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国際

世界で最も持続可能な100社発表 米の金属リサイクルが1位に躍進 日本はリコーなど4社が入る

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カナダのメディア・投資調査会社『コーポレート・ナイツ』は18日、2023年の「世界で最もサステナブルな企業100社(グローバル100インデックス)」を発表した。売上高が10億ドル以上の上場企業約6000社から1位に選ばれたのは昨年15位だった米国の金属リサイクル、シュニッツァー・スチール・インダストリーズ。日本企業からは昨年のコニカミノルタ、エーザイ、積水化学工業に加え、リコーの4社がランクインした。 (井上美羽)

「グローバル100」とは、売上高10億米ドル以上の上場企業6000社以上を対象に、環境・社会・ガバナンス(ESG)などの観点から持続可能性を評価し、上位100社を選出しているもの。毎年のダボス会議に合わせて1月に発表されており、今年で19回目を迎えた。『コーポレート・ナイツ』によると、2005年の開始以来の総投資収益率は、2022年は全体としてやや下落したものの、世界の主要株で構成するMSCI全世界株指数(ACWI)が222.1%であるのに対し、グローバル100は270.7%を生み出した。

2022年の世界経済の情勢について、『コーポレート・ナイツ』は「ロシアのウクライナ戦争によってエネルギー価格が記録的に上昇し、世界が未曾有の気候変動に見舞われる中、企業にとって排出量の削減とサステナビリティへの強気な投資がかつてないほど重要になってきている」と解説。実際、エネルギー価格の上昇により石油・ガス会社は利益が急増しているが、今回のグローバル100にランクインした石油・ガス会社はフィンランドのネステだけだった。

トップ20

1位:シュニッツァー・スチール・インダストリーズ (米国、金属リサイクル)
2位:ヴェスタス・ウィンド・システムズ (デンマーク、機械)
3位:ブランブルズ (オーストラリア、コンテナ・ロジスティクス)
4位:ブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズ (バミューダ諸島、再生可能エネルギー)
5位:オートデスク (米国、ITサービス)
6位:エヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ (米国、機械)
7位:スタンテック (カナダ、コンサルタント・サービス)
7位:シュナイダーエレクトリック (フランス、産業コングロマリット)
8位:シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー (スペイン、再生可能エネルギー)
9位:台湾高速鉄道 (台湾、鉄道)
10位:ダッソー・システムズ (フランス、ITサービス)
12位:シンイー・ソーラー (中国、ソーラーパネル製造)
13位:オーステッド (デンマーク、発電)
14位:シムズ (オーストラリア、金属リサイクル)
15位:ブラジル銀行 (ブラジル、金融)
16位:ロックウール (デンマーク、製造)
17位:ジョンソンコントロールズ・インターナショナル (アイルランド、空調機器)
18位:クリスチャン・ハンセン (デンマーク、食品・飲料)
19位:コネ (フィンランド 、エレベーター製造)
20位:カスケイド (カナダ、パッケージ)

詳細

日本企業

50位 コニカミノルタ(電機メーカー)
53位 エーザイ(製薬)
80位 リコー(機器メーカー)
84位 積水化学工業(樹脂加工メーカー)

昨年のランキング

『コーポレート・ナイツ』のリサーチ・ディレクターであるラルフ・トリー氏は、原油価格の上昇が、自然エネルギー、スマートビル、電気自動車、その他循環型経済対策を含む気候ソリューションの成長を促していると説明。金属リサイクルのシュニッツァー・スチールが1位になったこともそれを裏付ける。「グローバル100の企業は、サステナビリティへの移行に必要な製品やサービスを提供しており、21世紀の新興国経済の基盤を形成している。彼らはここ数年の激動の年を通じて、市場を凌駕してきた」とトリー氏は話す。

より広範な他のベンチマークの優良株では持続可能な収益が総収入のうちわずか5%である一方で、Global100の企業は、半分の割合を占めるようになった。炭素排出量1トンにおける収益は、Global100企業はACWI企業の33倍となっている。

しかし、炭素、エネルギー、水、その他の環境パフォーマンス指標の生産性スコアの向上は多くの場合、電化、エネルギー効率、デジタル化の進展など根底にあるメガトレンドがもたらす付随的な影響であることが多い。その一方で、持続可能な収益と投資の改善は、一般的により慎重な企業の投資方針と戦略的な意思決定の結果だとトリー氏は言う。 「多くの場合、先見の明のあるCEOのリーダーシップがあり、会社は世界が向かう方向とそれを先取りする方法について明確な見解を持っている」。

とはいえ、サステナビリティを推進する企業のリーダーたちが課題を抱えていないわけではない。ヨーロッパのエネルギー危機に直面して、デンマーク政府は2020年のグローバル100トップ企業である風力発電大手のオーステッドに対し、石油と石炭を燃料とする発電所3基の停止を延期するよう命じた。オーステッドは声明で「我々は社会として、ガス、石油、石炭の使用をできるだけ早く段階的に廃止する必要があると今も考えているが、欧州はエネルギー危機の真っ只中にあり、その中ではもちろん電力供給の確保に最大限貢献するつもりだ」と述べている。

日本企業で今回ランクインしたリコーは、環境配慮製品の売り上げ比率の上昇、役員報酬へのサステナビリティ指標の導入、再生可能エネルギー導入の推進など気候変動対策に向けて政府と協力してリーダーシップを発揮する取り組みが評価された。

CEOと一般労働者の給与の差などランク外企業も追い上げ

一方、グローバル100以外の企業も追い上げを始めている。100にランクインした企業の取締役会の平均的な性別の多様性は34%とわずかに上昇したが、ランク外となった6000社の他の企業でも全体として23%から32%に急増している。人種的多様性については、取締役会ではほとんど改善されていないが、経営陣ではわずかに改善されている。納税額の比率ではグローバル100企業とACWI企業が拮抗し、CEOと一般労働者の給与の差はACWI企業の方がわずかに小さい。

国別では、グローバル100企業の5分の1が米国を拠点としており、カナダの11%がそれに続く。しかし地域別では、ヨーロッパが44%と依然としてトップであり、アジア太平洋地域は22%にとどまる。

業種別では、情報技術(20%)、金融サービス(15%)が引き続き上位を占める。今回のランキングでは特に、イタリアの銀行であるインテサ・サンパオロが目立った。持続可能な社会的・環境的融資への露出の拡大と情報開示の充実により、持続可能な収益比率が234%という大幅な上昇を記録したのだ。

COVID-19の流行を受けて、メルク、ファイザー、ノババックス、ギリアド・サイエンシズなど、多くの製薬グループが新たにインデックスに加わった。また、中国の電気自動車メーカーNIOと、その同系列で電動アシスト自転車を製造するYadea、台湾からは自転車メーカーのGiantと台湾高速鉄道の2社が新規参入した。トリー氏は、これらの企業の参入は、各地域の企業のESG要因に関する報告の向上を反映したものだと述べている。

コーポレート・ナイツは、新しい企業をインデックスに加える一方で、さまざまな理由で他の企業を除外している。例えば、米国のチップメーカーであるアナログ・デバイセズは、エネルギー、炭素、水、廃棄物の生産性が着実に悪化しており、CEOの給与と一般従業員の給与の格差が2020年から2倍になったため、グローバル100から脱落した。

また、電池・電気自動車メーカーのBYDも、自動車・トラック製造部門の競争激化により全体的なパフォーマンスは向上したが、指数からは脱落。コーポレート・ナイツのデータ・プールが大幅に増えたため、グローバル100に入るのは以前より難しくなっている。

これまでと同様、グローバル100の評価方法は今年、役員報酬面など多くの分野で改良された。しかし、全体の特徴は、2005年の指数開始以来変わっていない。持続可能な企業は、人々や地球にとってより良いだけでなく、最も困難な時代において財務的にもより有利なのだ。

評価方法

ランキングの調査対象は、総売上高10億ドル以上の上場企業約6000社。企業が開示する財務報告書やサステナビリティ報告書、ウェブサイトの情報をもとに25のKPI(重要業績評価指標)から各社を評価している。

評価指標に含まれるのは、エネルギー生産性、温室効果ガス排出量、水生産性、廃棄物生産性、揮発性有機化合物生産性、窒素酸化物生産性、硫黄酸化物生産性、微小粒子状物質生産性、クリーンな収益(コーポレート・ナイツのクリーン・エコノミー・タクソノミーに基づき「クリーン」と分類される、環境・社会への貢献度の高い製品やサービスから得た収益)の割合、クリーンな投資(同タクソノミーに基づき「クリーン」と分類されるR&D、設備投資、買収など)の割合、負傷者、死者数、離職率、有給病気休暇、CEOの報酬と従業員の平均報酬の比率、サステナビリティ目標と連動した役員報酬制度、男性以外の執行役・取締役の割合、執行役・取締役の人種多様性、サプライヤーのサステナビリティ・スコア、納税率、企業年金の質、罰金・違約金などの制裁。
今年度から新たに政治的影響力が指標項目に追加された。

井上美羽 (いのうえ・みう)
埼玉と愛媛の2拠点生活を送るフリーライター。都会より田舎派。学生時代のオランダでの留学を経て環境とビジネスの両立の可能性を感じる。現在はサステイナブル・レストラン協会の活動に携わりながら、食を中心としたサステナブルな取り組みや人を発信している。