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国際

「持続可能なカカオ栽培を」高級仏菓子シェフ団体が支援

カカオの実 ©Sylvain Renou

このままではチョコレートづくりのためのカカオが危ないーー。高級仏菓子シェフ団体「ルレ・デセール」が、持続可能なカカオ栽培を支援する活動を始めた。フランスを中心に20カ国に加盟者がおり、農学者や農業研究発展国際協力センター(CIRAD)、現地の農業指導員と協力し、まずドミニカ共和国で、農家の生活安定と高品質なオーガニックカカオの供給体制作りをめざす。(羽生のり子)

ルレ・デセールは、パティシエ・ショコラティエの質の向上と連帯を目的に、情報交換やスタディツアーを行う団体だ。カカオ栽培支援プロジェクト「カカオ・フォレスト」はドミニカ共和国で実験栽培中で、2018年から本格的に始まる。

技術面で協力する農学者のピエール・コスト氏に、10月末にパリで開催された「サロン・デュ・ショコラ」会場で話を聞いた。

ピエール・コスト氏(サロン・デュ・ショコラ会場で、筆者撮影)

コスト氏は、カカオ・フォレストを始めた理由をこう説明する。

「伝統的なカカオ栽培はアグロフォレストリー(森林農業)で、果樹などをカカオと一緒に植えます、農家は小規模で、大規模なカカオ単一栽培に比べると生産性も収入も低い。そのため若い人が継ぎたがらず、農家が高齢化しています。彼らが止めたら、小さな栽培地を集約して単一栽培を始める企業が出てくるでしょう。アグロフォレストリーのカカオ栽培を維持するには、農家が食べていける持続可能なシステムを作ることが必要です。これまで、果実は自家消費し、市場に出していなかった。カカオ・フォレストでは、収入をカカオに頼るのではなく、一緒に植えた木の果実や木材を地元の市場で売って収入が安定するようにと考えています」

植える木は在来種の中から、現地の農業研究所、農業指導者、農家が一緒に考えて選ぶ。オレンジ、アボガド、建築材料に使える木などが候補に挙がっている。

「今、カカオ栽培の見直しが世界中で行われていますが、農薬と化学肥料を使い、カカオだけを作る単一栽培の方向に向かっています。コートジボワールなどがそうです。それでは土地が疲弊し、長期的にみて質の良いカカオがとれない。私たちは有機栽培・アグロフォレストリーで、小規模農家を保つことが、環境に配慮し、質の良いカカオを作る道だと考えます」。アグロフォレストリーでは木が影を作ってカカオを守ってくれるうえ、害虫も予防できる。

ルレ・デセールのフレデリック・カッセル会長は「巨人(集約的単一栽培)に対する小さな抵抗(アグロフォレストリー)かもしれないが、このプロジェクトに参加し、結果を出すことが大切だと思う」と言い、副会長の一人、ピエール・エルメ氏は「私たちは職人、商業者、経営者として責任を果たさなければならない」と表明している。カカオ・フォレストのほか、果実や木材を地元の市場に出すための調査をする国際NGO「ザ・フォレスト・トラスト(TFT)」など8団体が資金・技術面で支援する。

ドミニカ共和国の次はペルーだ。「技術的にも経済的にもサステナブルなカカオ栽培で、カカオ業界にイノベーションをもたらしたい」とコスト氏は意気込みを語った。

羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。