• 公開日:2023.03.09
共創の時代に生きるためのマーケティング戦略―We are the Co-Creation Generation ―
  • 井上 美羽

SB国際会議2023東京・丸の内

Day1  アフタヌーン プレナリ―

ホセ・ゴルベア・HP Inc. Marketing Global Head of Brands & Sustainability Innovation

モノを売るための時代から、社会に問いかける時代へと変わろうとしている今、企業は『ブランドとしての在り方』を消費者に伝える必要がある。商品やサービスを通じて消費者によりサステナブルな行動変容を促すために有効な方法とはどのようなものだろうか。デジタル印刷パッケージ技術を用いてブランドのESGへの取り組みを加速させ、消費者とのコミュニケーションを戦略的に推進するグローバル企業、HP Inc.から初登壇したホセ・ゴルベア氏のメッセージを伝える。

「皆さんのビジネスにとって共創(コ・クリエーション)にシフトすることの真のメリットとは何なのか、どのようにサステナビリティに対応できるか、より良いマーケティングをどのように実現できるのか。私と一緒に共創の旅についてきてください」

そう呼びかけて始まったゴルベア氏のセッション。初めに、非常に尊敬しているというベンジャミン・フランクリンの『知らせるだけでは、私は忘れてしまうだろう。教えてくれたら、私は覚えるかもしれない。巻き込まれたら、私は学ぶだろう』という言葉を通して、「企業のみなさんはコミュニティーを巻き込んでください。そうすればコミュニティー自身が学んでいく」と方向性を指し示した。

従来の広告媒体の効果が弱まっていることについて、ゴルベア氏は「人々はコンテンツの飽和にほとほと疲れ、不安感を煽られているからだ」と指摘。そして、Eコマース市場が拡大する中でも、「人々はリアルな体験を求めることに立ち戻っている」と強調する。

それはなぜか。その指標としてゴルベア氏はカンヌ・ライオンズの過去10年の受賞データの分析で、「パーソナライズ(個別最適化)された広告のパッケージはSNSよりも有効だ」という結果が出ていることを挙げた。さらにHP社の調査でも、若い人ほど独自性の強いリアルなパーソナル体験を求める傾向ははっきりしているという。

「マーケティングを通じて消費者と共創することでサステナブルな行動を促すことができます。消費者の92%がサステナブルな行動をしたいと思っていても、実際に行動する人は16%にとどまっている。消費者の行動と意図の間にはギャップがあり、私たちの役割はそのギャップを埋める支援をすることなのです」

企業はストーリーテリングの方法を変えることが重要だ

スミノフのボトルには、プライド月間中、SNSで募ったLGBTQコミュニティーに関する一人ひとりのストーリーを印刷している

だからこそ、地球・社会の課題解決に向けて、消費者にパッケージのコンテンツづくりに参加してもらうよう、ゴルベア氏は「企業はストーリーテリングの方法を変えることが重要だ」と強調。HP社はデジタル印刷パッケージ技術によってパートナー企業とともにそれを実践し、パッケージを通じて消費者のストーリーを届けることで彼らの意欲的な消費を促し、結果としてブランドの成長につなげることに成功している。

例えば、プライド月間にLGBTQコミュニティに関する一人ひとりのストーリーを募集してスミノフのボトルに印刷したり、ブラジルのハーシーチョコレートのパッケージで女性アーティストたちの声を伝えることで南米における女性のモチベーションを高めたり。ネスカフェとは、消費者から募集した300の新年の抱負をコーヒーの瓶ラベルに印刷するキャンペーンのほか、コーヒー農家の1000の物語を紹介してサプライチェーンの透明性を促し、これによって同社は20以上の市場で5年以上、2桁成長を実現しているという。

そもそもデジタル印刷技術そのものが、サステナブルであることは言うまでもない。「なぜなら、最少ロットという概念はなく、サプライチェーンから26%在庫を削減できる。グローバルな大企業が軒並みこの技術を導入すれば5000万トンの包装が不要になり、アナログ印刷と比較してCO2を最大8割削減できるのです」。

「共創はサステナビリティにつながっている。マーケティングにも非常に有効です。日本の皆さんもぜひ、共創の精神を持ってください。一緒に進んでいきましょう」。最後はそうにこやかに呼びかけて、セッションを終えた。(井上美羽)

written by

井上 美羽(いのうえ・みう)

愛媛県松野町在住フリーライター。地方で農を実践しながら、地方での食の魅力化に取り組む。 食、環境、地方を専門として、主に取材・インタビュー記事の執筆を手掛ける。 日本サステイナブル・レストラン協会や日本スローフード協会の事務局として、食にまつわるイベントプロデュース、コーディネーターなどを担当している。

Related
この記事に関連するニュース

サステナビリティ戦略は見直しが必要――専門家が今後の対応策を指南
2025.09.22
  • ワールドニュース
  • #ブランド戦略
  • #マーケティング
企業のサステナビリティは依然、実績と一般の認識にずれ――英調査結果
2025.07.01
  • ニュース
  • ワールドニュース
  • #ブランド戦略
  • #マーケティング
34年ぶりのマーケティング定義改訂のポイントと裏側
2025.06.10
  • ニュース
  • #パーパス
  • #ステークホルダー
  • #ブランド戦略
  • #マーケティング
岐路に立つ日本の製造業には「デザイン思考」が欠かせない
2025.06.06
  • ニュース
  • #イノベーション
  • #ブランド戦略
  • #マーケティング

News
SB JAPAN 新着記事

地域産業の魅力と若者が暮らしたくなるまち 高校生123人が東北の未来を議論 
2025.10.16
  • SBコミュニティニュース
  • #地方創生
牛の幸せを追求する“正しい酪農”と経営の両立を模索――岩手「なかほら牧場」
2025.10.16
  • ニュース
  • #エシカル
  • #リジェネレーション
  • #エコシステム
微生物からロボットまで――ファッション業界の未来を作る最新技術5選
2025.10.15
  • ワールドニュース
  • #イノベーション
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
  • #プラスチック
 「つなぐ」価値を未来へ NEXCO東日本がサステナビリティボンドで気候変動対応に挑む
2025.10.14
  • ニュース
  • スポンサー記事
Sponsored by 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
  • #情報開示
  • #ファイナンス
  • #ESG投資

Ranking
アクセスランキング

  • TOP
  • ニュース
  • 共創の時代に生きるためのマーケティング戦略―We are the Co-Creation Generation ―