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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

DXで挑む!サステナビリティ時代の社会課題解決

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SB国際会議2023東京・丸の内

Day2  ブレイクアウト

気候変動をはじめとする環境問題やさまざまな社会課題の解決に向け、企業がその存在意義を存分に発揮するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)の力を活用することが欠かせない時代になっている。とはいえDXとひと言で言っても幅が広く、どのようなポイントに焦点を定めればいいのかが明確になっているとは言い難い。本セッションでは、DXによってSX(サステナビリティトランスフォーメーション)を推進する企業の具体例を確認することで、今後の方向性について意見を交わした。(木野龍逸)

ファシリテーター
細田悦弘・一般社団法人日本能率協会 主任講師
パネリスト
伊藤文彦・三井住友フィナンシャルグループ 常務執行役員 グループCSuO(Chief Sustainability Officer)
坂本尚也・ウフル 取締役常務執行役員
下垣徹・NTTデータ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 室長
三井朱音・Avery Dennison Smartrac Japan マーケットディベロップメントディレクター

入り口から出口まで一気通貫で

細田氏

DXとビジネスの関係性について、初めにファシリテーターの細田悦弘氏は、「テレワークへの移行が働き方改革につながるなど、DXは組織風土の変革のトリガーになる。目的の実現や、社会課題の解決のためにDXを活用するのは現代ならではであり、とても有効な手立てだ」と述べ、DXの意義を強調。続いて登壇した各社が、DXによる社会課題解決の実例を紹介した。

三井住友フィナンシャルグループのCSuOを務める伊藤文彦氏は、同グループがサステナビリティの実現に向け、トップのコミットメントを踏まえた強力なガバナンス体制を敷いていることを説明。

伊藤氏

クラウドやAI、キャッシュレス、ブロックチェーンといったさまざまな技術を駆使するなかで、顧客の排出量を見える化し、そのデータを蓄積・解析することで、排出量削減に向けたソリューションを提案していることが紹介された。
伊藤氏は「昔は預金を集めて貸し出すのが銀行だったが、今はあらゆるコンサルティングも含め、入り口から出口まで一気通貫で、デジタルプラットフォームを使ったサービスを提供している。金融機関ができることはいっぱいある」と力を込めた。

サービスをつないで利便性を

坂本氏

スタートアップ企業、ウフルの坂本尚也氏は自社の事業について、例えば個別のサービスを横につないで利便性を高めることなどにより企業のDXをサポートし、スマートシティーやカーボンニュートラルの実現を目指しているという。具体的には、健康寿命の増進を目的とするウォーキングアプリや、山間部での自動運転の電気自動車を使ったスローモビリティーなどを、「今日はこの歩数を歩いて、あとはこの車両に乗っていこう」というように組み合わせて使うことで全体のコストを下げ、さらにはそれらのデータを用いてCO2削減量を換算し、排出量を抑えるための行動変容につなげる取り組みを進めている。「自分が意識しなくても排出量の削減に貢献しているという仕組みづくりも重要なポイントだと思っている」という見方を示した。

削減をインセンティブに変えていく

下垣氏

「つなぐ力」を強調するのはNTTデータも同じだ。同社のグリーンイノベーションを推進する下垣徹氏は「社会インフラを担う会社としてNTTデータだからこそできる価値提供をしている」と述べ、DXに関連する4つの事例を紹介した。ひとつはCO2やGHGの削減努力を可視化するソリューションで、サプライチェーン上位の情報を国際NGOのデータから正確に把握し、スコープ3の削減も視野に入れる。このほか、再生可能エネルギーによる電力の需要と供給のデータをつなぐ事業や、データセンターの電力使用量を減らすといったITシステム自体の排出量の可視化削減にも注力。さらには、電気自動車用バッテリーのトレーサビリティーを確立することを目的に業界横断エコシステムを構築する企業間連携も進めているといい、下垣氏は「つくる力とつなぐ力を発揮して、削減をインセンティブに変えていく、削減の先のストーリーを見せていきたい」と強調した。

フィジカルなものをデジタル化し、新しい価値を

三井氏

米国を拠点にグローバルでデジタルIDソリューション事業などを展開するAvery Dennison(エイブリィ・デニソン)の日本法人から登壇した三井朱音氏は、今回のテーマであるDXについて、「フィジカルなモノをデジタル化してデータを蓄積することが第一歩。そうして初めて、そのデータを使って新しいプロセスを構築したり、新しい価値を生み出すことにつながる」と前置き。まさにこうしたDXによってビジネスの在り方を変革した好事例として、米国のレストランチェーンが調達する原材料のすべてに無線ICタグ(RFID)を付けた結果、『食の正当性』の判断はもとより、需要予測が正確になって廃棄を減らすことにつながったことを紹介した。三井氏は「デジタル化ができてないと、そもそも現状が見えず、何か問題があるとはまず思わない」と指摘。DXを通じて「企業が商品やサービスの透明性を高め、消費者に開示していくことが求められている。それを支援したい」とする思いを語った。

4社に共通するのは、サステナビリティをDXの力で実現していくために、業界や企業の枠を超え、連携を強めていく必要があるということだ。細田氏は「DXとサステナビリティは切っても切れない関係にあり、今の時代の究極の組み合わせだ」と総括し、セッションをしめくくった。