SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイトです。ページの先頭です。

SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

フェアトレード以上のメリットを生産者にどうもたらすか 国連などが実験

Tom Idle

オランダの「フェアチェーン・ファンデーション」と国連開発計画(UNDP)はこのほど、オーガニックカカオを適正価格で買う以上のインパクトを生産者にもたらす実験として、チョコレート「アザー・バー」の販売を始めた。購入者は板チョコレートを4枚買うと、ブロックチェーン・トークン(代替通貨)を使って、カカオの苗木を寄付するなどできる。またブロックチェーンを利用することで、生産者や産地にどのように還元されたかを明確にできる。インパクトを見える化することで、どれほど消費行動が変わるかを調べる。(翻訳=梅原洋陽)

ブランド・マネージャーとサステナビリティの専門家が長い間、議論してきたことがある。消費者は責任あるエシカルな製品を好むと言いつつも、いざ購入という場面になると、言うこととやることが一致してないということだ。

米国の調査では、消費財に関しては、消費者の意識と行動の隔たりは減ってきたという。ニューヨーク大学によると、消費財の売り上げ成長の5割を占めるのはサステナブルな製品。実際の売上高に基づいたデータを参照すると、2018年の消費財マーケットの16.6%を占めているのはエシカルな製品だった。これは2013年の14.3%から伸びてきている。総売上高は約1140億ドルにもなり、2013年から29%も増えている。重要なのは、サステナブルな商品として売られている製品はそうでない製品より5.6倍も売上高が伸びているということだ。

この消費者の新たな動きに、スタートアップが乗ろうとしている。消費者にエシカルな製品を楽しんでもらうだけでなく、消費者が購入することで、根本からポジティブな変化を起こすきっかけをつくろうとしている。

テクノロジーで消費者の行動を変えられるか

10月、フェアチェーン・ファンデーションとUNDPが連携し、新たな社会実験として、「アザー・バー(The Other Bar)」というチョコレートバーが発売された。この製品は、これまで西欧企業と不平等な取引をしてきた発展途上国の農家と新たなビジネスを生み出そうとするもの。貧困や不平等といった問題に対し、消費者が手軽に、積極的で直接的なインパクトを生み出せるようにする狙いだ。

それぞれのチョコレートバーにはデジタルコードが記載されている。消費者はこのコードをスキャンし、ブロックチェーン・トークン(代替通貨)で、原料のオーガニックカカオを製造するエクアドルの農家にカカオの苗木を寄付するか、次回の購入時に25%オフの割引をしてもらうかを選択できる。

1つのコードはカカオ1本の苗木の価格の4分の1に相当する。農家は4枚のチョコレートバーを買えば1本のカカオの苗木を植えることができるのだ。これにより森林伐採を食い止め、将来的にカカオ農家の収益力も上げられる。

チョコレートバーは今回、欧州で2万枚限定で売り出される。このアイデアが生まれたのは、UNDPエクアドルの包括的経済成長部門長 カルロス・ルイズ氏が「フェアチェーン・ファンデーション」のポッドキャストを聞いたことがきっかけという。同財団は、グイド・ファン・スターフェレン・ファン・ダイク氏が2017年に商品生産に潜む不平等を解消するために創設した団体。

コーヒー業界を例にとると、コーヒー豆を生産する国に残るお金はこの25年間減る一方である。多国籍企業の収益は増えているのに、農家や製造者は開発援助に頼っている。

「現状を知ってしまってからは、知らないふりができませんでした。壊されてきたものを修復するためにも共有バリューチェーンをつくり、過去の25年間を取り戻します」とファン・ダイク氏は最近のSBのインタビューで話した。

フェアチェーン・ファンデーションはブロックチェーンの技術を応用し、エチオピアのコーヒーで最初の実験を行った。

UNDPとの連携は2018年10月に開始。ファン・ダイク氏は、これを1回限りの取り組みにするのではなく、社会的インパクトを残し、生産国に収入が入るようにするという意味でToC(セオリー・オブ・チェンジ:変革の理論)の一部と考えている。

二者は即座に目標を決めた。農家にこれまでよりも多く支払い、さらにエクアドルでさらにカカオを生産する――。フィフティ・フィフティのバリューチェーンを生み出そうとしている。

成功している他のサステナビリティに関するイニシアティブのように、テクノロジーが鍵を握る。ブロックチェーン技術を活用し、消費者がトークンをつかうことで、The Other Barはカカオ農家に直接収入を送金ができる。これによりUNDPエクアドルは現地の農業組織を支援し、苗木を植えるなど農家の自立支援のトレーニングを行う。

どれだけ多くの人を巻き込めるか

「これは行動に基づくモデルです。実際に木が購入され、植えられ、そして育ったものが農家に収益をもたらしたかを証明することができます。全てがブロックチェーンに記録されているため、消費者は取引が透明性をもって行われているのか確認できる」とファン・ダイク氏はいう。

インパクトを生み出せる製品の市場が発展していく中で、The Other Barは有益な実験となるだろう。責任ある材料を使って製造されていることに消費者が興味を持つかどうかだけでなく、私たちが日常的に買うものを変化の材料とすることができるか知ることができるからだ。

The Other Barは消費者の行動を、インパクトを数値化することでどのように変化させられるかを知る実験だ。もし消費者が社会的インパクトをもたらす製品を買い、そうした製品に信頼や愛着を感じると証明できれば、大企業もそれにならい、社会的インパクトをもたらすマーケティングにお金を費やそうと考えてくれるのではないかと期待している。

The Other Barがターゲットとする人たちはこの製品のファンになってくれるだろう。課題は、この製品に協力的で短期間の喜びやフィードバックを得たいと考える人たちの層を超えてより大きなマーケットにリーチすることだ。

「さまざまなことに配慮した意識的な消費傾向はどんどん高まるでしょう。そうした消費者はより直接的なインパクトを生み出したいと考えています。正しいツールと良い商品を適正な価格で提供していきます」とファン・ダイク氏と語った。