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ジーンズの製造を循環型に LeeやGAP、H&Mなどが参画

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米サステナブル・ブランド編集部

トレンド:ファッションとサーキュラーエコノミー

ジーンズの製造工程を循環型にしようと、LeeやGAP、H&M、トミー・ヒルフィガーなどの16ブランドが参画する新たな取り組みが始まった。サーキュラーエコノミー(循環経済)を推進する英エレン・マッカーサー財団が、ニューヨーク市と提携して立ち上げたファッション産業を循環型にするためのイニシアティブ「Make Fashion Circular」から生まれたものだ。

年間約9万トンの洋服が埋め立て廃棄されているというニューヨーク市。今年初めに立ち上がった同イニシアティブでは、有名ブランドや同市の担当部署を巻き込んで、取り組みが進んでいる。

先月、発表された「ジーンズ・リデザイン・ガイド(ジーンズを再デザインするための手引き)」は、ジーンズの製造過程を変革するための、「衣服の耐久性」「素材の健全性」「リサイクル可能率」「トレーサビリティ」に関する必須条件を記載している。

サーキュラーエコノミーの原則に基づき、同ガイドが目指す次世代型のジーンズは、長持ちし、簡単にリサイクルができ、地球環境や製造者の健康により配慮して製造されるものだ。「ジーンズ・リデザイン・ガイド」は学会やブランド、小売店、製造業者、回収業者、仕分け業者、NGOなどと協働して制定された。

参画するブランドは、Arvind Ltd.、Bestseller、Boyish Jeans、C&A、GAP、Hirdaramani、H&Mグループ(H&MとWeekday)、HNST、Kipas、Lee、Mud Jeans、OUTERKNOWN、Reformation、Sai-Tex、トミー・ヒルフィガー。ガイドラインは、世界中の衣服の回収業者やリサイクル業者からの承認を得ている。クリーンテック企業のCircular Systems やBank and Vogue、EVRNU、HKRITA(香港繊維アパレル研究開発センター)、I:CO、Infinited Fiber Company、Lenzing、Recover、re:newcell、Texaid、Tyton Biosciences LLC、Wolkat、Worn Againなどが含まれる。さらに、持続可能なファッション業界への転換を推進するNGO、ファッションレボリューションとテキスタイル・エクスチェンジからも承認された取り組みだ。

2020年から販売を開始

これまでにも、ジーンズの製造をより持続可能で循環型なものにする取り組みはあった。例えば、C&Aとサステナブル・ファッション・イノベーションを推進するプラットフォーム「Fashion for Good」が実施した、クレイドル・トゥ・クレイドル(Cradle to Cradle、ゆりかごからゆりかごへ) ゴールドレベル認証を受けたジーンズを展開するための共同イニシアティブのオープンソース・ガイドラインだ。

今回のジーンズ製造の工程を循環型にしようとする取り組みは、今後さらに拡大し、参画ブランドも増える見込み。そうしたブランドは、同ガイドラインに沿ってジーンズを製造していくことになる。ジーンズの販売は2020年から始まる予定だ。

「Make Fashion Circular」を率いる、英エレン・マッカーサー財団フランソワ・スーシェ氏はこう話す。

「現在のジーンズの製造方法というのは、廃棄や汚染という点で重大な問題を引き起こしている。でも、そんな方法で作る必要はない。今回のようにブランドやリサイクル技術を持つ会社、NGOなどが連携することで、長持ちし、これまで使っていたジーンズから新しいジーンズが作れ、それでいて環境や労働者に配慮した方法で製造されるジーンズを生み出すことができるのだ」

同氏は今後について、「今まさに始まったばかり。サーキュラーエコノミーの原則に基づき、ファッション産業をより豊かなものにするための潮流を絶やさないように取り組みを持続していく」と語る。

ガイドライン

世界的に製造業における労働条件を改善しようとする動きがある中で、ファッション業界のすべての分野において、健康や安全、人権を重視することが必須条件となっている。今回のガイドラインは、さらに一歩踏み込んで、衣服の耐久性、素材の健全性、リサイクル可能率、トレーサビリティの必須条件を示すものだ。

耐久性
● ジーンズは最低30回の洗濯に耐えられるべきであり、その上でさらにブランドの最低限の品質要求事項を満たす必要がある。
● 衣類の製品ラベルでは、取り扱いに関する明確な情報を表示すべきである。

素材の健全性
● ジーンズは、再生型や有機農法、もしくはそうした農法に移行する過程にある農法から生まれるセルロース繊維を使って製造されるべきである。
● ジーンズは有害化学物質を使わず、これまで使われてきた電気めっきを用いた金属ボタンもやめるべきだ。古着のようなダメージ加工を施すために、天然石を使って洗う「ストーンウォッシュ」を行うことや、製造者の健康への危険性がある過マンガン酸カリウムの使用やブラスト加工も禁じるべきである。

リサイクル可能率
● 
ジーンズは重量にして最低98%をセルロース繊維で作るべきである。
● 金属部分はデザインから除くか、最低限にすべきである。
● さらに金属を追加で使う場合は分解が簡単にできるようにすべきである。

トレーサビリティ
● 
ガイドラインが要求する各項目を満たしていると証明する情報が簡単に分かるようにするべきである。
● 必要項目を満たす組織は、本ガイドラインから生まれた「Jeans Redesign」のロゴを使用することができる。
● 「Jeans Redesign」のロゴの使用許可は、報告要件のコンプライアンスに基づき、1年ごとに更新される。

プラダ、2021年までに再生ナイロンに切り替え

今年6月、イタリアの高級ファッションブランド、プラダは2021年までにプラスチック廃棄物などをアップサイクルした再生ナイロンに切り替える方針を発表した。伊アクアフィル社の再生ナイロン繊維ECONYL®を使い、新たに「Re-Nylon」シリーズを展開していく。プラダは今回、ナショナルジオグラフィックと連携し、世界5大陸をまわって、廃棄物からどのようにして同製品が生まれるのかというサプライチェーンの過程を映し出したショートフィルムを公開している。

ショートフィルム「What We Carry」には、プラダのレポーターのほかに国際的活動家、ナショナルジオグラフィックの担当者が登場する。第1話は、映画「ハリー・ポッター」にも出演した女優で活動家のボニー・ライト氏とナショナルジオグラフィック探検家のアッシャー・ジェイ氏が、米アリゾナ・フェニックスにあるアクアフィル社のカーペット・リサイクル工場を訪れ、サーキュラーエコノミーがどのようにして形になっているかを学ぶというもの。米国では年間約159万トンのカーペットが埋め立て廃棄されている。

Image credit: Prada

第2話では、南スーダン系オーストラリア人のモデル アドゥ・アケチ・ビオール氏とナショナルジオグラフィック探検家で水資源保護活動家 ジョー・カトラー氏が、カメルーン最大の湖 オサ湖を訪ねた。水に恵まれたオサ湖はさまざまな種が暮らす自然生息地でもあり、周辺には人々が暮らすコミュニティがある。しかし、数年にわたって、数百枚の廃棄漁網やその他の廃棄物が湖の生態系の循環を妨げ、漁獲高が減るなどしている。現在、周辺コミュニティと「Re-Nylon」の素材になる漁網を回収してリサイクルする「Net-Works」が連携することで、生態系を保護するだけでなく、雇用を生み出すことにもつながっている。



(翻訳:小松遥香)