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健全な身体に健全な精神、健全な地球を――アシックスが考え、取り組むサステナビリティとは

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SB国際会議2023東京・丸の内

動画の初めに登場するアシックスの前身、鬼塚株式会社を創業した鬼塚喜八郎

オンデマンドセッション

「健全な身体に健全な精神」──アシックスの社名の由来となった言葉であり、経営理念だ。現代はこれに「健全な地球」が加わるという。本セッションでは人々の心身の健康と健やかな環境のために、スポーツ用品企業として同社が考え、取り組み続けるサステナビリティが約15分の動画に散りばめられている。(有村絵理)

モノクロの写真で笑顔を見せる一人の青年。アシックスの創業者である鬼塚喜八郎(1918〜2007)だ。第2次世界大戦後、鬼塚はスポーツを通じて青少年の健やかな心身の成長を支えたいという一心から1949年に鬼塚株式会社を設立し、スポーツシューズの製造を開始した。これがアシックスの前身だ。

動画は翻って現代を映し出す。同社の代表取締役社長CEO兼COOの廣田康人氏はアシックスの社名を「もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神あれかし、と祈るべきだ」という意味のラテン語の頭文字に由来すると說明。これは「世界中の人々に心身ともに健康で幸せな生活を実現してほしいというわれわれの願いそのものだ」と語りかけた。

同社は、SBTイニシアチブによって承認された温室効果ガス排出量の削減目標をスポーツメーカーとして初めて掲げた。2050年までにネットゼロ、2030年までに事業所およびサプライチェーンで対2015年比63%削減を目指している。その裏付けとなるのが、「ヒューマンセントリックデザイン」と呼ばれる自社設計技術と、材料や製造、輸送や廃棄など商品ライフサイクルのCO2排出量を精度よく算出する知見である。

このヒューマンセントリックデザインについて同社執行役員でスポーツ工学研究所長の原野健一氏は、「スポーツで培った知的技術により質の高いライフスタイルを創造するという、私たちのミッションを達成するための研究フィロソフィーだ」と強調する。人の動きを科学し、独自に開発した素材や材料設計技術を用いることによって、「トップアスリートだけでなく世界の人々、子どもたち、高齢者らの可能性を最大限に引き出すイノベーティブな技術や製品サービスを継続的に生み出すことができる」という。

スポーツは、世界中の数千人ものデータから、メンタルヘルスとの間にポジティブなつながりがあることが証明されている。そのスポーツを、地理的条件、ジェンダー、年齢に関わらず楽しんでもらうためには、機能性も重要だ。

本来、環境性能と機能性の両立は相反するという考えがあるが、「創意工夫すれば両立できる」と同社は考える。例えば、セルロースナノファイバーを使ったフォーム材は、従来のものに比べて約55%軽量化しているが、強度は約20%増。耐久性も約12%上がっている。製品の重量が軽ければ、輸送にかかるエネルギーも減らすことができる。

そうした研究成果の一つが、温室効果ガス排出量最少のスニーカー「GEL-LYTE ™ Ⅲ CM1.95 (ゲルライトスリーシーエム1.95)」だ。これは、10年以上の研究開発の末、誕生したシューズである。一足あたりのCO2排出量は、わずか1.95kg。これは商用スニーカーでは過去最小の排出量だ。

同社のサステナビリティ統括部長の吉川美奈子氏は「地球が健やかであり続けるよう、私たちは環境負荷を削減する責任がある」ときっぱりと話し、「製品の機能性と環境配慮の両方を追求したときにイノベーションが起こる。温室効果ガス排出量最少のスニーカーの開発はネットゼロに向けた大きな一歩だ」と続けた。

動画の最後には、中学1年生で東日本大震災に遭い、母親を亡くすとともに家もスポーツ用品もすべて流され、無気力になっていた時に、アシックスの支援で前を向き、母への恩返しの気持ちで甲子園出場を果たすとができたと振り返る若手社員が、「今度は自分が、誰もがスポーツに打ち込んで楽しめるような支援をしていきたい」と語る場面も。将来世代がスポーツのできる健やかな地球環境を残すことが使命と考える同社のサステナビリティへの思いが随所に感じられた。

本オンデマンドセッションは、3月31日までSB Online(アーカイブ視聴サイト)でご視聴いただけます。
※ご参加登録者様限定
https://sustainablebrandsonline.jp/login