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消費トレンドが日用消費財メーカーを変える:CDP

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米サステナブル・ブランド編集部

国際環境NGOのCDPはこのほど報告書、『ファスト・ムーヴィング・コンシューマーズ』を発表した。飲食品や家庭用品/パーソナルケア製品を扱う大手16社が低炭素社会への移行準備を進めているかを調査し、ランク付けした。ヴィーガニズム(絶対菜食主義)の広まりや、積極的なプラスチック包装脱却運動など、速度が速く、著しい消費者のし好の変化に直面する企業の動きを追っている。(翻訳=クローディアー真理)

飲食品や家庭用品/パーソナルケア製品がライフサイクル上、環境に与える影響は顕著だ。日用消費財による温室効果ガス排出量は、世界の3分の1以上を占める。これら企業の努力次第では、この3分の1を占める排出量を減らすことが可能だ。日用消費財を扱う業界の炭素排出量の90%はバリューチェーン上で排出されている。

飲食品も家庭用品/パーソナルケア製品も消費者には身近な存在であるため、変化する消費者のし好に左右される。しかし同時に今後も存続していくために、企業活動を消費者の好みに合わせて変化させる機会に恵まれているともいえる。

ダノンやネスレ、P&Gが先陣を切って、商品をヴィーガンやオーガニック製に切り替えている。CDPの分析によると、飲食料品業界についていえば、乳製品や肉製品を扱う7社中5社がこうした切り替えを行っている。

家庭用品/パーソナルケア製品業界においては、ロレアルを含め、7社中6社が積極的に石油化学製品の代わりに天然素材で生分解可能な材料を取り入れている。ユニリーバを含め、4社がヴィーガンのパーソナルケア製品を開発している。

消費者はプラスチック包装廃止運動の活発化に伴い、循環型でごみを出さない方針を掲げる企業の商品を選ぶ傾向にある。企業側も約60%が生分解可能なプラスチックを採用し、リサイクル体制を整えるに至っている。これをリードするのはダノンだ。

ほかにも企業は自社の環境負荷抑制のために、環境に配慮したニッチで小規模なブランドの合併・買収も行っている。合併・買収を行った企業は過去5年間で4倍増となり、ネスレやペプシなど75%を占める。特に飲食料品業界はヘルシー志向や、環境に配慮するトレンドの影響を受けている。

現在、企業は常に難題に直面している。発生源での包装廃棄物を削減し、リサイクルと回収を改善するための方法を定める、2018年改正の「包装及び包装廃棄物に関する欧州議会及び理事会指令」のような、包装やごみ関連の法規制は今後も続々と導入され、企業はそれらを守るための変革を迫られる。加えて、商品のラベリングや炭素排出量の表示も求められることになるだろう。

また気候変動の影響を直接的に受けるのが、飲食料品業界と家庭用品/パーソナルケア製品業界の特徴だ。原料の農作物の不作が原因で入手困難や価格高騰が生じている。特にネスレやクラフトハインツなどの食品メーカーにとり大きな問題だ。一方、家庭用品/パーソナルケア製品は水と共に使うようにできているため、水資源の枯渇を招いている。

環境負荷抑制を進める企業がある一方で、それが滞っている企業もある。調査対象企業が抱えるブランドのうち、最も収益を創出する10ブランドの60%が過去10年間において、CO2排出抑制努力を怠っていると指摘されている。これにはネスカフェやバドワイザー、ダヴが含まれる。

また熱帯雨林破壊に通じるパーム油の使用についても、関連企業の対応が遅れている。家庭用品/パーソナルケア製品を生産する企業の中で、実際に認証された供給元からのパーム油を用いているのは45%以下。使用しているパーム油が100%、認証された供給源からというのはロレアルと、飲食料品業界ではダノンのみだ。

CDPのキャロル・ファーガソン インベスター・リサーチ長は、「消費者のインプットもあり、日用消費財ブランドはサステナブルな経済への移行の原動力として重要な役割を担っている」と言う。

さらに「大企業はバリューチェーンの見直しに取り組み始めている。サプライヤーや消費者の協力も得て購買行動の変化を推進するなど、社会における企業の役割を再定義する活動にも着手している。こうした行動は評価に値するが、根本的なリスクに対処することを忘れてはならない。そして業界内の他企業もそれに追随する努力を怠ってはいけない」と忠告している。

『ファスト・ムーヴィング・コンシューマーズ』は、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の推奨事項に沿った4つの主要分野にわたり、企業を評価している。

飲食料品業界サブセクターにおける、CDPの比較一覧表
各列は左からそれぞれ、企業名、本拠地(国)、2018年平均時価総額(10億米ドル)、加重ランク※、順位、を表す。
※「移行リスク(30%)」「物理的リスク(20%)」「変化がもたらす好機(30%)」「気候ガバナンスと対策法(20%)」の4分野におけるランクを各々の重要度(カッコ内%)に従って加重したランク

家庭用品/パーソナルケア製品業界サブセクターにおける、CDPの比較一覧表