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46号 世界のソーシャル・ビジネス(ニュージーランド) ウール製の靴は快適でサステナブル

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ウールは、水分を吸収、蒸発させ、身に着ける者の体温を調整し、冬は温かく夏は涼しい。だが、なぜウールの靴はないのか。こう考えた元プロサッカー選手のティム・ブラウンさんは、サステナブルな靴を製作・販売するオールバーズ社を設立。ウールの極細の繊維から強度のある布地を作ることに成功した。
(ニュープリマス=クローディアー真理)

オールバーズのスニーカーのアッパーなどに使われているのは、ニュージーランドのメリノ・ウール産業の振興を図るための組織、ニュージーランド・メリノ・カンパニー・リミテッド認定の「ZQメリノ」。この認証は、動物福祉、勤務者の待遇、環境保全、周辺コミュニティーへの貢献を実践する牧場で生育された羊の毛であることを示す。

オールバーズは人工素材を使う多くのスニーカーに比べ、カーボンフットプリントを60%削減することに成功。靴用の生地は、欧州で唯一、欧州委員会からサステナビリティの認証を受けた毛織物工場で織られている。

中敷きには、生物分解が可能なバイオ素材「オーソライト」が用いられている。オーソライトに含まれているトウゴマの種子から採れるヒマシ油は、米国グリーンビル協会から、「時間をかけずに再生が可能」と有望視されている素材だ。少しでも長く履いてもらおうと、中敷きは別売りされ、取り替えがきく。

米タイム誌で、「世界で最も履き心地が良い靴」と評されたオールバーズの靴
オールバーズ創設者のティム・ブラウンさん(左)とジョーイ・ズウィリンジャーさん

使用後は困窮者へ

同社のサステナビリティを追求する姿勢は靴の仕様だけに留まらない。例えば、商品を送付する際に使う包装材。オールバーズの靴はネット販売されており、靴の箱は梱包箱も兼ね、その95%がリサイクル段ボール製だ。通常より素材の量が40%少なくて済むため、現在特許を申請している。もちろん、使用後は100%リサイクルが可能だ。

今年3月に販売を開始したばかりとはいえ、使用後の策もすでに講じられている。オールバーズ側が送料負担の上、顧客から引き取った使用済の靴を、米国の非営利団体、ソールズ・フォー・ソウルズに寄付することが決まっている。そこを通して靴は米国全土と世界127カ国の困窮者に配布される。

2014年初め、クラウドファンディングで始まったウール製の靴作りは、米国の投資家にその将来性を見出され、翌年10月には、米国のサンフランシスコに拠点を移した。販売価格は1足158NZドル(約1万2千円)だが、質を考えれば、決して高くはない。現在は米国とニュージーランドで販売されている。すでに初年度の売り上げ見込みを上回った。

ティムさんは、製靴業界では見向きもされなかった、ウール以外の天然素材を靴の材料に取り入れようと意欲的だ。