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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

Z世代経営者が実走する「Recenter & Accelerate」

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SB国際会議2023東京・丸の内

(左から) 露木氏、勝見氏、樋泉氏

Day2 ブレイクアウト

サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内が掲げたテーマ「Recenter & Accelerate」とは、本質に立ち返り、行動変容を加速させていく姿勢のことだ。本セッションでファシリテーターを務める山岡仁美氏は、このテーマを深める為、「Why(なぜ)」「What(何に)」「How(どうやって)」をポイントとして提案。異なる分野で活躍しているZ世代の社会起業家3人が語り合った。(横田伸治)

ファシリテーター
山岡仁美・サステナブル・ブランド国際会議 D&Iプロデューサー
パネリスト
勝見仁泰・アレスグッド 代表取締役CEO
露木志奈・Shiina Organic Founder/環境活動家
樋泉侑弥・Bonchi 代表取締役社長

3人がそれぞれ取り組む「What」

オーガニックコスメを手掛けるShiina Organicの露木志奈氏の出発点は、インドネシア・バリ島の「グリーンスクール」で過ごした高校時代に、化粧品の生産プロセスで生じる多くの環境負荷を知ったことだった。同社の新商品の口紅では、詰め替え可能でリサイクルが容易なアルミニウム製の容器を採用したほか、約60%の女性が化粧品を使い切れずに捨ててしまうことを受け、サイズを小さくした点が特徴。露木氏は「消費者の選択が地球を変えるということを、コスメを通して伝えたい」と意気込みを語った。

勝見仁泰氏は、就職活動時に理想の企業と出会えなかったことを原体験として、「エシカル就活」を可能にするマッチングシステム、アレスグッドを立ち上げた。システムにより学生側は「どのような社会課題に取り組んでいるか?」という観点で企業を選ぶことができ、企業側は学生に対してダイレクトスカウトが可能になる。勝見氏には、「間違いなくZ世代が世界のメインストリームになる」という確信があり、「サステナビリティは当たり前になる。そこに取り組む企業にヒト・モノ・カネが集まる『うねり』を作りたい」と述べた。

「世界の話から、今度は日本の地方に寄って話したい」と続けたのが、Bonchiの樋泉侑弥氏だ。出身地山梨県の特産品である桃を筆頭に、果物の産地直送ECサイトの運営を通じて、地方の特産物の価値を発信している。全国で農家の担い手不足が深刻化する中、地域一体となって農業の雇用を創出することが狙いで、さらに、Bonchiの売り上げの10%を新規就農者の支援プロジェクトに活用する仕組みを開発。樋泉氏は「日本の農業の強みをもっと認識し、質を高めて世界に伝えていくべき」と理念を明かした。

活動の動機(Why)は「この時代だからこそ」

3人は、それぞれの活動に取り組む動機について、共通して「この時代だから」と指摘した。勝見氏は「デジタル化とグローバリゼーションによって社会課題に触れる機会が増え、間違いなくZ世代の関心が高まっている」と分析。樋泉氏は「メタバースやAIなど、『今必要ではない』技術が高まりすぎたのではないか。それよりも目の前の社会貢献や価値に目がいくようになった」と述べた。

「How」については、露木氏が「サステナブルである点を訴えなくても手に取ってもらえるような価格設定で、質を高めていかないといけない」と主張すると、勝見氏も「サステナビリティは消費に落とし込まれていない。エシカルやサステナビリティに関心がない人に押し付けず、潜在的な欲求を探るべき」と同意した。

話題は教育の重要性にも広がった。露木氏は「人類がまだ解決できていない、答えのない問題をどう考えるか、学校教育でも取り組みが必要」、勝見氏は「若者が『居心地のいい場所』から出て挫折を経験することが大事。その上で自分は世界を変えられると自信を持ち、未来に希望を持つべき」、樋泉氏は「世界の課題に対して、日本の良さを見つめながら取り組んでほしい」と若い世代へ呼びかけた。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。