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新型コロナと気候変動に共通する「情報開示」の重要性 変化に対応する組織とは

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DEXTER GALVIN (CDP)

多くの人にとって、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、急速かつ急激な変化を受けやすい世界の残酷な現実を浮き彫りにした。企業や組織は、衝撃や混乱に適応し、生き抜く技能を備えておく必要がある。これは新型コロナウイルスと気候変動に共通する点だ。どちらの危機を生き抜くにも、レジリエンスと信頼できる透明性のある情報の開示が重要となる。(翻訳=梅原洋陽)

公衆衛生の危機でありながら、経済的、社会的な影響は日を追うごとに深刻になっている。しかし新型コロナウイルスや気候変動は、どちらも経済学者が呼ぶところの「外的ショック」(システムを再構築する要因)だ。そのため、ウイルスに正しく対処している、つまり多くの組織が科学的根拠に基づき動いている様子を見ると勇気付けられる。この2つの危機は大きく異なるものだが、明白な類似点がある。そして、そのどちらの危機からも生き残るためのカギは、未来に起こりうるショックへのレジリエンスを高めるためにデータを重視した戦略を用いることだ。

信頼できるデータを透明性のある形で共有することが、世界規模の変化に対応するために必要不可欠である。新型コロナウイルス感染症の拡大がこれまでに示しているように、成功するリスクマネージメントは正確な測定と報告によって成り立っている。

環境に関していえば、世界規模でリスクマネージメントを達成するためには、リスク、機会、気候変動に対する戦略、そして森林破壊・利用可能水量の減少といったその他の環境的なダメージに関する情報を包括的に公開する必要がある。

現在の緊急事態の状況では、コーポレート・サステイナビリティが後れをとりうることは容易に推測できる。しかし実際は、反対のことが起きていることが証明されている。米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOとブラックロックは、1月、各社のCEOに気候変動への取り組みを行うよう圧力をかけることを約束した。そして、データは少ないものの、企業がコストをとりわけ意識する状況下でも、2020年は再生可能エネルギーが成長する年となりそうだ。

ディスクロージャー(情報開示)は、この不確かな時代の中で、適応や究極的には生き残りにつながるロードマップとなる。しかし情報開示の価値は、単に生き延びることにとどまらない。事実、公開を行うことで、資金を節約することに始まり、評判の向上にいたるまで、企業に具体的な利益をもたらすのである。

こうした効果については、カナダのESGコンサルタント企業ミラーニによる研究報告で明かされている。報告によると、CDP(環境情報の開示に取り組む国際NGO)を通じて情報公開をした企業の方が平均的な企業よりも資本調達能力が19パーセンタイル高い。

投資家や企業は、投資判断やサプライチェーン全体の調達における環境的なデータを見ている。そして2020年現在、106兆米ドルの資産を持つ515の投資家と4兆米ドル以上の購買力を有する147の買い手がCDPを通して情報開示を求めている。さらに、2019年にCDPを通して環境データを公開し、調査に応じた企業のうち3分の1以上が、こうした公開のプロセスがコスト削減につながったと述べている。前年の5分の1から上昇した。情報開示を行う企業は具体的な財務上のメリットを目の当たりにしている。

しかし、それはお金に関することに限らない。多くの企業にとって、情報公開を行う決定は、リスクマネージメントなど、それと同様に中長期的に純益に影響を与える重要な要素と密接に関連している。現在の危機を考慮すると、これをビジネスがより深く寄りかかることのできる柱とすべきだ。

CDPの調査によると、世界の大企業は、今後5年以内に約1兆米ドル規模の気候変動リスクがビジネスに影響を及ぼすと見ている。現在の世界規模の健康危機において、サプライチェーンとビジネスモデルのレジリエンス、つまりショックや混乱の中で適応し、生き残る力はかつてなく重要になっている。とりわけ気候危機は「脅威乗数」であり、未来の経済的ショックを引き起こす可能性が高いからだ。情報公開を通して、環境的なリスクを測定し、管理することで企業はレジリエンスを育み、未来に向けた計画を立てることができる。

未来を明るくすることはできるのだ。もし企業が進んで低炭素の代替手段へ移行するという強い決定を進んで行えば、チャンスはたくさん生まれるだろう。前述した企業のグループは、気候危機によってもたらされるチャンスはリスクよりも大きいと伝えている。合計で2.1兆米ドル以上になると報告しており、それらのほとんどが新たな低炭素商品やサービスの需要につながる。

これまでのところ、新型コロナウィルス・パンデミックによるビジネスへの影響、そしてビジネス側の反応はさまざまだが、前向きな情報公開を計画の中に組み入れることができる企業が、変化する経済環境の中で成功していけるだろう。

透明性のある情報開示をビジネスモデルの柱の一つとする企業は、また別の観点からも利益を得ることができる。消費者や他の企業、投資家、または監督機関などからの評価を向上させ、それを維持することができる。環境情報の開示は、その透明さを通して信頼を築き上げ、企業が重要なステイクホルダーの中で環境を意識したブランドとしての地位を確立することに繋がる。同様に、政府や監督機関が気候危機や森林破壊、利用可能な水量の減少などの環境的課題に対策を打つ流れの中で、より環境に配慮した法令配備が世界中で見られるだろう。

正確に影響を測り、その影響を和らげるように的確に行動することで時代を先取りできる企業が、自社への混乱を最小限にとどめられるだろう。

多くの企業にとって、この予測不能な時代をくぐり抜けることは極めて困難なことである。パンデミックと経済崩壊の下で、サプライチェーンやビジネスモデルがゆがみ(場合によっては壊れ)、私たちは世界規模での未だかつてない混乱を目にしている。しかし、透明性とレジリエンスに重きを置けば、企業は未来に起こりうる混乱から自分たちを守り、人々や地球を最優先する持続可能な未来を築く手助けができるのだ。