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ファッション業界が進めるカーボン・フットプリント対策とは 

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米サステナブル・ブランド編集局
Image: BURBERRY

ファッション業界でも二酸化炭素の排出量を削減する動きが加速している。シャネルは今月10日、2025年までに再生可能エネルギーに完全に切り替えると発表した。バーバリーは先月のロンドン・ファッション・ウィークで、2020年秋冬コレクションの発表をカーボンニュートラルで実施。同じく2月、世界のファッション・ウィークに参加するデザイナーやバイヤーが移動に伴い排出する二酸化炭素の年間総量を測定したレポートが発表された。その総量は24万1000トン。ニューヨークのタイムズ・スクエアを58年間、パリのエッフェル塔を3060年間、ライトアップできる量に匹敵するという。(翻訳=梅原洋陽)

バーバリーが取り組む「カーボン・インセット」

Image: BURBERRY

バーバリーは、事業で発生する環境への影響を最小限にとどめるための新たな対策としてカーボン・インセットに取り組んでいる。

カーボン・インセットとは、自社のバリューチェーンでステークホルダーと連携するなどして、二酸化炭素の排出量を削減することだ。自社のバリューチェーンと関係ない企業と連携するカーボン・オフセットとは異なり、カーボン・インセットの場合は、アグロフォレストリーや植林事業を自社のサプライチェーンで行う。炭素を発生源で押さえ込み、空気中に放出するのを防ぐだけでなく、コミュニティと協働し、気候変動による影響への復元力を強め、生物多様性を促進し、エコシステムを回復させ、現地の生産者の生活を支援する。

世界中のサプライチェーンで、「カーボン・インセット」プロジェクト実施を後押しするために、バーバリーは「リジェネレーション(環境再生型)・ファンド」を立ち上げた。最初はオーストラリアの羊毛生産者を支援するようだ。

バーバリーはPUR Projet(ピュア・プロジェクト)と連携する。世界40カ国150社と連携する同組織は、仏のフェアトレード企業の草分け「アルテルエコ」の創業者トリスタン・ルコント氏が設立した。企業と協働して、企業が依存しているエコシステムを再生することを目指している。羊毛生産者と共に、環境再生型農業を設計・実施することで、森林火災の影響で打撃を受けているオーストラリアの土壌を修復しようとしている。

​バーバリーは2月、ロンドン・ファッション・ウィークでの2020年秋冬コレクションの発表をカーボンニュートラルで行った。2019年9月に行われた、2020年春夏コレクションに続き2度目となる。サステナビリティ認証を受けた会場を使用し、電気自動車の利用を優先し、空輸は行わなかった。そのほかに排出される二酸化炭素に関しては、オーストラリアの乾季の森林火災のリスクを減少させ、生態系に与える影響を減らす「サバンナ・ファイアー・マネジメント・プロジェクト」を通して相殺する。さらに、観客へのプレゼントを控え、代わりにオーストラリアの森林火災で影響を受けた生態系を再建するために、木を植えることにした。

バーバリーが掲げる温室効果ガスの削減目標は、SBT(科学と整合する温室効果ガス削減目標)イニシアティブから、パリ協定が目指す「2℃目標」基準を満たしていると認定されている。今回のこうした動きは、そうした取り組みをさらに前進させるもの。英国を代表するブランドは、英、米、欧州、中東、アフリカの小売店ですでにカーボンニュートラルを達成しており、2022年までに全世界でカーボンニュートラルを達成することを目指している。

ファッション・ウィーク参加者のトラベル・フットプリントを測定

Image credit: CPP-Luxury.com

ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリを含む国際的なファッション・ウィークのトラベル・カーボン・フットプリントが初めて計測された。

ファッション・テクノロジー企業「ORDRE」と英カーボン・トラストが共同で発表したレポート『Zero to Market』は、1年間で、国際的ファッション・ウィークに参加した5096人のデザイナーと2697社の小売業者のバイヤーが排出した二酸化炭素の排出量を計測した。

すべてを合わせると、この業界で24万1000トンもの二酸化炭素が、卸売の購買活動によって排出されていることになる。これは、大西洋とカリブ海の間にある2つの島からなるセントクリストファー・ネイビスのような小さな国の排出量に相当する。自動車では5万1000台の排出量に匹敵し、ニューヨークのタイムズ・スクエアを58年間、パリのエッフェル塔を3060年間明るくするのと同レベルだ。バイヤー一人当たりのカーボンフットプリントは12.1トンで、これは一般の人の平均より2倍高い。

「数十年間にわたり、この業界ではファッション・ウィークに参加するために飛行機などで移動することが一般的でした。今回初めて、この一連の移動によって排出される二酸化炭素の影響が明らかになりました。私たちの業界はイノベーションによって繁栄してきた業界です。今こそ、ビジネスとしてのファッションを違う視点から考えるべきです」とORDRE創設者・CEOのサイモン・P・ロック氏は語った。ORDREは、移動を減らす方法として、オンラインでコレクションを発表することを提案している。

ORDREは、この報告書が業界全体を巻き込んだインターナショナル・ファッションウォークのあり方を考えるきっかけとなり、よりサステナブルなビジネス形態を模索することを望んでいる。例えば、ファッション・ウィークのスケジュールをまとめたり、廃止したり、もしくは移動する必要のないバーチャルなショールームもありだろう。

この業界のサステナビリティをけん引する組織「グローバル・ファッション・アジェンダ(Global Fashion Agenda)」はレポートを、ファッション業界の影響を理解する助けとなり、必要とされていた情報だと歓迎した。

「ファッション業界の環境フットプリントに関する議論はサプライチェーンに集中しがちです。しかし、業界全体のシステムを考慮する必要があります。止めどなく生み出される新作や、新たな製品の需要を高めるトレンドづくり、世界的なファッション・ウィーク、業界のあり方、展示会やランウェイショーそしてそれらに関連する移動などを含めた業界のあり方のことです」とグローバル・ファッション・アジェンダのCEOのエバ・クルース氏は語った。