルのスタートアップが代替乳製品業界に名乗りをあげようとしている。しかし、この企業はわれわれの知る牛乳を再定義するかのごとく、植物の代わりに微生物を用いているのだ。
起業家のアヴィヴ・ウォルフ氏とオリ・コハヴィ氏が2019年に共同設立したリミルク(Remilk)は主成分こそ特許保護のために非公開だが、2人の共同設立者は最近、ウェブメディア『フード・ナビゲーター』で、「製造過程はチーズを作る工程に着想を得た」と明かした。そして、このリミルクで生産される乳製品は、従来のものよりも桁違いにサステナブルだという。ウォルフ氏とコハヴィ氏は、ほとんどの代用乳製品はざっと97%が水でできていると指摘。しかし、同社の製品は土地や水、原料、時間、廃棄物の量をはるかに少なく抑えられている。
さらに植物由来の乳製品代替品を販売する他社とは異なり、リミルクには多くの人にとって問題となる乳糖が含まれておらず、本物の牛乳の味、舌触り、栄養価、そして機能性に敵う商品だと言う。イスラエルのビジネス誌『Ynet』によると、リミルクが最初に作った商品はモッツァレラチーズだという。このチーズは、まさに牛乳からできたもののような味、舌触り、そして伸縮性があるとのことだ。
「世界はさまざまな理由からサステナブルな食べ物を必要としていますが、人々に持続可能な食品を食べてもらうためには、本当に美味しい物でないとなりません。それがリミルクで行なっていることなのです」とウォルフ氏は『フード・ナビゲーター』に話した。
ボンド・ペットフーズ、肉不使用のペットフードを開発
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一方、米コロラド州ボルダーに拠点を置くボンド・ペットフーズ(Bond Pet Foods)は、動物を使わない、高たんぱく質のペットフードを作ろうとバイオテクノロジーに着目している。ボンドは酵母の持つ多様な力を活用している。
同社はこのほど、最初の消費者向け製品として、消化性が高く、犬の食事に栄養を補完する「たんぱく質入り犬用おやつバー」を発表した。
おやつバーの主成分は乾燥酵母たんぱく質で、通常のおやつバーのたんぱく質含有量が12―20%であるのに対し、少なくとも29%以上含まれている。これにより、持続的なエネルギーと全体的な健康をサポートするというものだ。ボンドは、従来の動植物由来のたんぱく質代替品よりサステナブルで、さらに生産に必要な土地や水、エネルギーを節約できるという理由から、酵母たんぱく質を選んだ。おやつバーはアレルギーを持つペットオーナーや子犬を配慮して、ピーナッツを使用していない。そして、外箱は100%リサイクル可能だ。
ペット食品のサプライ・チェーンから動物性たんぱく質を除外しようとするボンドの動きは、「もし米国の犬や猫が自分の国を持っていたとしたら、その国の動物性たんぱく質の消費量は世界で5番目に高いことになる」という試算に基づいている。
同社は、ペットフードの材料の調達方法と製造方法を見直すことで、毎年180億頭の動物の屠殺を抑えることができ、従来の農業や畜産業のネガティブな影響を軽減できると主張している。
「タンパク質入り犬用おやつバー」は、動物性たんぱく質を使わないペットフードを作ろうとする計画の第一歩である。共同設立者でCEOのペルニラ・オーディベール氏もボルダーのデイリー・センチネル紙にこのように話した。
「微生物発酵と酵母の生化学を用いることで、私たちは動物を使用せずに、鶏肉やターキー、魚のような培養動物性タンパク質を収穫しています。そして、われわれの完璧なレシピの基礎部分にこの原料を用いています。独自の方法で、環境や動物福祉、安全性を脅かすことなく、肉類と同じ栄養価を持つタンパク質を生み出しています」
こういった肉タンパク質を使った新しいペット製品が今後3年以内に市販されることを期待しよう。