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SDGsを羅針盤にしたまちづくり、「連携」「脱炭素」「人的資本」がキーワード

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第5回未来まちづくりフォーラム

(左から)笹谷氏、佐々木氏、釣流氏、芦川氏、泉谷氏

ポスト・コロナの「グレート・リセット(大変革)」が急速に進行中であり、より良き回復(Build Back Better)のためには世界に通用する羅針盤であるSDGsをいかに活用するかが重要だ。特に、喫緊の課題であるカーボン・ニュートラル社会の実現にはSDGsによる経済・環境・社会の三位一体の解決策が必須となっている。サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内のイベントとして同時開催された、第5回未来まちづくりフォーラムのパネルディスカッションでは、自治体と企業2社が「プラットフォームづくりと連携のコツ」「カーボン・ニュートラル社会の実現」「人的資本経営」という3つの観点から取り組みを紹介。さらにメディアの視点から活動の価値とヒントを探り、議論する場となった。(岩﨑 唱)

【パネルディスカッション】
ファシリテーター
笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム 実行委員長/千葉商科大学 教授
パネリスト
佐々木勝久・福井県鯖江市 市長
芦川隆範・NTTコミュニケーションズ 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長
釣流まゆみ・セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 経営推進本部サステナビリティ推進部
泉谷由梨子・BuzzFeed Japan ハフポスト日本版 編集長

ジェンダー平等を主軸にした鯖江市のSDGsへの取り組み

国内の眼鏡フレームを9割以上生産している鯖江市では、ジェンダー平等を主軸にしてSDGsに取り組んでいる。佐々木市長は「眼鏡産業は下請け分業制で家族経営の会社が多く、そのため女性が仕事と家庭を支えるのが当たり前だった」と話す。こうした風土が女性活躍の土壌を形成し、全国で共働き率1位、女性就業率2位という結果になっている。

鯖江市が「女性が輝くめがねのまちさばえ」をスローガンに取り組んでいるのが、拠点整備、意識啓発、情報発信を中心にした経済・社会・環境の自律的好循環だ。イノベーションを起こす場の開設や、学びながら行動を起こす部活動、「さばえSDGsフェス」などを開催し、SNSを活用して情報発信。こうした取り組みが、移住・定住の促進、魅力ある雇用の創出、循環型社会の構築につながっている。

佐々木市長は「2030年に向けて各地方自治体が抱える問題は山積している。鯖江市が全国の自治体のロールモデルとなれるよう、今後も市民、企業と連携してSDGsの推進に取り組んでいく」と述べた。

ハフポスト日本版 編集長の泉谷氏は「地方から東京圏への流出人口は女性が多く、しかも故郷に戻らないというデータがある。これが地方の人口減少に拍車をかけているのではないか。地方でジェンダー平等を実現させることは非常に意味がある」とコメントした。

最先端技術でカーボン・ニュートラルに挑むNTT

NTTグループは、2021年11月に従来あったCSR憲章を再構築しサステナビリティ憲章を策定した。この憲章では「Self as We」を基本理念に掲げ、「自然との共生」「文化との共栄」「well-beingの最大化」の3つのテーマを設定している。芦川氏は「『Self as We』とは、自分だけでなく他人の幸せも実現する『利他的共存の精神』のこと」と説明した。

また、カーボン・ニュートラルの実現に向けて新たなエネルギービジョン NTT Green Innovation toward 2040 を策定し、環境負荷低減と経済成長の両面を目指している。さらに併せて取り組んでいるのが、フレキシブル・ハイブリッドワークを起点とした経営改革だ。制度・ルール、環境ツール、風土・意識をポイントにワークスタイル改革に取り組み、紙の削減57%、1日に約7.6トンのCO2削減を達成している。

NTTコミュニケーションズとしては、SDGsと社会・人材・環境・ガバナンスの4つの領域を組み合わせたマトリクス図を作成。芦川氏は、こうした制度上の取り組みだけではなく「サステナビリティはバリューチェーン全体で取り組み、社員一人ひとりの行動変容も重要だ」と強調した。

泉谷氏は「脱炭素に関しては技術革新によって達成できる部分がかなりあるが、SDGsには技術では解決できない人の意思に関する部分もある。その部分もワークスタイル改革によりアプローチされているのは素晴らしい」と評価した。

常にお客様の立場に立ったSDGsの取り組みを実践するセブン&アイグループ

同社は、2019年に環境宣言 GREEN CHALLENGE 2050を発表し、CO2 排出量削減、プラスティック対策、食品ロス・食品リサイクル、持続可能な調達の4つのテーマを、事業会社と共通のKPIに定めて取り組んでいる。また再生可能エネルギーの調達では、NTTとオフサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)を締結し実現した。釣流氏は「当社の事業にとって重要なのは、地域との連携とお客様の生活。また、事業継続のためには従業員を大切にすることが重要」と述べた。

泉谷氏は「コンビニ、スーパーは消費者に働きかける力がとても大きいメディア的な存在。消費者に向けたメッセージ発信の責任が大きい。ちょっとしたメッセージで、みんながSDGsに取り組むアクションにつなげられるメディアとしてのコンビニに大きな魅力を感じている」と述べた。

「誘われる人」から「誘う人」に

泉谷氏はディスカッションを振り返り、「最近、『誘われ待ち』という言葉がよく使われる。自分からは誘わないが誘われるのを待っていることを指し、そういう人が増えているという。SDGsもこれと一緒で、誘われれば行動したいという人が多いのだと思う。本日のパネリストは、それぞれの立場から『誘う』という取り組みをしていて、それが素晴らしいと思った」と述べた。

ファシリテーターを務めた未来まちづくりフォーラム 実行委員長の笹谷秀光氏は、泉谷氏から「興味はあるが行動しない層が大変多い」というコメントを受けて、「この会場にいる登壇者も来場者も、行動しようと『誘う』人たち。ぜひ誘われる人でなく誘う人になろう」と会場に呼びかけた。

岩﨑 唱 (いわさき・となお)

コピーライター、准木材コーディネーター
東京都豊島区生まれ、日本大学理工学部電気工学科卒。いくつかの広告代理店、広告制作会社で自動車、IT関連機器、通信事業者などの広告企画制作に携わり、1995年に独立しフリーランスに。「緑の雇用」事業の広告PRに携わったことを契機に森林、林業に関心を抱き、2011年から21018年まで森林整備のNPO活動にも参画。森林を健全にし、林業・木材業を持続産業化するには、木材のサプライチェーン(川上から川下まで)のコーディネイトが重要と考えている。