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デンマーク

デンマーク、2030年までにCO2を7割削減「新気候変動適応法」に合意

デンマークは12月6日、与野党含め大多数で歴史的な「新気候変動適応法」に合意した。これは2030年までにCO2排出量を1990年比70%削減、2050年までにカーボンニュートラルにするというもので、「世界でも最も野心的な気候変動適応法」とデンマークのヨルゲンセン気候大臣は話す。デンマークは90年代から風力発電に注力し、周辺諸国との送電連系の構築にも力を入れ、2018年には電源構成の6割以上を自然エネルギーが占める。あと10年で7割を削減するという野心的目標の背景は、日本との違いはどのようなところにあるのか、デンマーク在住のジャーナリストに聞いた。(環境ライター 箕輪弥生)

政党が変わってもエネルギー政策は揺るがない

コペンハーデンでは自転車通勤が4割以上。自転車利用の推進もCO2削減のための戦略だ (筆者撮影)

デンマーク政府は、2030年までにCO2排出量を70%削減するという目標を達成するために、気候評議会が毎年専門的な評価を行い、気候行動に関する年次勧告を行うこと、毎年9月に、大臣は気候変動プログラムを発表するなど、実行のためのきめ細かい行動計画を示している。

今回の決定は、政策の異なる与野党が議論した上での合意だが、デンマークではこういった大きなエネルギー政策の方向性や気候変動に関する政策は、政党が変わっても維持されていくことが多い。

日本では政党が変わると、エネルギー政策なども大きく転換されることがあるが、デンマークでは政策の違いがあっても合意ができるのは何故なのだろうか。

これについて、デンマーク在住の環境政策に詳しいジャーナリスト、ニールセン北村朋子さんは「デンマークでは長年、一党独裁政治のような環境ではなく、常に複数政党が連立を組んで政権を担っていく体制なので、政策についても広くコンセンサスをとり、合意していく手法をとります」と話す。

「だから、エネルギー政策に関しても、議論を重ねた上でコンセンサスをとり、今の時点で最善の政策を決定しますが、民主主義は常に完璧ではないので、数年後の見直しも必ず行います。設定したゴールそのものは変えず、それに従って政策を進めていくという考え方が根付いているのです」と分析する。

教育やメディアを通じて、気候変動への危機感を市民が共有

コペンハーゲンでは地域熱供給は98%まで普及している (筆者撮影)

さかのぼるとデンマークは1970年代、日本と同様に中東への石油依存率が大きく、オイルショックを経験した。ここから日本は原子力発電へかじを切るが、これに対してデンマークは1980年代半ばには原子力発電所を将来にわたって建設しないことを決め、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーにシフトし、熱電供給のコージェネレーションの導入を広げていく。

CO2を削減しながら経済成長する「デカップリング」を実現しているデンマークの成功要因として、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行と、熱の徹底的な活用によるところが大きい。

同国は、2018年には62%を再生可能エネルギーで発電するが、2030年までに電源の100%、エネルギー消費全体の55%を再生可能エネルギーで充当するという目標を掲げている。

これらの目標や「気候変動対応法」に対応するため、デンマークの送電網、送ガス網を管理する独立公営企業energinet.dkは2020年から2050年に向けての戦略として「セクター間を超え、社会全体で再生可能エネルギーを活用していく」期間と位置づけた。そのために1) セクターカップリング、2) 大規模洋上風力発電、3) 市況に見合った太陽光および風力発電、4)社会とのコラボレーション、の4つの方向性をあげている。

「セクターカップリング」とは部門を超えたエネルギー需給構造の最適化のことを言い、電力、熱、交通、産業などの異なる部門(セクター)を統合し、エネルギーを融通しあうことを示す。

いまだに石炭火力発電や原子力発電をベースロード電源と位置付ける日本のエネルギー政策とは全く次元の異なるステージで、現実的なカーボンニュートラルに向けて野心的に戦術を積み上げているのがデンマークなのだ。

「あと10年で70%のCO2削減」「2050年に化石燃料からの脱却」という目標は日本の現状から考えると、ある意味遠い未来の話のようだが、デンマークがこのような野心的な目標を現実的に考え実行に移すことができる背景に日本とどのような違いがあるからなのだろうか。

これについてニールセン北村さんは「教育やメディアを通じて、気候変動における危機感の共有がなされているので、国としてどのように考え、アクションにつなげるのかの大きな部分のコンセンサスが社会的に取れている」と話す。

特に教育については「国内と世界の現状を知ること、自ら正確な情報を得るためのリテラシー(適切に理解し活用する能力)について学ぶこと、様々な考え方について議論し、その時に出しうる最良の着地点を見つける練習を学校や社会の学びの中でし続けること、民主主義を大いに活用することによって、世の中は市民の手によって変えられるということを教え、実践し、成功体験を重ねてきていることが大きいと思います」と解説した。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・マーケティングプランナー・NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて「節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/