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温暖化を14年間撮り続けた私が学んだこと

Ashley Cooper
Images credit: Ashley Cooper

私、写真家のアシュリー・クーパーはこの14年間、気候変動による環境への影響と自然エネルギー事業を写真に撮り続けてきました。今回、同じテーマでは他に類を見ない数の写真を収録した写真集「温暖化する惑星(Images from a warming planet)」を出版しました。序文を書いてくれたジョナソン・ポリット氏は、「膨大な数のパワフルな写真は、行動を起こすことの重要性を訴える素晴らしいものです。クーパーが得たさまざまな経験を学ぶことができます」と話しています。(翻訳:梅原 洋陽)

パリで行われた2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)は、気候変動への挑戦を象徴するものとして歓迎されました。会議が開催され始めて以来、初めてすべての条約加盟国が世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑えることを目標とし、現在進行中の温度上昇を1.5度以内に留めることに同意しました。また、先進国が新興国のサポートを行うという一連の責任条項を提示しました。会議初日には150の参加国とその代表者が出席し、過去最多の代表者が一日で集まり、この会議の重要度を示していました。

各大陸で気候変動の影響を記録した13年間の旅を終えた私は、このパリ協定をもちろん喜ばしく思っています。しかしこれは大きな一歩ではありますが、世界中の1度の温度変化がもたらす破壊の酷さを目の当たりにしてきた者としては、この合意はあまりにも規模が小さく、そして遅すぎると思います。

私は写真を撮ることはもちろん、自然や環境にも常に興味がありました。14年ほど前、私は気候変動について書かれた学術論文を多く読むようになりました。写真を撮る対象を絞ろうとしていました。そして、決めたのです。気候変動に特化した写真を撮ろうと。

カナダ アルバータの荒廃地でタールサンドを積むために列を成す重ダンプトラック

最も温暖化に責任のない人々が、最も大きな被害を受ける現実

2004年、私は主に氷河の後退、そして永久凍土の溶解と森林火災を見つめながらアラスカで1ヶ月を過ごしました。この旅の最後の1週間はシシュマレフというアラスカとシベリアの間にあるチュクチ海に浮かぶ島で過ごしました。

この小さな島は600以上のイヌイットの居住地ですが、彼らの家は現在、海中にあります。以前は9月下旬頃には彼らの家の周りに海氷が生成されましたが、北極が地球上で最も気温上昇が激しいこともあり、2004年の時点ですでに、クリスマスの時期まで海氷が生成されなくなっていました。

これまで冬の初めに襲う嵐から島を守ってきた海氷は失われてしまいました。その結果、嵐が彼らの島の大半を破壊したのです。私はシシュマレフで、その後何度もそれを目撃しました。それは、地球温暖化に最も責任のない人々が、最も大きな被害を受けているという実態です。

私は大変なショックを受けました。北極がとても早いスピードで温まっていること、さらに、イヌイットの高齢者が目撃してきた環境変化の証言を聞き、この事象を記録に残すことが自分の使命だと確信しました。

ヒューム湖はオーストラリア最大の貯水池で、マレー川領域を下った農地に灌漑用水を運ぶほかアデレードの人たちの飲み水の水源でもある。撮影した日は、全体の19.6%しか水がなかった Images credit: Ashley Cooper

私の次なる撮影の地は世界最小の国、太平洋に浮かぶサンゴ礁の島ツバルで行われました。この島は海面上昇によって水没しました。ツバルに訪れる人よりも毎年エベレストに登る人の方が多いのですが、私は春の最も満ち潮の時期に合わせて訪問しました。ここで私が見たものも非常に衝撃的でした。穏やかで平らな海面が、潮が満ちるにつれて島を飲み込み、島の表面は海面下の3フィートまで沈みました。ここに住むポリネシア人の漁師たちはなす術もなかったのです。

イギリス空軍のヘリコプターが、ブラックプール沖で座礁したフェリー「リバーダンス」に海難救助の専門家を降ろしている。気候変動が深刻化するほど、天候がより荒れ、被害が大きくなる Images credit: Ashley Cooper

私は終わらせなければならない旅を始めていたのです。私はすぐに各大陸での気候変動と再生可能エネルギーがもたらす影響をまとめる計画を立てました。

オーストラリアの干ばつと山火事、中国の干ばつと火力発電所、グリーンランドの氷河後退、マラウィの洪水、ボリビアの氷河後退、カリフォルニアの干ばつと世界最大の太陽光発電所、アイスランドの再生可能エネルギー、洪水と海面上昇に対抗するためのオランダの浮動する家、南極大陸で減少し続けるペンギン、モロッコのアトラス山脈で減少し続ける雪塊など、数え切れないほどの場所に行き写真に収めました。

旅の中で、私は3つのことを大切にしてきました。気候変動が何によって起こっているのか、どんな影響が出ているのか、そして私たちに何ができるのかという3点です。

夜中、ヤコブスハブン氷河の氷山の中をツアー客を乗せたボートが進む Images credit: Ashley Cooper

それから13年、私はさまざまな経験をしてきました。ヒマラヤで雪崩に巻き込まれそうになったり、グリーンランドのクレバス上にあった雪の橋が崩れたり(間一髪で脱出しました)、中国で自分のガイドに騙されたりもしました。

このような旅では、浮き沈みを避けることはできません。私は2つの大きな憂鬱を経験しました。一つ目は、地球上で最大の破壊をもたらしたカナダの北アルバータでオイルサンド(油砂)を記録したときのことです。森林伐採の割合はアマゾンに次いで高く、ここで得られる油は原油の5倍の二酸化炭素が排出されます。これが地球にもたらす荒廃の規模は息をのむほどに深刻です。目で確認できる限り、森林は破壊され、残された油性汚泥による有毒な荒廃地は、人類の欲まみれの狂気の遺産といえます。

二つ目は、ボリビアのアンデス山脈の地上18,000フィート地点で、かつて世界で最も標高の高いスキーリゾートであったにも関わらず、今は所々に雪が残っているのみとなったチャカルタヤ氷河で撮影をしたときです。山の麓にある、ボリビア最大の都市ラパスは、氷河の消失によって深刻な水不足に喘いでいます。

インド西部ヴァドーダラー近くのゴラジにある僧院。1984年に最初のソーラーパネルを設置し、来年にはカーボンニュートラルを達成するだろう。この写真には、油を沸騰せるための装置に太陽光を当てるパネルが映っている。油はキッチンに送られ、調理器具を熱するのに使われる Images credit: Ashley Cooper

しかし、良いことももちろんあり、それは大変素晴らしいものでした。インドで3週間、ガンジスデルタのシュンドルボンで過ごしました。太陽光発電によるエネルギーが、貧しい自給自足の暮らしをする農家に初めて送られた場面を撮影することができました。各家庭に充電式バッテリーがあり、1週間に1度、発電所に充電をしに行くというシステムです。このバッテリーは携帯電話の充電をしたり、家の中の照明に使うには十分で、環境に悪影響のある灯油を使った照明を使う必要がなくなりました。

世界では、年間約100万人もの人が有毒な灯油を吸入することで命を落としていると推定されています。子どもたちがきれいで環境に良いライトで宿題をする姿は感動的でした。

ゴライのムニ・セヴァ僧院への訪問もとても感動的でした。この僧院は生涯医療を行なっており、学校から最新式の病院などが全て再生可能エネルギーによって動かされていました。ここでは、世界で初めて、そして唯一の太陽火葬場を撮影しました。ヒンドゥー教の原則に厳密に従い、1日4体の火葬を行うことができます。

気候変動は、私たちの選択と行動によって加速されました。私たちは大惨事に無意識のまま近づいています。私が13年間で目撃した人々や自然、環境に対する影響は時として恐ろしいものでした。私たちは何をしなければならないかを知っています。私は自分の目で未来のあるべき姿を見てきました。それはクリーンで、再生可能な代替エネルギーなのです。私たちは化石燃料を地中に留め、エネルギーをより賢く使い、人類にとってそれが何をもたらすかを評価する必要があります。そうすることによって初めて、私たちは気候変動の最悪の結果を免れるチャンスが生まれるのです。

アシュリー・クーパー