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自然循環型の暮らしを実践、環境ライターが提案型の解説本『地球のために今日から始めるエコシフト15』

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サステナブル・ブランド ジャパンの本サイトでも「脱炭素特集」などに多数記事を執筆しているジャーナリストの箕輪弥生氏が新刊『地球のために今日から始めるエコシフト15』(学校法人文化学園文化出版局発行)を刊行した。著者自身が、太陽熱や雨水を利用した自然循環型の暮らしを実践しながら、幅広く環境関連の取材を行う中から浮かび出た課題や提案を、カラフルで楽しい漫画風のイラストとともに分かりやすく解説した一冊だ。(廣末智子)

箕輪氏は東京の下町生まれ。立教大学を卒業後、広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能な暮らしや社会への関心が募り、環境教育から企業の脱炭素まで幅広いテーマで18年以上にわたって環境関連の記事や書籍の執筆、編集に携わる。

『今日から始めるエコシフト15』は文化出版局発行の女性誌「ミセス」での連載に加筆、構成したもの。気候変動が地球に及ぼす悪影響を基礎用語から説明する章と、地球温暖化に大きく影響する日本のエネルギー政策の実情について見解を述べる章、そして自然と寄り添う暮らしのヒントを提案する章の3章立てになっている。

第2章では例えば、日本では自然エネルギーによる発電が2021年のデータで2割に届く程度にとどまっている理由を、太陽光も豊富で、地熱資源の保有量も世界3位と「自然エネルギーのポテンシャルはたっぷりある」にもかかわらず、「政策的な後押しや支援が欠けていたことも影響している」と分析。その上で日本のエネルギー政策を、「国が原子力発電や火力発電にこだわっている間に世界と大きく隔離してしまったようだ」と我が国の立ち位置を端的に指摘する。

さらに今後については、「今すぐに自然エネルギー100%への転換は無理だが、将来の姿を描きつつ、そこにシフトするまでにどうするかを国民にきちんと情報を伝え、透明性を持った形で答えを出していくのが民主主義であり、決して一つの政権の閣議だけで簡単に決めてはならない」と主張。ジャーナリストとして譲れない視点が強調されている。

窓の断熱、太陽光発電、節水…自身の生活や取材経験から15のエコシフトを推奨

本のタイトルともなった第3章の「暮らし発15のエコシフト」では、窓の断熱や太陽光発電、太陽熱の利用、節水や電力会社の切り替えなど、日常生活のなかで取り組める提案を15項目に分けて紹介。著者の自宅でも窓を二重サッシにしたことで冷暖房の効きも良く、遮音効果もあることや、太陽光を暖房や給湯に使うシステムを利用することのメリットを「経済的にも夏季のガス代が1000円台で収まるのにいつも驚く」といった実感を込めて推奨するなど、自身の生活や長年の取材経験から編み出した暮らしのヒントをうまく構成しているのが目を引く。

東日本大震災時に取材で訪れた被災地の避難所では、電気もガスも復旧していないなか、救援物資として寄付された「太陽熱温水器」に被災者が「温かいお湯が使えるのは本当にありがたい」と話していたのが印象的だったという。

このほか具体的には「家電を使いこなすエコわざ」として、冷蔵庫や照明器具、テレビ、エアコン、温水洗浄便座など10種類の家電の省エネ効果を数値化して示す。さらには食品ロスの削減に向け、少しずつ余った野菜でつくるピクルスなど、料理研究家による「捨てない!余らせない!始末料理」のレシピも載っていて、誰もがやってみようと思えるバリエーションに富む内容だ。

全編を通じて、イラストレーターの中村隆氏による動物をキャラクター化した漫画がふんだんに掲載され、本を楽しく、読みやすいものにしているのも大きな特徴。中高生から大人まで、地球温暖化や気候変動の問題を正しく理解し、自分に何ができるかを考えるヒントが詰まっている。

『どうする?! 地球温暖化・気候変動…
地球のために今日から始めるエコシフト15』

著者:環境ライター・ジャーナリスト 箕輪弥生
定価:本体1600円+税 単行本(ソフトカバー)A5判112ページ
出版社:文化出版局

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年10月からSustainable Brands Japan 編集局デスク 兼 記者に。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。