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ネットゼロ達成へ求められる企業の責任――科学に基づいた信頼性の高い目標を設定し、真摯に発信を

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SB国際会議2024東京・丸の内

Day2 プレナリー

パトリック・ビュルギ・South Pole Japan 代表取締役

ネットゼロ達成に向けて各企業の取り組みが不可欠となる中、鍵となるのは、科学に基づいた信用性の高い目標を設定し、気候変動対策としてどのような投資を行い、どういった成果につなげているか、それらのすべてを真摯(しんし)に発信する姿勢だ。各国の気候変動対策プロジェクトや企業との連携を通し、世界の温室効果ガス削減をけん引するスイス発の企業、サウスポールの創業者の一人で、現在は日本での事業拡大に取り組むパトリック・ビュルギ氏が、実践的なアプローチを指南した。

2006年創業のサウスポールは世界の40カ所以上に拠点を構え、1200人以上のサステナビリティ・アドバイザーや科学者、エンジニアからなる多様な専門性を持ったチームで構成する。ビュルギ氏によると、「気候変動対策に特化した企業としてはおそらく世界最大規模」だ。

世界の気候変動対策についてビュルギ氏は、各国の政府が「約束したことをすべて、さらにそれ以上をやってくれる」楽観的なシナリオでさえ、2100年の世界の平均気温は産業革命前から1.8度上昇するとの予測を紹介。パリ協定の目標である1.5度以内に抑えるには、政府の政策だけでは不十分で、「民間企業によるさまざまなアクションが必要だ」と強調した。

そして企業が自発的な対策を取ることのメリットをビュルギ氏は、「早い段階から準備することで、規制に準拠するためのコストを節減できる」「環境意識の高い顧客にアピールできる」――など主に経済的側面から例示。その上で、サウスポールが毎年公表しているグローバル1400社への調査について報告した。それによると、83%の企業がネットゼロ目標をすでに設けており、その理由として46%が「顧客からの需要」、22%が「投資家からの圧力」と回答。一方で同社がデータベースを所有する7万7000社の実態を見ると、ネットゼロの目標を設定している企業はわずか8%に過ぎず、「大企業しか目標を設定していない」現実もあるという。

では日本企業はどうか。100社を対象とした調査から、ビュルギ氏は「より多くの企業が目標を設定し始めており、(グローバルと)似たようなトレンドが見られる」と分析。特徴としては、ネットゼロ達成のソリューションの上位を、再エネの利用や省エネなどの従来型が占める点に触れ、「比較的安いコストで実現できる、非常に理にかなったアプローチだ」と評価した。

講演資料より

ここで、ビュルギ氏は「2030年という短いスパン、そして2050年に何がしたいかということだけではなく、本当に信頼できる脱炭素化こそが必要だ」と力説し、気候変動対策に不可欠な5つのステップを提示。まずはサプライチェーンにおける排出量とそれに伴うリスクを「測定」し、それに基づいた短期、長期のロードマップなどの「目標を設定」、実際に排出量を「削減」する。この3つまで進むと、次は高品質なカーボンクレジットの購入などの「投資」を行い、最後はその成果を正直に「発信」する――と、順を追って説明した。

重要なのは取り組みの透明性に加えて、国際標準や枠組みを活用することで、ビュルギ氏は、「日本企業の言うネットゼロは、国際的なネットゼロの定義とは合っていない」とも指摘。グリーンウォッシュの批判を避けるためにも「世界のベストプラクティスを使っていかなければならない」と述べ、具体的には、昨年11月に発行された国際規格「ISO14068」の活用を勧めた。

長年の実績と知見を踏まえ、セッション参加者に実践的なアプローチを披露したビュルギ氏。最後は「気候変動は人類が直面している最大の課題だ。(気候変動対策は)今は負担としか見えていないかもしれないが、ソリューションの機会になるのだと考えてほしい。私たちの生活、人生がかかっている」と訴え、講演を締めくくった。(眞崎裕史)

眞崎裕史 (まっさき・ひろし)

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。2020年からフリーランスのライター・編集者として活動し、ウェブメディアなどに寄稿。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。