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日本SDGsモデルの最前線 -混迷の時代、羅針盤SDGsで協創力を発揮-

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第5回未来まちづくりフォーラム

混迷の時代に羅針盤となるSDGsを活用し「協創力」で持続可能なまちづくりを考える、第5回未来まちづくりフォーラムが、サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内のイベントとして同時開催された。同フォーラムの基調講演では、内閣府地方創生担当大臣の岡田直樹氏、東京都知事の小池百合子氏、デジタル庁国民向けサービスグループ統括官の村上敬亮氏らが登壇。DX(デジタルトランスフォーメーション)、ウェルビーイング、人的資本から考えるまちづくりについて議論した。(岩﨑 唱)

オープニング・トーク
岡田直樹・内閣府 地方創生担当大臣

岡田氏は動画にて登壇し、「政府では2030年のSDGsの達成に向けて総理を本部長とするSDGs推進本部の下、全省庁が一丸となって取り組みを推進している」と述べ、昨年12月に閣議決定したデジタル田園都市国家構想総合戦略では、デジタルの力を活用した持続可能なまちづくりが重要な課題に位置付けられていることを指摘した。また、内閣府が選定するSDGs未来都市や地方創生SDGs官民連携プラットフォーム、地方創生SDGs金融表彰などさまざまな取り組みを実施していると説明し、「SDGsの理念を通じた地域課題の解決について議論し交流することを通じて、地域の活性化に向けた具体的な取り組みが全国に広がることを期待している」と締めくくった。

オープニング・トーク
小池百合子・東京都知事

続いて小池氏が動画にて登壇し、「SDGsの目標達成には、さまざまなステークホルダーの参画が重要だが、その中でSDGsのローカライゼーションの必要性が世界共通の認識となっている」と述べ、自治体レベルでの取り組みの重要性を訴え、地球規模の課題解決をリードする東京都の数々の取り組みを紹介した。東京都では、HTT(「電力をH減らす・T創る・T蓄める」)を合言葉に全国初となる新築住宅等への太陽光発電設置義務化を成立させ、2025年4月の施行に向けて準備を進めている。また、太陽光に加えZEB(Net Zero Energy Building)の普及、水素やバイオ燃料の活用などあらゆる施策を総動員し、2030年にカーボンハーフ、2050年にゼロエミッションの実現を目指していると述べた。

さらにサステナビリティとハイテクノロジーをテーマにしたSusHi Tech Tokyo(Sustainable High City Tech Tokyo)を旗印に掲げて、次世代につなげる都市像を世界に向けて発信していくと話し、「時代が私たちに変革を求めている。厳しい状況のときこそゲームチェンジの時であり、その主役は私たち自身。SDGsを羅針盤に一人ひとりが知恵を出し合い、行動を重ね、光り輝く明るい未来をつくっていこう」と訴えた。

キーノート・トーク
笹谷 秀光・未来まちづくりフォーラム 実行委員長、千葉商科大学教授

日本SDGsモデルの最前線 ―混迷の時代羅針盤SDGsで協創力を発揮―

笹谷氏は「日本にはかけがえのない良さがあり、それを活かしたSDGs日本モデルがあるのでは?」と会場に問いかけた。そして、国内のいくつかの事例を紹介し「いま、日本各地で協創の鼓動を感じている。これからのまちづくりはセンス・オブ・プレイスとシビック・プライドの要素が重要となり、その2つをSDGsで磨いていく必要がある」と主張した。

また、SDGsは、17のゴールと169のターゲットをセットとして捉える必要があり、SDGsの原点である “持続可能な開発のための2030アジェンダ”に立ち返り、SDGsの優れた網羅的体系(総論)をフル活用する段階にあると述べた。そして、企業が取り組むべきことをE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)に分類して洗い出し、ESGを縦軸にSDGsの17目標を横軸にしたマトリクス図に整理し、さらに169のターゲットを紐づけるSDGs経営支援ツール「笹谷マトリクスモデル」を紹介した。笹谷氏は「SDGsを羅針盤として、協働のプラットフォーム、共通価値の創造、学びと発信力による“協創力”により企業の本業において創造性とイノベーションを発揮し、企業価値を引き上げ、社員のモチベーションを向上させていくべきだ」とまとめた。

ゲスト・トーク
村上敬亮・デジタル庁 国民向けサービスグループ 統括官

共助とDX、デジタル田園都市国家構想について

ゲスト・トークには、過去に地方創生事業にも取り組まれていたデジタル庁 国民向けサービスグループ 統括官の村上敬亮氏が動画により講演を行った。「人口減少下の社会では、『需要が供給に合わせる経済』から『供給が需要に合わせる経済』へシフトし、特にサービス業の生産性を向上させるにはリアルタイムの需要データを知る必要がある」とし、そのためにはデジタル連携基盤構築と「共助」の発想が求められるという。

また「共助」によるインフラ構築の実現のカギは、市民だと主張。デジタル田園都市国家構想の核は、それぞれの地域の事情に即した、暮らして楽しく、働きがいがあるまちづくりだ。「それには資金提供者から地域で暮らし市民、地域外に住む地元ファン(第二市民)を巻き込み、みんなで話し合って一つの山頂を目指す必要がある」。村上氏は「まちづくりについては、地域幸福度(Well-Being)を指標としてみんなで語り、良いまちづくりを日本中に巻き起こしていく。これこそがデジタル田園都市構想だ」と結んだ。

招聘講演
前野隆司・慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授

まちづくりとウェルビーイング

ウェルビーイング研究の第一人者である慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授がオンラインで講演を行い、ウェルビーイングは「身体のよい状態=健康」、「心のよい状態=幸福」、「社会のよい状態=福祉」の3つを包み込む概念だと説明。各省庁の政策にもウェルビーイングが入ってきていると述べた。また、幸せを感じている人は健康・長寿であること、幸福感の高い社員は創造性・生産性が高いばかりでなく欠勤率や離職率が低いこと、また幸福的感情はある金額までは年収と比例するがそれを超えると年収と相関しないことなどを紹介した。

また政府のデジタル田園都市国家構想において、ウェルビーイングが指標となっていることを挙げ、未来のまちづくりでは極めて重要な要素であることを訴えた。また、幸せには「やってみよう因子=自己実現と成長」「ありがとう因子=つながりと感謝、利他」「なんとかなる因子=前向きと楽観、チャレンジ精神」「ありのまま因子=独立と自分らしさ」など4つ因子があることを解説。「私たちがウェルビーイングをきちんと考えそれを楽しみながら、みんなで力を合わせて支え合う幸せな日本をつくっていこう」と締めくくった。

岩﨑 唱 (いわさき・となお)

コピーライター、准木材コーディネーター
東京都豊島区生まれ、日本大学理工学部電気工学科卒。いくつかの広告代理店、広告制作会社で自動車、IT関連機器、通信事業者などの広告企画制作に携わり、1995年に独立しフリーランスに。「緑の雇用」事業の広告PRに携わったことを契機に森林、林業に関心を抱き、2011年から21018年まで森林整備のNPO活動にも参画。森林を健全にし、林業・木材業を持続産業化するには、木材のサプライチェーン(川上から川下まで)のコーディネイトが重要と考えている。