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能登半島地震の断水被災者に救いの手――断水時でもシャワーが使える!WOTAの分散型水循環システムが活躍

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1月6日、珠洲市内の避難所に設置されたWOTAのシャワーキットで、5日ぶりにシャワーを浴びて笑顔を見せる被災者

新年を襲った能登半島地震では生活に欠かせない上下水道が多大な被害を受けた。地震発生からもう1ヵ月だが、8市町で4万戸を超えて断水が続く(1月29日現在)。石川県の馳浩知事は会見で「水道管はズタズタだ。水道管をつなぐ修復を急ぐが、エリアによっては自律型の水環境も必要」と話す。このような過酷な状況に自律型の水処理システムを提供しているのがスタートアップのWOTA(東京・中央)だ。使った水の排水をろ過して繰り返し使えるようにする技術により、断水時でもシャワーや手洗いを利用することができる水循環システムを避難所などに設置し、多くの被災者に喜ばれている。同社は1月6日から珠洲市でシステムの提供を始め、断水エリア全域への無償提供を急ぐ。自律型の水循環システムは、今回のような災害時だけでなく過疎化が進み下水道インフラの維持が困難な地域や、気候変動で干ばつに悩む地域などにも必要とされそうだ。(環境ライター 箕輪弥生)

災害時にも水を無駄にしない、WOTAの水循環システムの仕組み

能登の避難所に設置された「WOTA BOX+屋外シャワーキット」

東日本大震災の際もライフラインの中で最も復旧が遅れたのが上下水道だ。ガスが約60日、電気が約90日なのに対して上下水道は180日と最も時間がかかった。能登半島地震では完全な復旧には年単位がかかるのではと予想されている。

被災地では飲料水はペットボトルでの飲料の支給などにより足りているが、トイレ、入浴、炊事などに使う生活用水が圧倒的に不足する。飲み水は 1日1人あたり3リットルあれば十分であるのに対し、シャワーでは 1回で50 リットル程必要となるため、仮に100 人が避難する避難所の場合、シャワーだけでも1日で5トンの水が必要となるという。

WOTAのシステムは最先端のフィルター技術に、水質センサーと AI による解析を組み合わせ、効率的に一度使用した水を浄化し利用することで、100リットルの水で約100人がシャワーを浴びることができる。

同社が開発した「WOTA BOX」は活性炭とRO膜など6つのフィルターによって排水をろ過し、紫外線の照射や塩素系消毒剤を入れることで99.9%以上の細菌やウイルスを除菌し、公衆浴場の水質基準に準拠した水質に戻す。

さらに、内部に搭載された複数の独自センサーとAIを組み合わせて水質やシステムを常時診断し制御する。

一度使った水の98%以上を再利用できる「WOTA BOX」。AIが4種類のフィルターのうち最適なものを選択する

今回の支援では、個室での温かいシャワー浴ができる「WOTA BOX+屋外シャワーキット」と、使用した水の98%以上を、その場で水を循環させて使える水循環型手洗いスタンド「WOSH」を避難所に提供している。

1月6日から提供をはじめ、自治体、民間企業、個人、財団からの寄付で断水が続く能登半島断水エリア全域に「WOTA BOX+屋外シャワーキット」100台と、水循環型手洗いスタンド「WOSH」200台を1月中に設置する見込みだ。既に能登の6市町において1ヵ所以上の配置を1月12日に完了した。

避難所では利用者自らがメンテナンスを行うことでスムーズに運用できた

同社では、避難所ごとに避難者自身がシステムを利用するための「自律運用」も合わせて構築しており、珠洲市のある避難所では中学生がボランティアで受付や機器のメンテナンスをした。

同社の越智浩樹 執行役員は「災害発生直後より、広範囲にわたる断水が長期化する可能性を見据え、国、石川県、各市町と連携し、避難所の方々に自ら運用いただく自律運用を前提にした配置計画、実行を進めてきた。これにより、支援活動の持続性を高め、展開速度を速めた」と話す。

自立運用のため、WOTA担当者が避難所にいる人たちに使用方法・メンテナンスなどをレクチャー

一方、避難所では手を洗えないなど衛生環境の悪化により、コロナやノロウイルスの感染症の心配も広がっている。「WOSH」は20リットルの水で500回手洗い可能なため、導入が急がれる。

避難所に設置された自律型の手洗いシステム「WOSH」も避難している人に喜ばれている
水道なしで、きれいな水で手が洗える「WOSH」。コロナウイルスも除去でき、排水量は100分の1に節水

サーキュラーな水循環システムが社会課題を解決

WOTAが開発する小規模分散型水循環システムは、今回のような非常時だけでなく、人口減少や配管の老朽化などで水道事業の赤字に頭を悩ます自治体や、水インフラが整いづらい離島での利用も想定される。

同社は昨年、人口減少が加速し、老朽化した水道の更新投資が難しい愛媛県の複数の自治体や、原水不足で給水コストが高い東京都の利島村で、住宅向けのシステムを実際に一般住宅に設置しており、24年度もその取り組みの拡大を見込んでいる。

つまり、「自然の水源から水を汲み上げ、生活排水は浄化して川や海に流す」という、いわば“使い捨て”の水利用モデルを転換し、排水を再利用するサーキュラーな水システムにより再生可能な水循環を作り出してしているわけだ。

同社のシステムモデルは、気候変動で干ばつに悩む地域でも活用が想定され、海外からの問い合わせも多い。カリブ海の島国では今年から実証を開始し、渇水に悩むUAEなど中東地域などからも多数の問い合わせが寄せられているという。

日本は水に恵まれた国ではあるが、太陽光や風など再生可能な自然の力から電気を作り出すように、水も再生可能な資源として捉えることで、災害時から平常時まで新しい水環境が見えてくる。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/