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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

荷主と顧客、運送事業者が協力し、商品配送時のCO2排出量削減――ユーグレナと佐川急便、「カーボンインセット」活用

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佐川急便のトラックに「サステオ」を給油している様子

ユーグレナ(東京・港) と佐川急便(京都市)はこのほど、トラック約100台で計約8000リットルのバイオディーゼルを使用した配送を通じて、従来の軽油と比較して、樹齢40年のスギが1カ月に吸収できるCO2の5500本に相当する4.11トンの排出量削減を達成した、と発表した。サプライチェーン上のステークホルダーと連携してCO2排出量を削減する「カーボンインセット」の仕組みを活用したもので、ユーグレナの通販の利用者にバイオ燃料導入に伴うコストの一部負担を呼びかけ、集まった金額と同額を、各社がそれぞれ拠出した。2社によると、荷主と運送事業者と顧客の3者が協力して商品配送時の環境対策に取り組んだプロジェクトは国内初という。(廣末智子)

燃料に用いたのは、食料との競合や森林破壊といった問題を起こさない持続可能性に優れたバイオマス原料からつくられた、ユーグレナ製の次世代バイオディーゼル「サステオ」。ユーグレナによると、サステオは、分子構造が石油由来の軽油と同じ炭化水素のため、軽油を使用する機械や車両にそのまま利用することができる。このため同社は、通販における配送にこれを用いることで、「持続可能な社会の実現に向けて温室効果ガスの排出量削減に取り組む」として佐川急便と連携を進めるとともに、「環境対策は社会全体で解決すべき課題である」とする認識のもと、ユーグレナの公式サイトで通販を利用する個人を対象に一口1000円で協力金を募っていた。

協力金は、昨年6月から12月までの半年で845口分の84万5000円が集まった。これに2社が同額を拠出し、9月から今年4月にかけて計253万5000円をサステオの導入費用に充て、佐川急便浜松営業所のトラック延べ約100台で計約8000リットルを使用した。これによって、従来の軽油使用時に比べ、樹齢40年のスギが1カ月に吸収できるCO2量の約5500本分に相当する4.11トンのCO2排出量を削減したという。

なお、この排出削減効果について、佐川急便は、一般財団法人「日本海事協会」の検証を受けることで透明性と公平性を確保した報告書を、ユーグレナ宛てに発行している。

ユーグレナによる、3者協力プロジェクトのイメージ図

今回、2社が活用したカーボンインセットとは、自社のサプライチェーン上で関係するステークホルダーが連携し、CO2排出量を削減する仕組みを指す。自社のサプライチェーンでのCO2排出が難しい場合に、自社の事業活動以外の場所からカーボンクレジットを購入することで、自社の排出量を相殺するカーボンオフセットとは違い、サプライチェーン内で取り組むことで、これに関わるステークホルダー全員が排出量削減に対する価値を共有することができ、地域社会に対してもよりポジティブな影響を与えることが期待される。

ユーグレナによると、配送時のCO2排出量削減に向け、通販の利用者自身が一部コストを負担することについて、利用者からは予想以上に高い理解が得られ、協力金を寄せてくれた顧客の10%以上が、新規の顧客だった。プロジェクトについて、「配送の環境負荷について考えるきっかけになった」「ユーグレナらしい取り組みだと思った」といった評価も聞かれたという。

同事業の継続については現時点で決まっていないが、ユーグレナの広報担当者は、「今後も、商品の配送において、運送業者のみがバイオ燃料のコストを負担するのでなく、商品の購入者と発送側が共に負担するという選択肢をつくっていきたい。佐川急便ともパートナーとして何かしらの取り組みをご一緒できると思っている」と話している。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年10月からSustainable Brands Japan 編集局デスク 兼 記者に。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。