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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

SB Oceans:ビジネスは海を救えるか(中編)

TOM IDLE

サステナブル・ブランド国際会議 オーシャンズ(SB Oceans)」が14-16日、ポルトガル第2の都市ポルトで開催された。今回は、「持続可能なシーフードと小売業」をテーマにしたセッションのほか、プラスチック廃棄物の集積地である途上国でプラスチック廃棄物を電子通貨に換金する事業を行う「プラスチックバンク」の取り組みなどを紹介する。

前編はこちら

小売業は消費者が海洋保全を行うための入口

小売業者は、持続可能な海産物の入手と消費を増加させるための重要な役割を担っている。イケアフードのサステナビリティ開発者、クリストフ・マシーセン氏は語る。

「イケアが2015年、サステナビリティ戦略の一環で、ASC認証のサーモンのみを販売すると宣言したことで、ASC認証の認知率は大幅に高まりました。いまや流通するサーモンの3割はASC認証を取得しています」

家具を販売するイケアがどのようにして海産物にこのような影響をもたらしたのだろうか。同氏は「自らのブランドに投資を続け、サステナビリティに熱心に取り組み続け、ブランドの根幹にサステナビリティを持ってくれば、大きなインパクトをもたらすことができます」と語る。

デンマークの大手水産飼料企業BioMarでグローバルブランディング・コミュニケーション責任者を務めるキャサリン・ブライヤー氏はこう言う。

「消費者は、サステナブルなものを手に入れたいと考えています。でも、なにがサステナブルかをどう決めるのでしょうか。詳細な情報や科学を利用することで、小売業者はどんな原料がサステナブルかを決められます。イケアのようなブランドはサステナビリティをブランドのアイデンティティの根幹に置くことができるのです」

以前は、小売業者は持続可能なシーフードの何がいいのかを消費者に教えなければならかった。しかし、その状況は変化している。スーパー「リドル・ポルトガル」で広報部長を務めるバネッサ・ロメウ氏はこう言う。

「消費の新しい波に『サステナビリティと海』というトピックは確実に入っています。そして、消費者はそうした商品を探すようになっていきています」

BioMarは、海産物に貼られたQRコードを読み込むことで、どんな水産飼料が使用されたかや二酸化炭素の排出量、栄養素が分かるアプリ「ディスカバー」を開発している。そういった新しい技術によって、いまや誰もが魚を買う際にたくさんの情報を得られるようになってきている。

「人々は何を買うか、食べるのかを判断するために、自ら情報にアクセスしたいと考えています。QRコードを使うことで、消費者は意思決定ができ、サステナビリティ認証や小売業者に判断をゆだねる必要がなくなります」

しかしながら、透明性と情報過多は紙一重だ。マシーセン氏は言う。

「われわれの店には毎年10億人が来店します。お客さんは持続可能なものは欲しいけれど、時間を費やしたくありません。透明性がより高くなるのはいいことです。でも消費者の時間を奪うものであってはいけません。ブランドはこうした課題に応えることで、信頼を築いていかなければなりません」

責任ある調達について、仏ピレネーの養殖業Pirineaのアルノー・シャペロン氏は小売業者の優先順位が変わってきていると見ている。

「われわれは間違いなく、調達の透明性を高める取り組みの第1段階の最終工程にいます。以前までは、毎年、小売業者は低価格でより多く買おうとしていました。いま、消費者はサステナブルなものを買いたいと考え、小売業者との交渉も変わってきました」

実際に、MSCは小売業者に対して、より良い調達のために既存のサプライヤーと協働することを推奨している。MSCスペイン・ポルトガル事業部長のローラ・ロドリゲス氏は「新しいサプライヤーに変えるのではなく、いまのサプライヤーと協働して変革を起こし、持続可能な方法で事業を行えるようにするというのが私たちの考えです」と話す。

サステナビリティに敏感な消費者の需要を満たすために、小売業者とサプライヤーが手を取り合って動くことがいま期待されている。

海 – プラスチック=再生型経済

毎年、約8-15億キロのプラスチックが海洋に流出している。最も効果的な解決方法は、初めからプラスチック廃棄物を出さないことだ。それ以外の方法でベストなものを探すとすれば、プラスチック廃棄物を通貨に変えるという方法ではないだろうか。その通貨は、リサイクルのインフラが整っていない途上国で現金と同様に使うことができるものだ。一夜にして、廃棄したプラスチックは価値を持ち、捨てるのではなく収集されるようになるだろう。

これが、ディビッド・カッツ氏が創業しCEOを務める「プラスチックバンク」の背景にある考え方だ。

数千トンのプラスチック廃棄物がまき散らされているブラジルやハイチ、インドネシアに暮らす人々はいま、プラスチック廃棄物を収集してプラスチックバンクの回収センターに持ち込み、IBMが開発したブロックチェーン・バンキングアプリを使って、電子通貨に換金している。

カッツ氏はインドネシア・バリの回収センターで働くリサさんの話を紹介した。同センターはSCジョンソンがスポンサーをしている。リサさんは日中、居住地や企業、路上でプラスチック廃棄物を回収して得た収入で子どもを養育している。電子通貨は強盗に奪われることもなく安全だ。さらに、アルコールやドラッグを買う彼女の家族に勝手に使われるリスクもない。

プラスチックバンクは事業を拡大しており、今年、エジプトやコロンビア、ベトナムでも開設した。独化学・消費財メーカーのヘンケルは最近、プラスチックバンクとの共同事業を5年間延長して行う計画を発表。ハイチやフィリピン、インドネシアでの事業を支援し、さらにエジプトでも400カ所以上の回収センターの開設を支援するという。

SCジョンソンは、回収されたプラスチックを100%利用した容器を使って、主力の家庭用掃除用品ブランド「Windex」を発売した。

プラスチックバンクは今後、カトリック教会と協働することを計画している。カッツ氏は、教会や礼拝場は世界のいたるところにあるとし、お供えするものを持ってくるだけではなくリサイクルできるものを持ってきてもらいたいと考えている。

プラスチックバンクの話は聴衆の心を掴んだ。カッツ氏はこう話す。

「何かを買うということは、『それを支持する』と投票することです。私たちは皆、新しい再生型経済について声に出して話す必要があります」

一つの世代を交代する前に、海の豊かさをどう取り戻すか

Oceans2050創設者のアレクサンドラ・クストー氏は映画製作者であり活動家だ。祖父に、仏の著名な海洋探検家であり、自然保護活動家、イノベーター、科学者、写真家、作家、研究者などさまざまな顔を持ち活躍したジャック・イヴ クストー氏を持つ。彼女自身も有名人だ。冒頭で、海の豊かさを初めて目の当たりにした1980年代、まだ子どもだったころを振り返った。

「それ以降、その豊かさは失われ続けています。取り返しのつかない損失をもたらすティッピング・ポイントに達するまでに残された時間は10年です。いま、私たちが方向転換をすれば、私の子どもやあなたの子どもは海の豊かさを享受できるでしょう」

クストー氏は、海の豊かさをもとに戻すための変化を起こそうとOcean2050を創設した。「私たちには、海の豊かさを取り戻しながらも、海から食べ物を生み出せるようにする変革が必要です」と言う。

海を再生する役割を担う藻場は、可能性を秘めた解決策だ。藻場は水中に酸素を送り込み、炭素を吸収し、海洋生物の住処をつくっている。実際、藻場が人類に提供する生態系サービスは熱帯雨林の5倍であり、藻場の面積はアマゾンよりも広い。

「いまこそ大胆で、野心的な行動をとる時です。海のために行動を起こすことを話し合うタイミングです」

そう話すクストー氏は、いまのようなチャンスは二度と来ないと考えている。

「海のプラスチック汚染は人々の関心を海に戻しました。企業は前例のない動きを見せています。良いニュースだと思いますが、悪いニュースは海が今も死に向かっているということです。私たちは、プラスチック問題から学んだことをどう魚の乱獲などの問題解決に生かせばいいのでしょうか」

一つの世代が変わる前に海の豊かさを回復するという目標を達成するためには、いま行動を起こさないといけない。

Sustainable Brands Oceans

サステナブル・ブランドは世界13カ国14都市でカンファレンスを開催している。海洋をテーマにしたSB Oceansは11月14-16日、ポルトガル第2の都市ポルトで開催された。

同国出身で、SB Oceansを企画したプロデューサーのヒューゴ・アルメイダ氏はSB Oceansを開催した理由についてこう話す。

「多くのブランドは海洋のサステナビリティに取り組みたいと考えながらも、どう取り組み始めればいいのか、誰が何をやっているのかも、上手くいっていることとそうでないこともまだ把握しきれずにいる。だから、海洋経済に関わる人たちのためのグローバルプラットフォームをつくろうと考えた。変化を生み出したい。海だけでなくマインドセット、そして企業の社員など人の変化もだ」

今回のSB Oceansは「イノベーション」「海の生き物」「ツーリズム」「知識と教育」「コミュニケーション」の5つのカテゴリーで構成された。「プラスチック問題に向けられている注目度を海のほかの問題にも向けるようきっかけをつくりたい」とアルメイダ氏は話す。そして、「知識と教育」がどれよりも一番大切とし、「人は、なぜなのかという理由が分からないと決して行動に移すことはない」と説明する。