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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

共創の時代に生きるためのマーケティング戦略―We are the Co-Creation Generation ―

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SB国際会議2023東京・丸の内

Day1  アフタヌーン プレナリ―

ホセ・ゴルベア・ HP Inc. Marketing Global Head of Brands & Sustainability Innovation

モノを売るための時代から、社会に問いかける時代へと変わろうとしている今、企業は『ブランドとしての在り方』を消費者に伝える必要がある。商品やサービスを通じて消費者によりサステナブルな行動変容を促すために有効な方法とはどのようなものだろうか。デジタル印刷パッケージ技術を用いてブランドのESGへの取り組みを加速させ、消費者とのコミュニケーションを戦略的に推進するグローバル企業、HP Inc.から初登壇したホセ・ゴルベア氏のメッセージを伝える。

「皆さんのビジネスにとって共創(コ・クリエーション)にシフトすることの真のメリットとは何なのか、どのようにサステナビリティに対応できるか、より良いマーケティングをどのように実現できるのか。私と一緒に共創の旅についてきてください」

そう呼びかけて始まったゴルベア氏のセッション。初めに、非常に尊敬しているというベンジャミン・フランクリンの『知らせるだけでは、私は忘れてしまうだろう。教えてくれたら、私は覚えるかもしれない。巻き込まれたら、私は学ぶだろう』という言葉を通して、「企業のみなさんはコミュニティーを巻き込んでください。そうすればコミュニティー自身が学んでいく」と方向性を指し示した。

従来の広告媒体の効果が弱まっていることについて、ゴルベア氏は「人々はコンテンツの飽和にほとほと疲れ、不安感を煽られているからだ」と指摘。そして、Eコマース市場が拡大する中でも、「人々はリアルな体験を求めることに立ち戻っている」と強調する。

それはなぜか。その指標としてゴルベア氏はカンヌ・ライオンズの過去10年の受賞データの分析で、「パーソナライズ(個別最適化)された広告のパッケージはSNSよりも有効だ」という結果が出ていることを挙げた。さらにHP社の調査でも、若い人ほど独自性の強いリアルなパーソナル体験を求める傾向ははっきりしているという。

「マーケティングを通じて消費者と共創することでサステナブルな行動を促すことができます。消費者の92%がサステナブルな行動をしたいと思っていても、実際に行動する人は16%にとどまっている。消費者の行動と意図の間にはギャップがあり、私たちの役割はそのギャップを埋める支援をすることなのです」

企業はストーリーテリングの方法を変えることが重要だ

スミノフのボトルには、プライド月間中、SNSで募ったLGBTQコミュニティーに関する一人ひとりのストーリーを印刷している

だからこそ、地球・社会の課題解決に向けて、消費者にパッケージのコンテンツづくりに参加してもらうよう、ゴルベア氏は「企業はストーリーテリングの方法を変えることが重要だ」と強調。HP社はデジタル印刷パッケージ技術によってパートナー企業とともにそれを実践し、パッケージを通じて消費者のストーリーを届けることで彼らの意欲的な消費を促し、結果としてブランドの成長につなげることに成功している。

例えば、プライド月間にLGBTQコミュニティに関する一人ひとりのストーリーを募集してスミノフのボトルに印刷したり、ブラジルのハーシーチョコレートのパッケージで女性アーティストたちの声を伝えることで南米における女性のモチベーションを高めたり。ネスカフェとは、消費者から募集した300の新年の抱負をコーヒーの瓶ラベルに印刷するキャンペーンのほか、コーヒー農家の1000の物語を紹介してサプライチェーンの透明性を促し、これによって同社は20以上の市場で5年以上、2桁成長を実現しているという。

そもそもデジタル印刷技術そのものが、サステナブルであることは言うまでもない。「なぜなら、最少ロットという概念はなく、サプライチェーンから26%在庫を削減できる。グローバルな大企業が軒並みこの技術を導入すれば5000万トンの包装が不要になり、アナログ印刷と比較してCO2を最大8割削減できるのです」。

「共創はサステナビリティにつながっている。マーケティングにも非常に有効です。日本の皆さんもぜひ、共創の精神を持ってください。一緒に進んでいきましょう」。最後はそうにこやかに呼びかけて、セッションを終えた。(井上美羽)

井上美羽 (いのうえ・みう)

埼玉と愛媛の2拠点生活を送るフリーライター。都会より田舎派。学生時代のオランダでの留学を経て環境とビジネスの両立の可能性を感じる。現在はサステイナブル・レストラン協会の活動に携わりながら、食を中心としたサステナブルな取り組みや人を発信している。