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リーバイスやバーバリーなど有名ブランドが気候変動対策を強化

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Sustainable Brands Staff
IMAGE: LEVI STRAUSS

ジーンズブランド大手のリーバイ・ストラウスは業界トップレベルの気候変動対策戦略を進めている。バーバリーやプーマもSBT(気候科学に基づいた温室効果ガス削減目標)イニシアティブから認定された先進的な削減目標を掲げている。

リーバイ・ストラウスは6月末、同社工場での温室効果ガスと水の使用量を削減するために、世銀グループの国際金融公社(IFC)との連携を締結した。同社は2018年、自社ビル・工場だけでなく全グローバルサプライチェーンで2025年までに温室効果ガスを削減するという気候変動戦略を掲げ、ファッション業界の気候変動対策のハードルを大きく上げた。この戦略は野心的なSBTにも合致している。

リーバイスはいま、IFCと協力合意を結び、サプライチェーンでの温室効果ガスと水の使用量に関するサステナビリティ目標を達成しようしている。

IFCは10カ国42社のリーバイスが指定するサプライヤーや工場と連携し、温室効果ガスを削減するために必要な再生可能エネルギー・節水対策に乗り出している。パキスタンやバングラデシュ、スリランカ、インド、メキシコ、レソト、コロンビア、トルコ、エジプト、ベトナムで実施されており、資源消費と水質汚染を減らすために、IFCのPaCT(Partnership for Cleaner Textile:透明性のある繊維のためのパートナーシップ)を取り入れている。IFCとリーバイスはこの実施のために、連携して費用負担している。

IFCは、温室効果ガスの削減や水利用の効率を上げること、再生可能エネルギーの設置を拡大するなど、実質的に環境にいい影響を生み出す取り組みを特定するためにサプライヤーと工場を評価していく。世界最大の国際開発機関として、IFCはあらゆる部署や領域の専門家を投入し、今回のプロジェクトに取り組もうとしている。

IFCの製造・農業ビジネス・サービス部門のトマシュ・テルマ氏は、「リーバイスはサステナビリティに取り組むと強く宣言していて、IFCにとって理想的なパートナーだ」と話す。

「この協力協定を通して、パートナーがサプライチェーン上のサステナビリティの取り組みを強化していけるよう、IFCは助言や投資型商品を提供していく」

世界の繊維、アパレル、靴産業というのは、産業化や経済成長の大きな要因だ。同産業は6000万人を雇用し、その多くは女性。しかし同産業の温室効果ガス排出量は世界全体の同排出量の8%を占め、コットンの栽培や服の製造過程において水をかなり多く使用している。

リーバイスのグローバル製品・サプライチェーン部門のリズ・オニール部長は、「SBTを達成し、私たちの業者の方やそのコミュニティに利益をもたらすために、こうしてIFCと連携することを楽しみにしている。この取り組みが、同じ業界のほかの企業にも役立ち、全体の排出量の削減に貢献できたらと願っている」と話した。

2017年、IFCとリーバイスはバングラデシュ、インド、スリランカ、ベトナムのサプライヤー6社とパイロット版協力協定を結んだ。温室効果ガスの排出量を19%削減し、エネルギーや水の消費量を削減し、運営コストを大幅に削減した。IFCはさらにリーバイスと協働し、グローバル・サプライヤー・ファイナンス・プログラムを使って、途上国の衣料品サプライヤーが環境や健康、安全性、労働のパフォーマンスを上げるために報奨金を出した。

「ビジネス界は、サステナビリティにきちんと取り組むことがより良い業績を上げることにつながるということに気づき始めている」とサステナビリティ部門のマイケル・コボリ部長は話す。

「資源が乏しい国の業者の方々は、現状に必要なイノベーションを起こそうとしているが、そのためには何らかの助けが必要だ。このプログラムはそうした助けを提供するもの。業者だけでなくそのコミュニティの人々の生活も向上させ、さらにリーバイ・ストラウスの成長にもつながる」

バーバリー、SBTを発表

Image credit: Burberry

バーバリーが42億円相当の売れ残り商品を焼却処分しているという悪夢のようなニュースが世界に流れて、同社は今年、心機一転し、2022年責任戦略を発表した。SBTイニシアティブから認定を受けた野心的な気候変動対策の目標を掲げた。

SBTは、パリ協定で定められた産業革命以降の気温上昇を2度未満にするための、気候科学に基づいた温室効果ガスの削減シナリオと目標のことをいう。SBTイニシアティブは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、WWF(世界自然保護基金)による共同イニシアティブだ。

●2016年と比較し、スコープ1(自社の燃料の使用に伴う直接排出)とスコープ2(他社で生産された電機や熱などのエネルギー使用に伴う間接排出)の温室効果ガスの排出量(絶対量)を95%削減する

●2016年と比較し、スコープ3のサプライチェーン上での温室効果ガスの排出量を2030年までに30%削減する

これらの目標は、バーバリーがすでに設定していた「事業運営で使うエネルギーから排出される温室効果ガスを2022年までにカーボンニュートラルにする」という目標を上回るものだ。同社はすでに米国や欧州、中東及びアフリカ、英国ではカーボンニュートラルを達成している。バーバリーの事業運営から排出される温室効果ガスの削減目標は、SBTの気温上昇を1.5度に抑える基準に合致している。

さらに、バーバリーは電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指しRE100の達成に向けて取り組んでいる。現在は全体のうち58%が再生可能エネルギーだ。英国を代表する同ブランドは2018-2019年にかけて、市場ベースの排出量を2016-2017年比の43%削減する計画だ。

「バーバリーはより持続可能な未来を構築することに力を注ぎたいと考えている。最新の気候科学に基づいた新しい削減目標を設定することは、達成のための重要な道しるべだ」と企業責任部門のパム・バティ部長は話す。

「初めて、広範なサプライチェーンに関する温室効果ガスの排出量を削減するための目標を設定した。既存の目標からさらにハードルの高い目標を掲げている。元々あるシステムを変えるためには協働(コラボレーション)していくことが必要だ。今後、サプライチェーン上のパートナーと密に連携し、目標達成に向けて順調に進み、そして達成のために必要な行動をとっていく」

WRIの民間の気候緩和部門の部長を務めるシンシア・クミス氏は、「ファッション産業が環境に与える影響は深刻であり、より深刻化している」と指摘する。

「バーバリーが掲げる野心的な科学と整合する温室効果ガスの削減目標(SBT)は、ゼロカーボン社会で成功するために求められるリーダーシップとイノベーションを示している。壊滅的な気候変動を止めるためにも、すべての大手アパレルやシューズブランドはSBTを設定し、ビジネスを脱炭素化する包括的戦略を実行することが重要だ」

プーマ、2030年までに二酸化炭素の排出量を35%削減へ

Image credit: PUMA

一方で、大手スポーツブランドのプーマは、自社や運営する建物の二酸化炭素の排出量を2017年比で2030年までに35%削減すると明言している。同社は2011年、環境損益計算書(EP&L:Environmental Profit and Loss)を出したことで環境会計の最前線にいた企業でもある。プーマは2017-2030年にかけて、商品やサービスの売上高100万ユーロごとに排出量を60%削減する。

プーマのサステナビリティ部門を率いるステファン・ザイデル氏は「地球温暖化がかつて想定した以上の速さで進んでおり、早急な対応が必要だ。プーマは、温室効果ガスを削減するために大きな目標を設定することでその解決策の一つになりたい」と話す。

プーマ、バーバリー、リーバイスは昨年、ポーランドで開催されたCOP24で発表された「ファッション産業の気候アクション憲章(Fashion Industry Charter for Climate Action)」でも主導的立場にいる。

WRIのクミス氏は、「ファッション産業が環境に重大な影響を及ぼしていることは知られているが、世界の衣服や靴の製造は急速に成長しており衰える兆しがない。より多くの企業がプーマに続き、脱炭素化のための包括的戦略を追求し、壊滅的な気候変動を止めるための対策を講じる必要がある」と語った。

(翻訳=小松遥香)