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アメリカ

グーグル、軍用ドローンへのAI提供に抗議し一斉退社

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グーグルのサンダー・ピチャイCEO

米グーグルで14日、同社が2月末に発表した米国防総省の軍事事業「プロジェクトメイブン」へのAI技術提供に抗議し社員12人程度が退社、さらに約4000人の社員が国防総省との契約を破棄するよう証明した嘆願書を会社に提出したことが分かった。米専門サイトであるギズモードの報道によると、社員らは退社理由として、社員への説明責任を十分に果たさない経営幹部の不透明な姿勢と社員の反対意見に耳を傾けない姿勢などを挙げているという。(オルタナ編集部=小松 遥香)

同社の社員による抗議行動が明らかになったのは先月初旬。4月初旬には、すでに上席エンジニアを含むグーグル社員3100人が「プロジェクトメイブン」への参画に抗議し、同社のサンダー・ピチャイCEOに嘆願書を出している。

社員は嘆願書で、同事業への参画を直ちに取り止め、グーグルとその契約者は軍事技術の構築に寄与しないとする方針を掲げるよう要求。同書面には「プロジェクトメイブン」への参画は、グーグルブランドを壊滅的に毀損することになるとの懸念も記されている。

「プロジェクトメイブン」は、軍用ドローンで撮影した画像の解析スピードを上げることを目的にしている。グーグルの広報部は、軍事利用の可能性を否定しているものの、同社がAI技術を提供するのは無償で公開されるオープンソースソフトウェア。そのため、国防総省が軍事利用することも可能で、無人偵察機による攻撃にも転用される可能性があると見られている。

無人偵察機による攻撃は、命の重さが適切に認識されないなどの倫理的な問題があるだけでなく、無人偵察機を操作する兵士が無数の殺人に対して無感覚になることでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するなどの問題も起きている。今回、退社を決めた一部の社員も「戦場での殺人という非人道的行為は、アルゴリズムではなく人間が責任を負うべきだ」と、倫理的な問題を退社理由に挙げていると報じられている。

グーグルは元々、社員の声を積極的に取り入れる企業文化を持ち、経営や製品、方針に関して社員が自由に意見を言える社内ネットワークの仕組みもある。しかし退社する社員らは、以前のグーグルに比べ、経営幹部が社員の声を聞き入れない姿勢に失望したと明かしている。

グーグルの「プロジェクトメイブン」への参画に反対する動きは、社内に留まらない。技術労働者連合(the Tech Workers Coalition)は4月、グーグルに「プロジェクトメイブン」に参画しないよう抗議するとともに、IBMやアマゾンなどが今後、国防総省と協働しないよう要求している。

5月14日には、AIやコンピューターサイエンス、倫理などの分野の学者90人以上が公開書簡を発表し、グーグルに「プロジェクトメイブン」からの撤退を求め、AIが自ら標的を判断する自律型致死兵器システム(LAWS)を禁止する国際法を支援するよう求めている。そのうちの一人、英ランカスター大学社会学部でサイエンス・テクノロジーの人類学を教えるルーシー・サッチマン教授は、「グーグルが『プロジェクトメイブン』に参画することで、完全自律型致死兵器の技術発展を加速させることになるだろう」と警鐘を鳴らしている。

グーグル幹部らは「プロジェクトメイブン」への参画について従業員への説明も行い、ディベートや議論の時間も設けてきたが、今回の一斉退社を避けることはできなかった。今後のグーグルの対応と各ステークホルダーの動きが注目される。

小松 遥香(こまつ・はるか)

オルタナ編集部 。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。