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従業員エンゲージメント3.0:スターバックス・ユニリーバの画期的な取り組み

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ロレーヌ・シュハルト

2000を超えるサステナビリティの実践者、ブランド戦略家、製品やサービスを産み出すイノベーター、新時代を築いていくリーダー、そしてチェンジメーカーがSBバンクーバー2018に集まり、世界中のビジネスを加速させる様々なアイデアを共有した。本記事では、ブランドや企業がどのような手法で従業員の高いパフォーマンスをサポートしているかを掘り起こしたい。(翻訳=梅原洋陽)

個人的なパーパスは従業員をまとめる有力なツール

自身のセッションで講演を行うユニリーバのジョナサン・アトウッド氏| Image credit: Sustainable Brands

ユニリーバの副社長であり、サステナブル・ビジネス&コミュニケーションを担当するジョナサン・アトウッド氏は参加者に、従業員の個人的なパーパスとブランドのパーパスをリンクする重要性を説いた。

参加者にそれぞれのパーパスは何かを問いかけながら「私達は他人のストーリーをシェアすることはない」と強調した。

同氏はユニリーバに2012年に加わり、その直後にシンガポールですべての部長職以上が受けるパーパスを発見するトレーニングを受けた。このトレーニングはAuthentic Leadership Instituteのニック・クレッグ代表によって行われた。このコンサルティング企業は多くの社員やメンバーがパーパスを発見できるように導ける真のリーダーを養成する事に注力している。

当初、参加することにあまり乗り気では無かったものの、難しい課題を通して、自身の最も大事なパーパスを見つけたと言う。それは、独自の考えや意見、影響力を人々に持ってもらうようにすることだそうだ。パーパスは時間と共に変化していくこともあると付け加えた。

同氏は、作家であり講演家でもあるジョン・イッツオ氏の「私達自身が生き生きと出来ること以外は取り組む価値がない」と言う考え方に賛成している。

しかしそれと同時に、パーパスは特効薬ではないとも伝えた。パーパスは進み続けるために必要な物だ。自分のパーパスを見つける過程は時に苦痛を伴うことがあるが、取り組む価値はある。その過程が個人、そして仕事レベルでの人との関係性をより良くするだろう。

2017年に同氏はユニリーバの全社員が自分のパーパスを発見するチャンスを持つべきだと確信し、全従業員に対してトレーニングを始めた。今日までに、9000人いる社員のうち、3000人がトレーニングを完了した。

「皆求めているものは同じです。すべてを変えるような、大きなことの一員になりたいのです」と同氏は言う。

参加者の何人かにそれぞれのパーパスが何かを聞いて回った。何人かの人は苦痛を伴った経験にふれながら、パーパスの発見が人生に指針をもたらしていると語った。

同氏は人々とパーパスを結びつけることがパフォーマンスを最大限に引き出すことに繋がると信じている。

「私はすべてを変えるような、大きなことの一員になることができました。その結果として私の第二のパーパスに気がつくことができました。人々が暗がりで光を照らす存在になるお手伝いをすることです。」

スターバックスがどのようにグッド・ライフの理念を生かし、多難なコミュニティメンバーにとってウィン・ウィンな雇用を行なっているのか

講演するスターバックスのマイケル・コンウェイ氏| Image credit: Sustainable Brands

スターバックスは革新的な取り組みで知られている企業である。近年の取り組みの中には、難民をウィン・ウィンの形で支援するプログラムの開発、若者への機会の提供、そして社会的に弱い立場にいる人のサポートなどがある。

同社の様々な取り組みはこの企業のパーパスと合致している。それは事業を通して革新的な社会の変革と正義を促進することである。

スターバックスの執行副社長であり、スターバックスカナダの代表であるマイケル・コンウェイ氏はスターバックスが開始したパーパスに基づく採用や従業員のパーパスに関連する福利厚生について語った。

前CEOであり最高経営責任者であるハワード・シュルツ氏の「営利目的である上場会社の担う役割や責任はなんだろうか」という問いかけに対する答えを常に探していると同氏は話す。

スターバックスの役割は「人の心に刺激を与え、精神性を育むことーひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」だと考えている。

同氏はスターバックスのフィラデルフィアの店舗で、二人の黒人男性が店を出るようにと言う店員からの指示に従わなかったことで逮捕された事件についても言及した。一般市民からの抗議運動も起こり、社会的な関心をよんでいる事件だ。スターバックスは5月29日の午後、アメリカにある約8000の店舗を閉め、従業員の再トレーニングを行った。カナダの店舗では6月11日に同様のトレーニングを実施した。

「企業の真の姿は、問題が起きたときにどのように対処するかによく現れるものです」と本来のトピックに戻る前に付け加えた。

最初のウィン・ウィンの例として挙げられたのは、カナダでの機会創出についてだ。

カナダには、約100万人のニート(NEET)状態にある若者がいる。その問題に対応するために、Work Placement programを打ち出した。若者対象の就職フェアに出向き、履歴書無しで、個人の性格や文化に基づいて採用を行う。

今日までにスターバックスカナダは900人のopportunity youth(16歳から24歳までの学校に通わず職業に就いていない若者)を採用している。成功率は60~90%ぐらいだ。

スターバックスはこの取り組みをさらに加速させるために、カナダにある主要な企業と連携しOpportunity for All Youth Coalitionという取り組みを発表した。様々な障害に直面する若者を意義ある雇用に結びつける活動だ。

そして、スターバックスは2022年までに10000人の難民を雇用することにも着手している。最低でもカナダだけで1000人の雇用を目指している。

同氏がスターバックスに求めていたのは若者の支持者になることだ。そのために、同社は若者の公開討論会を開催し、若者達に3つの質問をしている。

1:夢はなんですか?
2:その夢を達成できると思いますか?
3:そのためにどんなサポートが必要ですか?

このフォーラムを通じてわかってきたことは、若者は精神的なサポートが必要だということだ。25歳までに、人口の約20%の若者が何かしらの精神的な問題を経験するという。

そのため、スターバックでは従業員の精神的なサポートに費やす費用を年間で$400から$5000に引き上げた。

最後に、同氏は耳を傾ける重要性も強調した。

1:良いことを調査する。 従業員にとって何が大切なのかを発見する。
2:協働で取り組み、インパクトを出す。 近年の社会課題は一人で立ち向かうには巨大すぎる。