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紛争鉱物を使わない携帯電話:フェアフォン

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米国サステナブル・ブランド編集部

フェアフォンのタングステンはルワンダの鉱山で採掘され、その後、オーストリアで精製し、バイブレーション機能が装備される中国へと渡る。
Image credit: Fairphone

オランダ・アムステルダムを本拠地とするフェアフォンは6月20日、同社の携帯電話に紛争とは関わりのないルワンダ産タングステンを使用すると発表した。これにより、フェアフォンは紛争鉱物に指定されているスズ・タンタル・タングステン・金の4つの鉱物すべてを紛争地帯以外から調達していることになる。

フェアフォンは2010年、家庭用電化製品に紛争鉱物が使用されていることを広く知ってもらうためのキャンペーンの一環で生まれた会社だ。起業してから6年間で同社は2台のスマートフォンを発売し、これまでに10万人以上の賛同者がフェアフォンを購入している。

日々使う製品の原料がどこでどのように調達され、どう製品になっているのかを知っている人は少ない。例えば、スマートフォンに使われている鉱物は40種類以上もあり、世界中で採掘されているが、それを知っている人はどれだけいるだろうか。

鉱物のサプライチェーンの始点である鉱物の発掘現場では、汚染や危険な作業、児童労働など環境権や人権の侵害が頻繁に起こっている。

特にスズやタンタル、タングステン、金は武装勢力の資金源となり、紛争を助長するため紛争鉱物と呼ばれる。また、深刻な人権侵害につながるような問題も生む。

2010年に採択されたトッド=フランク法(ウォール街改革および消費者保護法)は、米証券取引所に登録されている全電子機器メーカーに対し、コンゴとその周辺国で採掘された鉱物を使用する場合は報告するよう義務付けている。さらに、紛争に資金援助をしていないことを証明しなければならない。EUは6月15日、紛争鉱物の使用を追跡する法律に大筋で合意した。

紛争地域から、コンフリクト・フリーの鉱物資源を入手する

トッド=フランク法によって、紛争鉱物問題は一躍注目を浴びることになった。しかし、多くの電子機器メーカーがコンゴと大湖地域で産出される鉱物の使用から手を引くようになり、現地住民が経済的な大打撃を受けることになった。

フェアフォンは2013年、こうした電子機器の製造に関する実態と問題を知らせようと、最初のスマートフォンの開発に着手した。同社は、紛争鉱物にはじまり、サプライチェーン全体の社会・環境的問題の改善に焦点を当てた。

フェアフォンが目指したのは、資源の調達ルートの透明化。つまり、採掘業務の改善と紛争に巻き込まれる地域住民の収入を上げるために、コンゴのような国から、紛争に関係しない鉱物を直接手に入れることだ。

コンフリクト・フリーのスズを推進する取り組みなどと協働し、フェアフォンは最初のスマートフォンに使うスズやタンタラムをコンゴの南キヴ州やカタンガ州から紛争に関与しない方法で入手することに成功した。

最新のスマートフォンではさらに取り組みを加速させ、電子機器メーカーで初となるフェアトレードの金を製造に取り入れた。

最大の難関、コンフリクト・フリー・タングステンの入手

フェアフォンは紛争とつながりのない金の試験的導入と並行して、ルワンダのタングステンの輸入を再開するためにオーストリアの製錬会社と協働した。この結果、フェアフォンはコンフリクト・フリーのタングステンをスマートフォンに使うことができたのだ。

予定では、8月からコンフリクト・フリーのタングステンがフェアフォン2のバイブレーション組み込まれる。この成功で、フェアフォンはトッド=フランク法で紛争鉱物と指定されている4つの鉱物の透明性を確保したことになる。

人の手作業が必要なスズやタンタラムの採掘に比べ、機械化されているタングステンの採掘は健康や安全性面でも労働環境が格段に良い。ルワンダ北部の鉱山では700から1200人の鉱山夫が雇用されていて、この地域にとって重要な収入源になっている。

業界への波及を狙う

フェアフォンが目指すのは、透明性のあるルートで入手した鉱物をスマートフォンに使用できると電化製品業界全体に示していくことだ。

同社は電化製品が製造される背景にひそむ問題を世の中に知らせ、紛争などが起きている危険な地域から正当な手段で携帯部品に使われる鉱物を調達していくため、製造業者やサプライヤー、消費者の見方を変えようと取り組んでいる。