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国際

世界の現代奴隷4030万人、7割が女性

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© Lisa Kristine from page6 of "Global Estimates of Modern Slavery:forced labour and forced marriage"

ILO(国際労働機関)と豪NGO「ウォーク・フリー・ファンデーション」が発表した最新の調査で、強制労働や強制結婚などの被害者である「現代奴隷」の数が世界で4000万人を超えることが分かった。全体の71%が成人女性もしくは女児で、25%は子どもだった。今回の調査から現代奴隷の定義に強制結婚も含まれることになり、前回2012年にILOが発表した調査結果の2100万人から全体数が大幅に増加した。 (オルタナ編集部=小松 遥香)

今月19日に発表された最新の調査は、48カ国の約7万1000人を対象に行われたものだ。現代の奴隷とは、暴力や脅し、権力の乱用などによって搾取から逃れられない状況におかれている人々のことを指す。この調査では、現代の奴隷を強制労働と強制結婚に大きく分けており、強制労働には成人や子どもの性的搾取も含まれる。

推定される4030万人の現代奴隷のうち強制労働の被害者は約2490万人、強制結婚の被害者は約1540万人だった。この数は世界の成人1000人あたり5.9人、世界の子ども1000人あたり4.4人が現代奴隷の被害にあっていることを示している。

また、強制労働の被害者のうち女性は全体の58%で男性を上回っていた。男女問わず強制労働の要因で最も多かったのは、借金が理由の拘束だった。こうした強制労働の被害者は、家庭内や建設現場、工場、農業、漁業での労働を強制させられている。

地域別に現代奴隷の割合をみると、アジア太平洋地域に最大の62%いると予測され、次いでアフリカが23%、ヨーロッパ・中央アジアが9%、アメリカ大陸が5%、アラブ諸国が1%だった。強制労働の割合はアジア太平洋地域が1000人あたり4人と最も高く、次いでヨーロッパ・中央アジア(3.6人)。一方、強制結婚の割合はアフリカが1000人あたり4.8人と最も高く、次いでアジア太平洋地域(2人)だった。

この調査結果を受けて、ILOのガイ・ライダー事務局長は「この問題の解決に早急に努めなければ、SDGsの目標8.7を達成することはできない。今回の調査結果は、強制労働および児童労働問題を解決するための変容を生み出すものになるだろう」と述べた。

欧州で進む現代奴隷への対策

下田屋毅・サステイナビジョン代表取締役

現代の奴隷に関しては、英国で2015年に「現代奴隷法」が施行されている。欧州の現代奴隷やCSRに詳しいコンサルタントの下田屋毅・サステイナビジョン代表取締役によると、英国では現代奴隷法が施行されて以降、企業はサプライチェーン上で現代の奴隷を発見する仕組みを備えることが推奨され、それを公表することが義務付けられている。さらには、こうした流れがフランス、オランダやスイスにも広がっており、そうした国々で活動を行っている企業はその国の法律に沿って活動をしなければならないという。

下田屋氏は、「日本の企業も含め、自社のサプライチェーン上においてこの現代の奴隷がないかどうかを確認する仕組みを備えることが求められており、それらが見せかけだけでなく機能するものでなければ、企業はそれだけリスクを抱えることになる」と話す。

そして、日本国内の問題についても触れ、「日本では外国人技能実習制度が活用されているが、米国務省が年次発行している人身取引報告書で、この技能実習制度が現代の奴隷制を助長しているとの報告もされている。企業のサプライチェーン上で技能実習生が適正な労働環境にいるか確認するとともに推進していく必要がある」と警鐘を鳴らした。

小松 遥香(こまつ・はるか)

オルタナ編集部 。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。