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国際

3人に1人が極端な高温に直面する国に住み、4人に1人が高い頻度で熱波にさらされている――COP27前にユニセフが深刻な報告

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2022 年 5 月 24 日、ソマリアでキャンプの仮設住宅に水を運ぶ10 歳の少女© UNICEF/UN0644298/ファゼル

11月6日からエジプト・シャルムエルシェイクで開かれるCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)を前に、気候変動による熱波のリスクが世界の子どもたちに与える影響について、ユニセフ(国連児童基金)が新たな調査結果を発表した。それによると、3人に1人の子どもが極端な高温に直面する国に住み、4人に1人が高い頻度で発生する熱波にさらされるなど、すでに子どもたちへの影響は増大している。予測では今後も状況は悪化する一方で、ユニセフは、各国政府が世界の気温上昇を1.5度に抑え、途上国への「適応資金」を2025年までに倍増させることがなければ、今後30年間で「より多くの子どもたちがより長期間、より気温が高く、より頻繁な熱波の影響を受ける」と警鐘を鳴らしている。(廣末智子)

世界の子どもの23%、5億3800万人が長期にわたる熱波の影響を受けている

「The Coldest Year Of The Rest Of Their Lives:Protecting Children From The Escalating Impacts Of Heatwaves(残りの人生で最も寒い年:熱波の影響から子どもたちを守る)」と題した報告書は、すでに、世界の子どもの23%にあたる5億3800万人が長期にわたる熱波の影響を受けている、と指摘。

さらにこの数字は、2050年時点の気温上昇が温室効果ガスの低排出シナリオによって想定される1.7度の場合は16億人、高排出シナリオによる2.4度の場合には19億人にまで増加することが予測され、「どちらのシナリオに行き着いても、世界の20億2000万人すべての子どもたちが2050年までに高頻度で発生する熱波にさらされる」という。

数百万人以上の子どもが過酷な熱波と極端な高温の影響受ける可能性も

2021年、インドの小学校で水栓を使用する子どもたち© UNICEF/UN0459922/カウル

現在、極端な高温にさらされる子どもの数が最も多いカテゴリーに分類されているのは23カ国。これが低排出シナリオの場合、2050年までに33カ国に、高排出シナリオの場合は36カ国に増加する見込みで、どちらのシナリオでも最多のカテゴリーにとどまるとされる国には、ブルキナファソ、チャド、マリ、ニジェール、スーダン、イラク、サウジアラビア、インドの名前が挙がっている。

また地球温暖化の進行度合いによっては、数百万人以上の子どもたちが、過酷な熱波と極端な高温の両方の影響を受ける可能性があり、特に欧州の子どもたちは過酷な熱波の最も劇的な増加に直面し、アフリカとアジアの子どもたちの約半数が2050年までに極端な高温に持続的にさらされるリスクが高いという。

報告書は、当然のことながら、大人に比べて体温調節がうまくできない子どもは、熱波にさらされると特に大きなダメージを受けると強調。熱波にさらされればさらされるほど、慢性呼吸器疾患や喘息、循環器疾患などの健康障がいを引き起こす可能性が高く、赤ちゃんや幼児は死亡のリスクが最も高いことから、「熱波は子どもたちへの環境、安全、栄養、水へのアクセス、教育や将来の生計にも影響を及ぼしかねない」としている。

報告書の定義する言葉の意味は次の通り。
熱波(Heatwaves)=3日以上の期間、各日の最高気温が現地の15日平均気温の上位10%に入る
高頻度で発生する熱波(High heatwaves frequency)=年間平均4.5回以上の熱波が発生する
長期にわたる熱波(High heatwave duration)=熱波が平均して4.7日以上続く
過酷な熱波(High heatwave severity)=熱波の平均温度が地域の15日平均気温より2度以上高い
極端な高温(Extreme high temperature)==35度を超える日が年間平均で83.54日以上ある

「緊急かつ大幅な排出削減と適応策の実行」 COP27で決断を

こうした現状と予測を受けて、報告書は、「世界の指導者たちは世界中の子どもたち、特に最も影響を受けた地域の最も弱い立場にある子どもたちのために、COP27で『緊急かつ大幅な排出削減と適応策の実行』を決断しなければならない。早急に行動を起こさない限り、すでに厳しくなることが予想されている熱波が、さらに過酷になる」と警告。その上でユニセフとしてCOP27の場で各国政府に求める内容として、以下の4つを提言している。

適応に関する決定においては、子どもと子どもが持つ権利を優先する
すべての国が水と衛生、保健、教育、栄養、社会的保護、子どもの保護といった社会サービスを適応させ、食料システムは災害に耐え、健康を保つ食生活を継続できるよう強化し、子どもや母親、社会的弱者の深刻な栄養不良を早期に予防、発見、治療するための投資を拡大する必要がある。

「気候エンパワーメントのためのアクション」を採択し、各国が若者の能力育成に関する公約を実施する
すべての国が、子どもや若者に気候変動教育、災害リスク軽減教育、グリーンスキルの研修、気候政策立案過程への有意義な参加の機会を提供し、気候変動が起きている世界で生活するための準備を子どもたちができるようにする。

気候ファイナンスと気候資源において、子どもと若者を優先させる
先進国は、2030年までに少なくとも年間3000億米ドルの適応資金を提供するためのステップとして、2025年までに適応資金を最低でも年間400億米ドルに倍増させるというCOP26での合意を実現し、適応資金が気候ファイナンス全体の半分を占めるようにしなければならない。

温室効果ガス排出量の大幅削減によって気候災害を防ぎ、気温上昇を1.5度以内に抑える目標を守る
排出量はこの10年で14%増加すると予測されており、破滅的な地球温暖化への道を進んでいる。すべての政府はより高い目標とより良い行動のために、国の気候計画と政策を見直し、2030年までに排出量を少なくとも45%削減しなければならない。

今回のCOP27は、温暖化の悪影響に脆弱なアフリカで実施され、ホスト国がエジプトであることからも、気候変動によって破壊的な損失を被っている途上国に対する対策や救済を意味する「損失と損害(ロス&ダメージ=ロスダメ)」の議論が大きなテーマになるとされる。中でも「適応資金」の2025年までの倍増を含め、先進国から途上国に対し、ロスダメに特化した資金援助が確約されるかどうかは大きなポイントになりそうだ。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年10月からSustainable Brands Japan編集局デスク兼記者に。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。