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2016 SBサンディエゴ会議レポート(2)

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Lauren Hare
米住宅総合機器メーカーKOHLERは途上国の家庭でつかえるセラミック製浄水装置「Clarity」を開発した。Image credit: Kohler

持続可能なサプライチェーンの投資効果を考える

サステナビリティへの取り組みというと、多くの企業は、環境に配慮したルールを設けたり、再利用して商品を製造したりする。つまり、なにか新しいことを始める。

しかし、それが正しいかと聞かれると、そうとは言えない。サステナビリティへの取り組みを成功させるには、ビジネスとブランド戦略を見直し、目的を定めることが大切だ。

では、サステナビリティを経営方針に新たに加えるのではなく、組み込んでいくという発想に切り替えるにはどうすればいいか。発想を転換するために必要なものは何だろうか。

何よりもまず、企業が考えなければならないのは、製品づくりの要であるサプライチェーンだ。

今回のサンディエゴ会議には、サステナブルなサプライチェーンの構築方法や投資効果をよく理解するのにうってつけのスピーカーたちが登壇した。

メンバーは、PRエージェンシーKetchumでサステナビリティ部門を担当するモニカ・マーシャル、CSRコンサルタントCarol Cone ON PURPOSE (CCOP)のCEOキャロル・コーン、3Mのサステナビリティ部門の副部長・ジーン・スゥーニー、KOHLERのマーケティングディレクターのロブ・ジマーマン。

トークセッションの冒頭で、Ketchumのモニカ・マーシャル氏は、長年サステナビリティとマーケティングの専門家として活動してきた経験から、これまでに直面した課題について語った。

「統計では、消費者の65%が目的主導型のブランドを支持すると答えるものの、どのブランドが目的主導型のブランドに該当するかと聞いても過半数は名前を挙げられない。」

サステナブルなサプライチェーンの構築に必要なもの

目的主導型のブランドに対する支持は決して少なくないのに、サステナブルなサプライチェーンの構築につながらないのは何故だろうか。

KetchumとCCOPの合同調査によると、企業は自社の評判と競争力からサプライチェーンを改善するかどうか判断するという。

KOHLERと3Mには、大量流通と直販の2種類の市場モデルがある。KOHLERは大型ホームセンターで小売りを手掛けながら、直販も行っている。同社の競争優位性は、消費者が同社の製品をただのトイレとかシンクではなく、高級ブランドKOHLERの高品質なトイレでありシンクだと認識していることだ。KOHLERは、サステナビリティを高級ブランドが備えるべき機能的ベネフィットのひとつとして捉えている。

「21世紀のリーディングブランドになるには、サステナビリティを顧客価値とビジネスモデルに組み込んでいかなければならない。この時代において正しいことであり、企業にとっても正しい選択だ。これは消費者に求められて行うのではなく、企業が進んで行うべきだ」とKOHLERのマーケティングディレクターは話した。

サステナビリティへの投資効果をどう測るか

3Mは25年以上前からサステナビリティ・ゴールを掲げており、目標も状況にあわせて見直してきた。2016年の目標は、顧客エンゲージメントやサプライチェーンの透明性を高め、従業員の能力開発に力を入れるといった目標を掲げている。目標ひとつひとつが、企業の説明責任と透明性に関連した内容となっている。

同社はサステナビリティ事業の投資利益率の測定に取り組んでいるが、いつも同じ問いにぶつかっているという。サステナビリティとは何か。どこからどこまでがサステナビリティなのか。何がサステナビリティでそうでないのか。

「サステナビリティが企業のビジネスモデルの一つの柱となっているのであれば、サステナビリティ事業の投資利益率は企業の投資利益率といえる」と3Mの担当者は話す。

ビジネスにおいて、社会的影響を正しく測定するということは、投資家や消費者への利益を測るということだ。

リスク低減は、サプライチェーンや製品イノベーションにどんな影響を及ぼすか

水まわりの製品をとり扱うKOHLERの担当者は、世界の水問題について話した。発展途上国は長年にわたり水不足の問題を抱え、米国西部でも水不足や水道の鉛汚染問題がある。KOHLERは米国内だけではなく発展途上国の水問題も解決しようと、長期的対策を行っている。同社は広い視点から水道システムについて考え、現在世界がかかえている環境リスクを低減する画期的な製品の開発に取り組んでいる。

サステナブルなサプライチェーンの開発に真剣に取り組みながら、同時に企業として支持や賛同を得るには、小売店、製造業者、効果測定、消費者心理の関係性を理解しなければならない。

顧客対応戦略ではなく、サステナビリティへの取り組みをサプライチェーン全体で行うことで、トリプル・ボトム・ラインの実質的な効果が期待できるようになる。