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トヨタが明かす、サステナブル社会へ向けた事業ポートフォリオとコミュニケーション戦略

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SB国際会議2023東京・丸の内

Day1 アフタヌーン プレナリー

大塚友美・トヨタ自動車 執行役員CSO 
青木茂樹・SB国際会議アカデミックプロデューサー/駒澤大学 経営学部 教授

サステナブル・ブランド ジャパンは、生活者の視点からSDGsに対する企業の取り組みとブランドイメージを調査した「ジャパン・サステナブルブランド・インデックス(Japan Sustainable Brands Index:JSBI)」の最新のランキング結果を14日に発表した。業種別でみると自動車業界は19位中11位だが、3回目となる今回の調査でもトヨタ自動車の企業ランキングは2位であり、常に上位にランクしている。同日のプレナリーで同社執行役員CSOの大塚友美氏は、サステナビリティへの取り組みやコミュニケーション戦略について、「豊田章男社長になってから大きく変わった」と明かし、「説明するのでなく、共感して応援してもらえる企業を目指している」と話した。(松島香織)

JSBIを監修したSB国際会議アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏は、冒頭、調査内容と結果を説明し、「いつも上位にいるトヨタのさまざまな経営戦略について、お聞きしたい」と対談をスタートした。

地域に寄り添いながら『町いちばん』の企業に

同社は、その地域ごとの道路状況や気候、使用しているエネルギーに対応したビジネスを世界各国で展開している。例えば、港の多い米国LAでは重機の排気ガス排出を防ぐため、多様なパートナーとともに設備や移動の動力源を水素に変えたり、火力発電を主なエネルギー源としているタイでは、バイオガスを活用した水素で物流の効率化に取り組んでいる。

大塚氏は、「ハードだけでなく地域の人と取り組み、地域に寄り添いながら『町いちばん』の企業になることを大事にしている。そのためには地域ごとのビジネスをしていくことが必要。変化の激しい時代だからこそ思考停止せず、カーボンニュートラルをその地域と一緒に目指したい」と話す。

大塚氏は同社で取り組んでいる「HEV:Hybrid Electric Vehicle(ハイブリッド自動車)」「BEV:Battery Electric Vehicle(バッテリー式電気自動車)」、「PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle(プラグインハイブリッドカー)」「FCEV:Fuel Cell Vehicle(燃料電池自動車)」の4種類の電動車を紹介し、「誰一人取り残さないカーボンニュートラルを実現したい」と付け加えた。

BEVはバッテリーに充電した電力でモーターを動かすため走行中にCO2を排出せず、環境に配慮したエコカーとして近年普及し始めている。全車BEV化を表明しているレクサスブランドでは、「運転して楽しいBEVの開発を目指している」という。一方で、「CO2をゼロにすることも大切だが、一刻も早く減らすことも大切だと発信してきたが、伝わっていなかった」と反省点を挙げた。

同社は2018年に自動車会社からモビリティカンパニーへの転換を宣言した。ビジネスポートフォリオの変革を象徴するプロジェクト「Woven City」はかつて工場のあった、東京ドーム15個分に相当する土地に新たに建設中の街だ。自動運転や物流効率化などの実証実験を通じて「未来により多くの選択肢を残したい」とあらためて紹介。2024~2025年の第一期オープンを目指し、多くのパートナー企業とともに取り組みが進んでいるという。

青木氏が、よく閲覧しているというオウンドメディア「トヨタイムズ」について触れると、大塚氏は「当社の取り組み内容をより深く知ってもらえ、反応がダイレクトに伝わってくる」とメディア戦略として感触を得ている様子で話した。メディアとして自ら発信することで、「相手が聞きたいことを知る努力をするようになった」と続けた。

同社は4月1日付で佐藤恒治氏が社長に就任する。大塚氏は「組織風土が整ったから社長交代を決めたのではないか」と考えているという。現社長の豊田氏は「失敗してもいい、個性を生かせ」と変革をリードしてきた。「継承と進化」を掲げる新社長の佐藤氏は大塚氏と同期入社で、「必ず現場にいてステークホルダーと話しているか、クルマに向き合っている人」だという。

今後も「『町いちばん』『もっといいクルマ』を作る土台は変えず、モビリティカンパニーへの変革を加速していく」と大塚氏は決意を述べ、「世の中のため、未来のためという思いをぶらさずに取り組みたい。不確実性の高い時代だから失敗しても良いから前に進んでいきたい。この変革の時期にサステナビリティの仕事をしているのは幸せ」と結んだ。

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。