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SDGsが「主流化」した時代、競争優位を実現するサステナビリティ経営を――第6回未来まちづくりフォーラム

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第6回未来まちづくりフォーラム

カーボンニュートラルやDXといったさまざまな変革が求められる中で、世界共通言語であるSDGsがますます重要となってきている。そうした中、2030年の達成に向けて、政府のSDGs未来都市制度などまちづくりにおけるSDGsの活用が本格化している。「未来まちづくりフォーラム」は、SDGs活用によりまちづくりを促進し、各関係者が協働して価値を生み出すプラットフォームだ。今年6回目を迎えた本フォーラムは、サステナブル・ブランド国際会議2024東京・丸の内と同時開催され、内閣府地方創生担当大臣の自見はなこ氏から政府によるSDGsの推進、岡山県やさいたま市からはSDGsを活用したまちづくりについて講演があった。(横田伸治)

オープニング・トーク
自見はなこ・内閣府 地方創生大臣

フォーラムの冒頭、自見はなこ・内閣府地方創生大臣がビデオ登壇し、政府は2023年12月、中長期的な国家戦略であるSDGs実施指針を改定したと説明。「新しい資本主義の下、人への投資やGX・DXの推進を通じて持続可能な社会・経済システムを構築するという強い決意を示している」と述べた。

また時見氏は、SDGs達成に向けた、国内外の全てのステークホルダーとの連携や協働を強化していくため、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置し、約7400の民間企業や地方自治体が地域課題の解決に向けて取り組みを進めていること、また、地域のSDGs達成に向けて連携する金融機関と地方自治体に対して、「地方創生SDGs金融表彰」を実施していることを紹介した。

未来まちづくりフォーラムについては「自治体、民間企業、NPOなどが持続可能なまちづくりに向けて協働して新たな価値を生み出す場と承知しており、これまでの取り組みに敬意を表している」として、「SDGsの理念を通じた、地域の課題解決について意見を交わし、交流を通じて、地域活性化に向けた具体的な取り組みが全国に広がることを期待しています」とエールを送った。

オープニング・トーク
伊原木隆太・岡山県 知事

続いて、伊原木隆太・岡山県知事もビデオで登壇し、2024年9月下旬から約2カ月間、岡山県北部を中心とする12の市町村で開催する「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の概要を紹介した。

同芸術祭を開催することで、人口減少・高齢化が進んでいる県北部の活性化に向け、アートを切り口として観光・地域振興につなげるという。伊原木知事は「中国山地の自然や旧街道の街並みなど、瀬戸内海沿岸部とは異なる地域資源を活用し、岡山ならではの国際芸術祭とする。まだ知られていない県北部の魅力を発信したい」と意気込みを明かした。

また、金沢21世紀美術館の長谷川祐子館長をアートディレクターに迎え、多様性と豊かさの象徴として「森」をテーマに据えた。出演するアーティストは、料理を振る舞うパフォーマンスで知られるリクリット・ティラヴァニ氏や、俳優・ダンサーとして知られる森山未來氏など約30組を予定している。伊原木知事は「ぜひお越しいただき、エコロジーやSDGsの視点を取り入れた新しい芸術祭を体験してほしい」と呼びかけた。

キーノート・トーク
笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム 実行委員長、千葉商科大学 教授 サステナビリティ研究所長

笹谷実行委員長は、「サステナビリティ時代にどう競争優位を実現するか―ポストSDGsに向けて」と題して講演し、「SDGsとは何か。なぜ世界共通言語なのか」と会場に問いかけた。「複数形の『S』がついているのは、個別の目標をつまみ食いされないためだ。そして、浸透している共通言語を使わない手はない。ビジネスを発展させるためのゴールであり、ツールでもある」とSDGsを定義した。

笹谷氏が提示するキーワードは「協創力」だ。「協」は協働のプラットフォームを指す。共通言語としてのSDGs認知度が国内でも急速に浸透した現状を「主流化した」と表現し、秋田県が実施する「あきたSDGsアワード」を例に、「産官学金労言」の連携の重要性を説明した。「協創力」の「創」は企業が本業としてSDGsに取り組み、新たな価値を生むことだという。リスク(社会・環境課題)とチャンス(経済価値)の両面を取るCSVにより、他者との差別化を図り、競争優位を実現するサステナビリティ経営につながるという。

※「産官学」に金融界、労働界、言論界(マスコミ)を加えたもの

こうした取り組みが「力」を持つためには、企業がSDGsの表面的なゴールだけでなく各ターゲットに目を配り、SDGsウォッシュを避けながら重点施策を明確に定めることが必要になる。その支援策として、笹谷氏は、SDGsの17目標を横軸にしたマトリックス図に整理し、さらに169のターゲットを紐づけるSDGs経営支援ツール「笹谷マトリックスモデル」を紹介した。

「これらのポイントを踏まえれば、日本がSDGs先進国になることは夢ではない」と笹谷氏は断言。フォーラム参加者に向けて「ひとつでも、『私が取り組むものはこれだ』というものを見つけて、持ち帰ってほしい」と締めくくった。

キーノート・トーク
清水勇人・さいたま市 市長

さいたま市の清水市長は「SDGs未来都市の挑戦」と題し、同市の取り組みを紹介した。都心から30キロ圏内に位置し、新幹線6路線を含む交通結節点である同市は、14歳以下の転入超過数は2015年から9年連続で全国1位になるなど、現在も人口増加が続いているという。また、「市民一人ひとりがしあわせを実感できる都市」を理念に掲げており、親和性の高いSDGsへの取り組みを積極的に行っている。

同市は総合振興計画の中でSDGsの進捗管理を行い、強力に推進。総合振興計画の政策分野ごとに、関係の深いゴールを設定し、各取り組みの課題と関連性を明記している。さらに、四半期ごとに数値による進捗管理を実施し、1年ごとに各施策の実施計画も見直しているという。こうした取り組みにより、SDGsの観点から、各市区の取り組みがどれだけ「経済」「社会」「環境」のバランスが取れた地域の発展につながっているか評価する「全国市区SDGs先進度調査(日本経済新聞)」で、全国815市区のうち環境部門は1位を獲得した。

(講演資料より)

また、市・埼玉県の各種認証制度を横断する公民連携も先進的だ。企業がサステナブルな取り組みを打ち出した際、まずは市に対して宣言を行う「CS・SDGsパートナーズ」、次に取り組みを自己評価して登録する「埼玉県SDGsパートナー」、そして第三者による評価・認証を行う「さいたま市SDGs企業認証制度」と、企業の認証取得のステップアップを制度的に支援している。

※さいたま市における「CS」とは「Citizen Satisfaction」であり、市民満足度を表す

そのほか環境・経済・社会面での取り組みを披露した上で、清水市長は、同市で人口減少が始まると予測される2035年までの期間を「運命の10年間」と表現。「誰でも住みやすく、持続可能で、進化し続けられる年にしないといけない。市民の力を行政の“都市経営”にも取り込んで進めていきたい」と決意を語った。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。