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CSR調達の裾野拡充を目指して企業は何をすべきか――監査や評価に携わる関係機関が議論

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SB国際会議2023東京・丸の内

GCNJサプライチェーン分科会所属の中原智美氏(左)と桑原崇氏

オンデマンドセッション

企業の社会的責任に対し、世の中の関心が高まって久しい。責任の果たし方にはさまざまな方法があるが、近年は特に「企業はサプライチェーン全体を通じて社会的責任を果たすべき」というCSR調達の考え方に注目が集まっている。(市岡光子)

ファシリテーター:
北條茉実・りそなホールディングス グループ戦略部 サステナビリティ推進室
パネリスト:
山本梓・Sedex メンバーサービス インプルーブメント エグゼクティブ
若月上・エコバディス・ジャパン 代表取締役
桑原崇・一般財団法人電気安全環境研究所 サステナビリティ推進室 室長

CSR調達の「3つの重要なプロセス」とは

まずはCSR調達の進め方と企業が取り組む意義について、国連グローバルコンパクトが掲げる「GC10原則」に賛同する日本企業・団体のネットワークである「GCNJ」のサプライチェーン分科会よりレクチャーが行われた。

CSR調達とは、企業が製品資材や原料を調達する際、人権や労働環境などにも配慮がなされているかをチェックし、サプライチェーン全体で社会的責任を果たそうとする活動のこと。世界では、児童労働や差別、動物愛護等に対する消費者意識の高まりから、不適切な調達が行われていた場合、不買運動などに発展するケースも少なくない。CSR調達が行えていない場合、企業経営に大打撃を与えるリスクがある。

CSR調達を行うためには大きく分けて3つの重要なプロセスがあると、GCNJサプライチェーン分科会は説明する。

1つ目は、バイヤー企業とサプライヤーがCSRビジョンや方針を共有するための説明会を実施すること。2つ目は、SAQと呼ばれるアンケート形式のセルフチェックリストをもとに各サプライヤーが自己評価を行うこと。3つ目は、監査によってバイヤー企業とサプライヤーが協働し、現状評価を行うことで、結果を企業内で共有しながら改善活動に生かすこと。この3つのプロセスを継続的に実施することで、サプライチェーン全体を最適化していくのが理想だという。

必要なのは現状把握と意識改革。日本でCSR調達を普及させるために

左から北條氏、若月氏、山本氏、桑原氏

レクチャー終了後、企業のCSR調達を共通のテーマとする4氏によるパネルディスカッションが行われた。

SAQを行うために準備すべきことについて、エシカル情報のプラットフォームをグローバルに展開する英国のNPOでCSR監査機関「Sedex」の山本氏は「SAQは健康診断のようなもの。準備の前に、まずは現状把握を行うことが大切だ」と見解を述べた。これに、仏国に本社を置き、サステナビリティ情報をグローバルに分析評価する「エコバディス・ジャパン」の若月氏も同調した上で「SAQを通じた自社の現状把握とマネジメント層の意識変容に価値がある。取り組みを続ける中で、CSR調達が最適化され、準備しなくても良い結果が出る状態になる」と強調。両者の意見を受け、桑原氏は、GCNJサプライチェーン分科会の立場から、「まずは無償提供しているGCNJ版のSAQに挑戦し、社会から求められている基準を知ることからスタートさせても良いのではないか」と語った。

日本でCSR調達を普及させるための課題については、若月氏よりバイヤー企業の認識の低さが挙げられた。それを受け桑原氏は、「サプライヤー側の土壌開拓も必要だ。われわれで連携しながら研修や啓発を行えたら」と呼びかけた。山本氏も「情報交換を行いながら協働の可能性を探るべき」と同意した。

最後に、今後の展望が語られた。桑原氏は「われわれ3者連携によってノウハウを蓄積しながら、GCNJの提供するツールをさらに磨いていきたい」と意欲を見せた。山本氏はSedexのミッション、ビジョンの改定に触れながら、「今後は人権領域だけでなく、環境やESGなどにも力を入れていく」と表明。若月氏はCSR調達の動きは欧米が主流であることに言及し、「アジアや日本の裾野はまだまだ拡大の余地がある。特に日本企業のCSR調達への意識を高めていきたい」と熱意を示してセッションを終えた。

本オンデマンドセッションは、3月31日までSB Online(アーカイブ視聴サイト)でご視聴いただけます。
※ご参加登録者様限定
https://sustainablebrandsonline.jp/login