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気候危機を止めるために2024年にできることを――若者ら日本政府のエネルギー政策見直しに意見反映求める

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気候危機を止めるため、市民や若者の声を可視化することが重要だ(出典:ワタシのミライより 「2024 気候危機を止めるために今年できること」)

日本のエネルギー政策の柱となる「エネルギー基本計画」の見直しが近づく中、エネルギー政策の意思決定に子どもや若者など幅広い市民の参加を実現しようと、日本でも若者を中心とする環境団体が声を上げている。昨年末のCOP28 (第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)では「今後約10年間で化石燃料からの脱却を加速する」ことで合意したが、若者たちはこれを見て何を感じ、日本はどう変わっていくべきだと考えているのか――。 Fridays For Future Japanなどでつくるネットワーク「ワタシのミライ」がこのほど「2024気候危機を止めるために今年できること!」と題して開いたシンポジウムから、参加団体の意見や取り組みを紹介する。(眞崎裕史)

COP27、28で連続「化石賞」の日本は、化石燃料からの脱却に足踏みをしている

日本のエネルギー基本計画は約3年に一度改定されている。最新の第6次エネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定されており、今年は第7次基本計画の策定に向けた議論が本格化するとみられる。これを受け、「ワタシのミライ」では今後、原発の再稼働や新増設、新型炉の開発を中止し、化石燃料自体からの脱却を目指すことを政府に求める考えだ。

COP28に現地で参加した国際環境NGO、350.org Japanの伊与田昌慶氏は、日本がCOP27に続いて「化石賞」に選ばれたことを、「日本のエネルギー対策技術が実はほとんど温暖化対策に役に立たないのに、アジア、国内で推し広げようとする一方で、今急がれる化石燃料からの脱却に足踏みをしているのが世界中の市民社会から批判を招いた」と分析する。

COP28では、今後約10年間で化石燃料から脱却することのほか、2030年までに再生可能エネルギーの設備容量を世界全体で3倍、省エネ改善率を2倍にすることで合意したが、伊与田氏は、日本で広く報道された「原発の発電容量を3倍に増加」という文言について、「米国や日本を含む一部の国が宣言しただけで、正式な合意文書には入っていない」と指摘。「世界全体のコンセンサスは原発を使うということにはなっておらず、むしろ原発の敗北が決定的になったと言えるのではないか」とした上で、「温暖化対策の中心的な方法は再エネと省エネだ。化石燃料からの脱却に向けて、政府任せではなく、市民の側から行動を起こしていくことが求められる」と強調した。

直近のエネルギー見直しのプロセスには、幅広く市民の声を聞く場がない

国際環境NGO FoE Japanの吉田明子氏は、第7次の議論が始められるようとしている、政府のエネルギー基本計画の見直しへの市民参加が、現状では実質的に最後のパブリックコメントに限られていると指摘する。

原発を巡っては、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の翌2012年には、原子力に批判的な立場の専門家やNGOも参加した審議会がつくられ、大々的な国民的議論の結果、「2030年代には原子力をゼロに」していくことが決められたが、3カ月後の政権交代で「原発ゼロ」の方針が白紙となった経緯がある。吉田氏によると、2021年(第6次)を含めて直近のエネルギー基本計画の見直しの議論のプロセスに市民の声を幅広く聞く場はない。第7次の基本政策を議論する分科会委員にも環境団体や若者、再エネを推進する人は入っておらず、原子力や火力発電を推進する立場の人がほとんどだという。

さらに2050年カーボンニュートラルや2030年の温室効果ガス46%削減を目標に掲げる第6次計画が、「再エネのみならず、原子力や石炭火力、水素・アンモニアなど新しい技術を含む、あらゆる選択肢を追求するとしている」ことを、吉田氏は、「非常に不確実で無責任なものになっている」と批判。また第6次計画の後に議論されたGX基本方針についても、次世代原子炉の研究開発や化石燃料延命技術といった「コストが高くて、市場経済で考えると進めにくいものにお金を流す仕組みだ」と続け、「第7次計画の議論で、原子力がさらに推進される懸念がある」と危機感を示した。

日本の第7次エネルギー基本計画が策定される2024年、市民が気候危機を止めるためにできることは何か――。

ワタシのミライ事務局では、上記の伊与田氏や吉田氏の考え方をもとに、「気候・エネルギー政策の見直しは、審議会などの意思決定過程に若い世代を含む多様な立場の専門家や環境団体、市民の参加を確保し、民主的で透明なプロセスで行うこと」「原子力の再稼働と運転延長をやめ、新増設・リプレースや新型炉の開発は中止すること」などを求める意見書を政府に提出すべく議論を深めている。政府に対し、「今すぐに省エネを進め、再エネを増やす本気の気候変動対策を始める」よう求める署名活動も展開中だ。

気候変動対策をしないことは、子どもの権利に関わる―― 国連の委員会が明記

もう一つ、大事な視点として、シンポジウムでは、「気候変動対策をしないことは、子どもの権利に関わる」ことを合わせて確認した。国連子どもの権利委員会は2023年8月、「一般的意見26」とされる文書を公表し、気候危機が子どもの権利を侵害する恐れがあり、各国は対策を取る責任があること、環境に関する意思決定において子どもの意見を考慮する必要があることなどを示している。

文書は深刻化する気候危機を受け、同委員会として初めて締約国の義務に触れたもので、締約国には子どもの権利を差し迫った危害から保護する責任があるだけでなく、「今日行った行為、あるいは行わなかった行為」が、将来引き起こすと予見される子どもの権利侵害に対しても責任がある、と明記。国境を越えた環境破壊や気候変動による影響に対しても責任があり、「不利な状況に置かれた子どもたちが不均衡に大きな被害に直面している点には特に留意すべき」と強調しているのが特徴だ。意見に法的拘束力はないものの、各国は十分に参考とすべきとされる。

シンポジウムでは、各地で環境問題などに取り組む高校生や大学生らが積極的に発言した。

Friday For Future Tokyoの福代美乃里氏(高校2年生)は環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏のスピーチをきっかけに気候変動問題に目を向け、実際にCOPに参加した。福代氏はエネルギー基本計画の改定に触れ、「自分たちの将来が、知らないうちに大人たちに決められていき、話し合いに関わることができるようになった時には、もう変えることができなくなっているのはとても怖い」。基本計画の改定プロセスに多くの若者が関わり、その声が意思決定に反映されることを望んだ。

若者の声を政治の場に届けるアドボカシー活動を行う日本若者協議会は昨年、若者同士、環境団体同士が、お互いの顔が分かるような協働・連携を深め、エネルギー基本計画を議論する有識者会議に若者を入れることを求める署名の作成などに取り組んだ。同協議会の芹ケ野瑠奈氏は「私たち将来世代の視点をこのような会議に入れることはすごく大事で、最低2人は入れられるように全力を尽くす。政策提言や議員へのアプローチを通じて成果につなげていきたい」と決意を語った。

気候危機も安全保障もいちばんに被害を受けるのは社会的弱者だ―― SB国際会議2024東京・丸の内、初日に登壇の中村さん

核の危機はすなわち、地球の危機である。核兵器廃絶に向けて取り組む中村涼香氏は、代表を務めるKNOW NUKES TOKYO独自調査の結果、日本の国会議員や都道府県知事らが核兵器禁止条約に賛同している割合は約3割だったことを紹介。これに対し、世論調査では7割を超えていることから、主権者である市民と、意思決定を行う政治家との意見が乖離(かいり)しており、民主主義をより成熟させる必要性があることを強調した。

気候危機と安全保障の話題とは密接に関わっている。中村氏は、核兵器がもしも使用されてしまった場合のシミュレーション画像を見せながら、大規模な核爆発によって気候が氷河期に戻り、食糧危機が起こる可能性を指摘。その時、「いちばんに被害を受けるのは社会的弱者だ」としてエネルギー問題と重ね合わせ、「私たちが声に出してしっかり反対していくことが問題解決に必要不可欠。トピックを横断して手法を共有し、連携しながら社会運動を進めていきたい」と力を込めた。

中村氏は今週21日に開幕する「第8回サステナブル・ブランド国際会議2024東京・丸の内」の1日目のオープニングに登壇し、「核兵器のない世界をデザインする」と題して基調講演を行う。

眞崎裕史 (まっさき・ひろし)

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。2020年からフリーランスのライター・編集者として活動し、ウェブメディアなどに寄稿。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。